最終話 死に戻った王は執着の果てに全てを手にする
「意外ですね。許可するなんて」
邸全体が寝静まった夜、留学に関しての書類と体制についての打ち合わせで、アスターが言った。
「一人で行かせるとは言ってない。私も行く」
「……まぁそんなことだろうと思って、滞在中の使者に伝えておきましたよ。
ライラには臨時講師はどうか、とのことです。ミレットの子どもたちが多いので、今現在、講師は大歓迎だそうです」
資料に目を通しながら即答するライラックに、アスターは若干引き気味で答える。
「分かっているなら聞くな。泊まる部屋は?」
「そこ、婚姻前に図々しいことしないで。全寮制なんですから、女子寮ですよ。ちょっとくらいは我慢してください」
アスターが常識を説き、ライラックはそれに渋面を作る。
「僕はさすがに行けないので、代わりにライラにもナイツを二人付けます。
彼女にもナイツをつけるとして、うち一人はジニアで。
妬かないでくださいよ、虫除け名目なんですから。
アカデミーにも、手の空いてるナイツを潜り込ませておきますから――」
「……王位、返上するか」
今後の流れだとアスターが語るのを聞きながら、煩わしいと、半ば本気でライラックは思った。もう、王である必要がない。
「こら、前例の無いことをほいほいしないで。フォローするのが大変なんですから」
「それがお前の仕事だろうが」
不穏な台詞を聞き咎めて、アスターが盛大にため息をついた。
悪びれもせず不遜な態度のライラックに、アスターは苦笑いする。
「まぁ、ライラが前王陛下に剣を突き立てた時は、どうなることかと思いましたけど……」
人目がないと分かった上で、さらに声を潜めてアスターは言う。
「良かったですね。意中の人を射止めれて」
「その為に、戻ったからな」
アスターはライラックの乳兄弟で、腹心だ。
当然、死に戻った大まかな経緯を話してあった。
と言っても、ライラックが死に戻った場に居合わせた、というだけの意味合いも大きかったが。
「父上も存命だ。今後、リアが心配することがないほど、末長く働いてもらおうじゃないか」
人の悪い笑みを浮かべ、ライラックは嫉妬を露にしたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇
一ヶ月後、グラシオラスのアカデミーの教壇で、講師として爽やかに現れたライラック。
それを見たリンが驚き、ジニアが呆れを通り越した笑いを浮かべることになるとは、まだ誰も知らない。
そして、リンが得られなかった青春と平穏に浸る姿を、ライラックだけが愛おしそうに見つめている。
その笑顔を守るために、彼はこれからも暗躍するのだった――。
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本作は、これにて一旦完結となります。 最後まで見届けていただけたこと、心より感謝いたします。
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