改宗させる策
改めて大河は『リュートの遺跡』の場所を見てみる。
確かに魔神の支配領域に向かうだろうと信じているウルザ陣営の追求を回避する事を考えれば悪く無い立地である。
今回の件により強固な同盟を結ぶことができた樹神エルフィードの支配領域である『イグドラシル』は遠くなってしまうが、これから移動は転移を使用することになるだろうから問題ない。
となると問題はウルザ陣営だけでなく他の者たちすら近付いてこない原因だけである。
「『無敵要塞』ですか……レイアさんの説明が正しいのであれば無宗教は死亡した時点で消滅するって事は、『リュートの遺跡』を支配領域にしようとしたウルザ陣営を、俺みたいなチート技を使わず自力で退けたって事ですよね」
「そうなる」
「説得が無理だった場合、力ずくでって可能なんですか?」
相手が女神ウルザの勇者なのであれば、大河は立派な戦力に数えられる。しかし相手がそれ以外の主神の勇者となった時点で大河ができるのは不意打ち『自爆』くらいである。
そうなると、力ずくでの説得を行う要員はレイアだけとなってしまう。レイアが強い事は大河も理解しているが、話を聞く限りイージスの強さも凄まじいだろう。
「単純な戦闘力って事ならあっちの方が上……でも生死をかけた戦いって話なら私が生き残る」
「なるほど。それなら!」
「でもそれだとイージスは消滅する。イージスは貴重な戦力だから生きたまま改宗させたい」
「あ、じゃあ死亡1歩手前で改宗を迫るって話ですか?」
「……あの子の性格上、そうなった場合、天神アマタ様への忠心に準じて命を絶ちそうだね」
「じゃあ無理じゃないですか?」
単純な戦闘であればレイアでも勝てず、何でもありの命の取り合いであればレイアが勝てるが、イージスは死んでしまう。仮に生き残ってもおそらく改宗を拒否したまま命を絶つ可能性が高いらしい。
そんな状況にも関わらずレイアはイージスを仲間にしたいと言っている。そのためレイアにはそんな状況を覆す秘策があるのかと大河は考えた。しかし、
「うん。私には無理」
「え?」
「だから、タイガ考えて。タイガなら良い案が浮かぶと思う。信頼してる」
「ふぇ? いやいや」
そうではなかった。レイアはその秘策の立案を大河に任せてきたのだ。良く言えばこれまでの『自爆』戦法や『ユグド大爆破作戦』などの作戦立案の実績から信頼しての事であるが、悪く言えば丸投げである。
「ただでとは言わない。今回の作戦で5万ポイントくらい収入があったから、それを踏まえると……2万ポイントくらいは使い捨てにしていいから」
「あ、ポイントがあるならって『リュートの遺跡』を選んだのはそれですか!?」
別に領域の候補地によってポイントが多く掛かる場所と少なくてよい場所がある訳ではないため、レイアがポイントがあるならばと候補地に『リュートの遺跡』を追加したことに若干の違和感を覚えていた大河であるが、ようやく腑に落ちた。
2万ポイントという、もう少し貯めれば弱めなユニークスキルであれば獲得できるほどのポイントを大河の『自爆』で吹き飛ばしても良いため、それを使ってイージスを仲間にする策を考えろという意味であったようだ。
「今回はウルザ陣営から逃げる。でも今後の事を考えるといつまでもそれじゃダメ」
「……そのためにはイージスさんを仲間にする必要があると。はぁ。分かりました、考えてみます」
「お願い」
大河は重いため息を吐くと、覚悟を決めた表情になり、スキル一覧を確認しだすのであった。




