あたらしい関係
春休み、わたしはパジャマで過ごしている。ある日、思い立って服を着替える。地下鉄に乗って雑貨店に向かう。店員の人に店長はいないかと聞く。わたしは緊張している。
「て、店長に、よ、用があるんです」ちょっと待ってくださいと店員は奥に消える。しばらく経って、見知らぬ男性がやってくる、彼はわたしが店長ですという。
「い、以前の、て、店長はもう、い、いないんですか?」
「そうですね。別の店舗に移動になりました」と彼がいう。わかりました、わざわざありがとうございますといってわたしたちは別れる。ハンガーと色々な味のバームクーヘンを買って店を出た。
地下鉄に乗って、次の店に向かう。同じように、店員の人に店長がいないか聞く。店員の人は奥のレジの方に向かって「てんちょー」と呼ぶ。大柄な男性がやってくる。長髪を後ろに団子に束ねている。わたしの知っている人だった。
「なんですか?」
「わ、わたしの、名前はふ、藤原いばらと、い、いいます。以前、この店で、万引きをした人間です。お、覚えてますか?」彼は少し驚いたようだった。
「ああ、あの時のですかね。秋ごろの?」
「そ、そうです。あ、あの時、店長さんは、こ、今度はお客として、来てくださいといってくれました。なので、今日はお、お客として来ました。あ、あの時は本当に、す、すいませんでした」
そうでしたか、と彼はいう。
「よかったら色々買っていってください。でもあの言葉はね僕にとって常套句なんですよ。万引きした人には必ず言うんです。これにて裁きは終わり一件落着というかね。そんな気分で言ってるんですよ。でも、本当に来た人は君が初めてだなあ」
「わ、わたし、ふ、普段漫画を読まないんです。な、長くて、面白い漫画、教えてくれますか?」
「ワンピースなんてどう?長いよ」わたしはそれにする。1巻と2巻を店長に渡す。店長はバーコードを読み取る。わたしはお金を払い、本を貰う。
「これで僕たちは新しい関係」
「ま、また来ても、いいですか?」
「もちろん。待ってます」
家に帰るとすぐにワンピースを読んだ。とても面白かった。続きが気になる。毎週末店に通おうと思った。毎週ワンピースを一冊ずつ買うのだ。
居間に行くと家族が集まっている。みんなでノートパソコンを覗いている。コーギーもかわいいねえと母がいう。ゴールデンレトリバーが俺はいいなと父がいう。柴犬がいいと兄がいう。どの犬を飼うか話し合っているのだった。いばらは?と母が聞く。わたしはトイプードルが良いという。結果トイプードルになる。母も父も言わないが、きっとわたしのために飼ってくれるのだった。もう大丈夫だよといいたかったが、いえなかった。これからもっと大丈夫になった時にきっといいたい。
母と父に今日してきたことを話す。ふたりとも驚いていた。店長と話をして、勧められた漫画を買ったという。そうか、と父はいう。わんこちゃんの名前考えておこうねと母がいう。
次の週にわたしたちは北広島に住むブリーダーの家に行く。3匹の小さなトイプードルの子犬がよちよち歩いている。どれがいいと話し合う。どの犬もかわいくて、とても決められない。でも、なんとかしてみんなで一匹を決める。




