日本中を席巻する日
タクシーが止まる。「はいおつかれさん」とごんちゃんがいう。わたしたちは祭りを巡る。まだ早い時間だけどお客さんがけっこういる。わたしたちみたいな観光客だろうか。わたしは露店でマンゴーチョコを買う。
「ごっちゃんいた?」
「いない。この後ステージでごっちゃんエクササイズを踊るんだけど」
「じゃあ、そ、その近くに、い、いるんじゃないかな」
そうだね、とわたしたちはステージへと向かう。あ、いた! と橋子が叫ぶ。ごっちゃーん! と走っていく。わたしたちも後を追いかける。追いつくと、橋子は人ほどの着ぐるみに抱きついている。
「これがごっちゃんなんだ。こんにちは」とわたしたちは声をかける。するとごっちゃんは丁寧におじぎするのだった。
「そうなの、シーサーなの。この緑のたてがみ、これはゴーヤで出来てるの。この可愛いしっぽ、これはゴーヤの花なんだよ。見て、このたるんだお腹。ああ、生ごっちゃん! 会いたかった!」
ごっちゃんはわたしたちに愛想してくれる。わたしから見るとキバが鋭くて目が点でどこを見ているのかわからなくてちょっと怖い。だが、好きな人からするとそれも魅力のひとつなんだろう。
「あ、頭噛んでもらったら」
「興奮して忘れてた。ごっちゃん、わたしたちに健康のおまじないしてね」と橋子は敬虔に頭を差し出す。ごっちゃんは彼女の頭を口に入れる。作りの都合で噛むという感じではなかった。それでもその姿をわたしは撮る。わたしも永遠もやってもらう。
「これでわたしたち、おばあまで約束されたね。その後もピンピンコロリ」と橋子はいう。ごっちゃんはわたしたちに人間サイズのゴーヤのたてがみを渡してくれる。わたしたちはそれを着けてみんなで写真を撮る。ステージの時間が来る。最前列でわたしたちは見る。ごっちゃんはごっちゃんエクササイズを子供のダンサーと踊る。橋子は歌と踊りを完全にマスターしている。祭りのチラシによると、ごっちゃんは本日5ステージ踊るようだった。なかなか忙しい。ステージが終わるとごっちゃんは観光客に囲まれる。
「ご、ごっちゃん人気あるね」
「そう、ファンは確実に増えている。日本中を席巻するのも間近」ごっちゃんの様子をわたしたちはしばらく眺める。しばらくするともう行こうかと橋子がいう。いいの? うん、もう満足。
「ごっちゃん、熱中症に気を付けてね。また会いに来るね」と橋子は手を振る。ごっちゃんも手を振ってくれた。




