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バースデーケーキを求めて

2016年7月24日

別に誕生日を祝ってほしいとは思わない。元々いた時代の時にはそんなことを気にしたことはなかったし、この時代に来てからもそこまで意識したことはなかった。

だけれども、周りを見てみると例えばテレビだとかでは、誕生日にあげたいプレゼント特集とか、ドラマの中でのプレゼントとか、クリスマスだとか何かとつけて誕生日のお祝いが多い。

ジョンと一緒にいるときは、ライブのDVDのほかに今アメリカでやってるバカみたいなホームドラマを見ることがある。

そんなものを見ていると、ちょっとだけ誕生日っていいなって思うようになってきたんだ。


そして、今本当の気持ちに気づいたんだ。

誕生日を迎えて一か月と一日が経った今日。ようやく気づいたんだ。


別に祝ってほしいとは思わない。だけれども、あのおいしそうな、甘くてかなり風変わりなバースデーケーキを食べてみたいと思ったんだ。

青色の、黄色の、虹色のバースデーケーキ。考えるだけでも興奮してしまうよ。


だけれども、表立ってそれを主張してしまうと恥ずかしい。「こいつ、誕生日を祝ってほしいのか?」なんて思われたら、それこそ目も当てられなくなってしまうような事態になってしまうだろう。それだけは何としても避けなければいけない!


今日は休日で、なぜかわからないがジョンが監督と偽美希と鈴木さんそれと神様を誘って遊園地に行くことになっている。大学に行くようになってから、遊びというのが楽しく思えてきたから、言ったこともなかった遊園地を待ち焦がれていたけれども、俺はそれよりも今、バースデーケーキがほしいんだ。

逆に考えれば、今日ほどそのバースデーケーキを手に入れる絶好の機会はないんだ。ただ、リスクも大きい。もし、失敗してしまえば一生「あぁ、この人そうやって人にたかるんだ」とか思われたりしかねない。

こればっかりは真剣に、慎重にやらなければいけない。


「ノブ、何をやっているんですか? もう出発の時間ですよ。教授はすでに下で待っているようですよ」


もうそんな時間なのか。というか、今日の運転は神様なのか。まずは、バースデーケーキよりも、酔わないようにすることを考えないとな。


※※※※


神様が俺たち(俺、ジョン、偽美希)を迎えに来た後秋葉原へと向かい、道中偽美希が車について熱く語りだしてしまい、神様と熱い談義を交わしているのを無視しつつそこで待っていた、監督と鈴木さんを乗せて、遊園地へと向かった。


というか、今思ったんだけれども神様って監督や鈴木さんも知っているような人物だったんだ。どれぐらい公演に来ているんだろうな……。


そして、車に物理的に揺られること一時間。遊園地についたときには、神様と偽美希以外の人が全員グロッキー状態になっていた。ジョンには今度しっかり言っておこうと思う、あの死のゆりかごだけは絶対に乗ってはいけないと。


なので、とりあえず体調を戻すために駐車場に止めた後近くにあったカフェで休むことになった、休日といっても世間一般では平日なので、席まではすんなりと通ることが出きてゆったりと、席に座った。


そして偽美希が、「この“どりんくばぁ”なるものはなんだ?」と神様に聞いて、神様が「それは、飲み物と飲み物を混ぜて異物を作り出す殺戮兵器ですよ」と笑いながら答えているのを見て、俺はいつの間にこんなに仲良くなったんだろうと、水を飲みながら思っていた。

そうしてると、なんだかジョンが変な笑みを浮かべて俺を見ていることに気づいた。

どうして、そんな変な笑みを浮かべているのかを問いただしたいと思ったが、変に行ってしまうと俺がバースデーケーキが欲しいということがばれてしまうと思い、あえて突っ込まない方向でいくことにした。


チャイムを鳴らして、ウェイトレスがやってきた。そしてそれぞれが注文をしてウェイトレスは帰っていった。勿論偽美希は殺戮兵器を注文した。


そのあとだ。

ジョンが話を切り出した。


「6月23日、この日はとても重要な日です」


突然、ジョンはそんなことを言った。

まさかとは思うが、さっきまで不敵な笑みを浮かべていたこととこの言葉はつながっているのか?


