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乙女なら、拳で語れ【完】  作者: あむあむ
第四章 少女は少女と永遠を誓う。
22/22

最後

 トントントン。

 包丁とまな板で奏でる早朝のメロディ。

 お弁当の準備をしながら同時に朝食も作ってしまう。

 トースターから二枚のパンが飛び出て皿に移し、次の二枚を入れる。

 沸かしたお湯でインスタントコーヒーを作りお盆に乗せ、砂糖とミルクをそれぞれの好みに合わせて入れた。


「できたよー、持ってってー」

「ん、はいはーい」


 私の呼びかけに応えたのは、義理の姉であるクロちゃんだ。

 ひょっこり扉から顔を覗かせ、お盆を手に持つと三つのカップをダイニングにあるテーブルまで持っていってくれた。

 私は完成したパンと目玉焼き、ソーセージが乗った皿を五つ別のお盆に乗せ追いかけるように持っていく。

 おっと、牛乳を忘れてた。危ない危ない。


「慣れたもんね」


 クロちゃんは席に座り、ニヤリと笑いながらお皿を並べる私に向かって言った。


「そりゃそうだよ。もう三年経つんだから」

「あーそんなに。あっという間だったなぁ〜……そういえば、ハート達はどうしたの?」

「ラブちゃんは会社の全体朝礼でもう出たよ。スペっちはずっとお義父さんと将棋してるし、ダイちゃんはライブ公演の準備だって」

「……なんか、普通の家族みたいね」

「普通の家族、だからね」


 戦いが終わった後、私達は皆で一つ屋根の下で暮らしていた。

 体の中に埋まっていたアクセも摘出し、代りにお義父さんが作った人口臓器が胸には埋まっている。

 人造人間を作れるくらいなのだから、これくら出来て当然じゃ、と本人は言っていたが……物凄い技術だと思う。


「お父さん、戦略特化型の私に勝てるわけないのにね」

「あの人、すっっっっっごく負けず嫌いだからさ」

「知ってる知ってる」


 私も椅子に座り、彼女と笑い合った。

 まだ食事には手をつけない。

 なるべく家族揃ってご飯を食べるのが、桜家のルールだからだ。

 けれど……。


「いくら待っても起きてこないね」

「はは、お姉ちゃんも相変わらずだから」

「も〜我が嫁のお寝坊さんは治らず仕舞いか……しゃーない、起こしてくるわ」


 立ち上がろうとすると、ピッと服が伸びる。

 視線を下に向けると、小さな少女が裾を両手でしっかりと握っていた。

 私はその可愛らしい少女に向かっていう。


「わかった、じゃーお願いしようかな。お母さんを起こしてきて」


 小さくコクリと頷くと、彼女は猛ダッシュで二階へと駆け上がっていく。

 そしてドタドタと大きな音が鳴ったと思うと、次は「ぎゃー」っとJKの悲鳴が聞こえた。


「晴海ちゃんに似てきたね〜椿ちゃん」


 音に耳を傾けながら、ラブちゃんが呟く。


「いや! JK似でしょ、乱暴なところとか!」

「え〜そう? 猪突猛進なとことか、そっくりだと思うけど」

「……ま、私達の愛の結晶だからね。椿はさ」


 そう、小さな少女は私とJKの子供。

 あんなことやこんなことをして出来た、大事な大事な宝物だ。

 ドカンっと家全体が揺れる程の振動があった後、JKは椿を抱え階段を駆け下りてくる。


「うぉぃ!? 晴海ぃ、椿を使うなんてずりぃぞ!!」

「HAHAHA、まさか俺様を目覚まし時計にするとはなぁ! 流石はご主人の遺伝子だぜ」

「ぁ、ぁあ〜」


 彼女の両手には恐竜の頭部を模したガントレッドが装備されている。

 いつの間に……全く、わんぱく少女だよ、椿は。

 けど、そのおかげで最短タイムで我が嫁は目を覚ました。

 私は、最愛の女性に向かってニッコリと微笑みかける。


「おはよう、JK」


 すると、彼女も深呼吸をして息を整えた後、満面の笑みで返してきた。


「おはよう、晴海」


 今日も騒がしいけど幸せな毎日が始まるのだ。

 私の、私達の愛は形になった。



 JKだけどハードボイルド (完)

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