誰だっていつだって
「ご飯食べていいよ」と恵美ちゃん先生がいう。
「い、いいんですか?」とわたしは戸惑う。
「あそこではダメだけど、ここならいいから」
わたしはおそるおそる食べる。お茶を飲む。食べながら周りを見渡す。小さな準備室は物でごちゃごちゃしている。これから並ぶ新しい本とまっさらな紙が積んである。部屋に不釣り合いに大きいコピー機がある。その隣に恵美ちゃん先生の机があって、そこには一輪挿しに百合が挿してある。わたしもご飯食べよと恵美ちゃんがいう。
食べ終わるとわたしは恵美ちゃん先生にありがとうございましたといった。
「明日も来れば?」と彼女がいう。
「い、いいんでしょうか? と、図書委員でも、ないのに」
「そんなこと気にしなくていいんだよ。ここには温かいお茶もあるし、柔らかいソファーもある。誰だっていつだってウェルカムなんだから」
「先生好きですよねウェルカムって言葉。ニヤリ」と橋子がいう。そう? と恵美ちゃん先生がいう。よく使ってますよと橋子がいう。
次の日の昼休み、わたしは図書準備室に行く。恵美ちゃん先生はお茶を出してくれる。チャイムがなるまでそこにいた。次の日はわざと行かないでみた。わたしは手負いを経た羊であって用心深くなっていたのだ。その次の日、また行ってみた。恵美ちゃん先生は変わらずお茶をわたしに淹れてくれる。先生は特にわたしにかまうことはなかった。無所属の何者でもないわたしをそのまま居させてくれるのだった。
3週間ほど通ったころだろうか、ある日、わたしは準備室のソファーに座った時、不意にほっと一息ついたのだった。身体が落ち着ける場所であると認めたのだった。学校では初めての感覚だった。だからわたしにも何かできないかなと思ったのだった。
「じゃ、邪魔じゃなければ、わ、わたしも、何か、手伝いたいんですけど……」
「そう! 小野寺さん教えてあげて」と恵美ちゃんはいう。
「新人は床磨きだよ! ヒヒッ」と橋子が魔女のようにいう。床なんてわたしたち磨かないじゃない、と恵美ちゃんがいう。そうですよねと橋子がいう。




