地獄のような光景
真っ暗な通路を、僕たちはひたすら歩いていた。
ぐるぐると迷路のようで、さながら蛇の寝床を思わせる。
しばらく進むと、今度は奈落にでも通じているんじゃないかと思うほどの長い螺旋階段が現れた。
マダム・シュランゲを先頭に、僕らは無言のまま、それを下っていく。
……なんだろう。
ひどく嫌な予感がした。
閉塞感があるから、とか。
逃げ場がないから、とか。
そういう理由じゃない。
言葉にならない違和感。
説明できない不快感。
立ちこめる匂いのせいだろうか。
かび臭く、埃っぽくて、それに――どこかで嗅いだことがあるような、ないような、とにかく不愉快な匂いが混じっている。
ユノを見ると、彼女も眉をひそめていた。
「……ユウ」
唐突に、ユノが口を開く。
「ここから先は……お前、行かない方がいいかもしれない」
ここまで来て、ユノだけを行かせるなんて、できるわけがない。
僕の、はっきりした拒絶に、ユノはそれ以上、何も言わなかった。
螺旋階段は、小さな小部屋に続いていた。
その部屋の奥には、重厚な鉄の門がある。
やけに錆びついていて、入るものも、出るものも拒むような――
そんな門だった。
シュランゲが振り返る。
「さあ、ここよ。
心の準備は、よろしいかしら?」
楽しそうに笑いながら、
彼女は、その扉を開け放った。
***
その光景を目にした瞬間、脳がショートしたような気がした。
目の前が、真っ白になる。
なんだ、これ。
なんだ、これ。
なんなんだ――これは。
息が、うまく吸えない。
焦点が合わない。
僕は、立っているのか。
座っているのか。
見ているのか、見ていないのか。
息をしているのか、していないのか。
何もかもが、分からなかった。
次の瞬間、ユノが僕を抱え上げ、扉の外へと飛び出した。
僕は吐いた。
胃の中のものを、何もかも。
苦い。
苦しい。
むせ返る僕を、ユノが強く、強く抱きしめる。
吐瀉物に汚れるのも構わずに。
ユノは、絞り出すように言った。
「……リシアを呼べ」
定まらない視界で、僕はユノを見ようとした。
だが、その背後に――
あの光景が、まだ見える。
ユノは僕の頭を抱え込み、後ろが見えないようにして、低く言った。
「オレが、ここは抑える」
「お前は、リシアを呼んでこい。
あの魔女がいないと、対処できねぇ。
……頼む」
有無を言わせない声色だった。
僕は、ただ頷くことしかできなかった。