俺の誕生日は6月23日。こいつが、俺の誕生日を知っていて、さっき不敵な笑みをしていた。あっ! そう言えばこいつ、俺の心が読めるんだった。そのことを最近してこなかったから、忘れていた。


ということは、こいつ。俺がバースデーケーキを欲していることを知って、それで俺を驚かそうとして、これだけの人を集めて、気を使って一か月と一日遅れの誕生を祝ってくれようとしているのか?


そう考えると、少しにやけてしまうな。


「そうです。皆さんが今思っていることは一つでしょう」


みんな同じことを考えているのか? おいおい、照れさせるなよ。


「そう、6月23日。 戦国ロリポップが結成された日です!」


ジョンは大きく、そう言った。そして俺以外の人は「そうだ!」とか「いいぞジョン!」と言っていた。偽美希は、そんなことを知っているはずがないのに、殺戮兵器から持ってきたよくわからん色の飲み物を飲みながら「ろぇあぁ!」と奇声を上げていた。


そして、俺はシュンとしてしまった。

あぁ、そうか。俺の誕生日じゃなくて、ロリポップの誕生日なんですね。あぁ、そうか。

本当の6月23日にもロリポップの結成祭をライブだけでは無くて、身内でも打ち上げをしたのに、なんでこんな日にここまで来てロリポップを祝うんだろう。

ロリポップは嫌いじゃない。大好きだ。

だけれども、今はそんな気分じゃないんだ。


つらいよ、つらい。上げて落とされたこの気分。本能寺よりもつらいものがあるよ。


「さて、体調も復活したところで早速遊園地に向かいますか!」


ジョンの一言で、俺たちは遊園地に向かうことになった。


※※※※


遊園地は楽しかった。だけれど、百パーセント楽しめたかというと、そうではなかった。

どこか、心はもやもやしてしまった。


夜八時になり、遊園地から帰ることになった。

車に乗ると、神様も疲れたようで運転が安定のあるものになって非常に乗り心地が良かった。運転の技術というのは、体調も影響してくるんだな。

だからジョンもみんな寝てしまって、起きているのは俺と神様だけになった。


「今日は楽しかったですね。私も年甲斐なくはしゃいでしまいましたよ」

「はは、そうですね」


話を盛り上げる力も残っていない。遊園地で疲れていたのもそうだし、精神的にも。


「ところで生贄殿、ジョン殿から聞いたんですが」


神様が、俺に聞いてきた。


「生贄殿は、とても運がいいんですねぇ」

「どういうことですか?」


神様が、いきなりよく分からんことを言ってきた。


「いや、誕生日がロリポップと同じだし、信長と同じじゃないですか!」

「?」


あまりに突然だったので本当に驚いてしまった。まさか、神様は俺の誕生日を知っていたのか? ジョンもしっかり把握していたのか?


「一昨日この話を聞いたものですから、やってしまったなぁと思いましてね」


笑いながら神様は言ってくる。


「何をやってしまったんですか?」 俺は、そう尋ねる。


すると神様は「いや、だって誕生日プレゼントを渡しそびれてしまったじゃないですか!」と言ってくれた。


驚きだ。


「生贄殿、何か欲しいものはありますかね? サインDVDとかはあげられませんが、できるだけ頑張りますよ!」


これは、もしかしたらジョンが気を効かせてくれたのかもしれない。神様であれば、こういう風に自然体に誕生日について触れてくる。俺の気持ちを知ったジョンは、神様に俺の誕生日のことを伝えて、神様は俺の誕生日を祝うためにプレゼントを用意してくれる。

それを見越してジョンは……くそ、ここまで人を悩み詮索することをこいつはさっきにやにやしながら考えていたのか。うれしいような、殴ってやりたいような……


だけれども、今日は素直にその行為に甘えることにしよう。どうせだからな。


「アメリカのケーキをください」

「えっ! あの、人工着色料満載の奴ですか?」


えっ、あれって天然の着色料じゃないの? 


「別に用意はできますけれども……」


体壊しちゃうかもしないな。うん、体壊したらやばいよね! 仕事に影響したらまずいし……


「いや、やっぱり普通のホールケーキを買ってください!」

「そ、そうですよね! そっちの方がいいですよ!」


人工の着色料を恐れて、普通のケーキをお願いする。

とりあえず、ジョンを後で殴っておいしいケーキを食べて心を落ち着けたいと思う。


うん、やっぱり誕生日に過度の期待するのはいけないな。


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