10話 2人にバレていた!
八神進学予備校へ行くと夏希と俊輔が席に座って仲良く雑談をしている。僕はゆっくりと近づいて2人に「おはよう」と挨拶をすると、少し手を振って夏希と俊輔が笑いかけてくる。
自分のいつもの定位置に座り、鞄からテキストとノートと筆箱を出す。授業の準備をしている間に、夏希と俊輔が僕の座っている隣に音もなく移動する。その顔にはニヤニヤ笑いが浮かんでいる。本当にこの2人は仲がいい。2人の仲は腐れ縁と聞いているのだが、傍からみるとカップルにしか見えない。
夏希がにこやかに僕に話しかける。
「最近、柚と仲良さそうじゃん。あんなにあの子と仲良くなるなんて、柚を圭太に任せて正解だったわ」
「初めはどうなるか、少し心配だったけどな。圭太は基本的に優しいし、穏やかだから柚と仲良くなってくれたらいいなと思ってたけど、柚があんなに心を開くとは思っていなかった。嬉しいけど、正直に言えば驚いてる。圭太には調教師になる素質があるな」
調教師?柚ってそんなにキツイイメージなのかな?僕には優しくてきれいで可愛い女の子っていうイメージしかないけど。俊輔達のイメージと僕のイメージと少し違うのかな?
「柚って黙っていると美少女じゃん。だから中学生の時からモテてて、柚の周りに男子が寄って行こうとしてんたんだけど、柚のお兄さんって、瑛太さんって言うんだけど、超イケメンなのよ。柚はお兄さんっ子だから、理想は瑛太さんだと思うんだけど、世の中に瑛太さんクラスのイケメンなんてゴロゴロいないじゃん」
確かに瑛太さんクラスのイケメンが街中にいっぱいいたら、常に陰が薄い僕なんて霞んで見えなくなるだろうな。
柚はお兄さんっ子だったのか。瑛太さんも柚のことを可愛がってるし。瑛太さんが柚の理想なら、僕なんて足元にも及ばないよ。夏希、朝からショックな事実を言わないでほしい。今日、1日が暗くなりそう。
「それに柚って、口ではツンツンしているけど、超恥ずかしがり屋で、照れ屋で、臆病な面があるのよね。だから、中学生の時から男子達を寄せ付けないようにツンツンしてて、毎日のように告白されてたけど、断り続けて、誰とも友達にもならなかったのよ。なぜか俊輔だけはバカ正直なところが良かったのか、柚に気に入られてさ。私と俊輔と柚の3人でよく遊んでたんだけど。柚が病気を患ってるのもあるけど、なかなか良い友達ができなくって、私達も心配してたのよ。でも最近の柚ってさ、圭太に少しだけど、心を許してるじゃん。私達、嬉しいんだ」
俊輔がニヤニヤ笑いながら、僕の肩に手を乗せる。
「あの超恥ずかしがり屋で、照れ屋で、臆病な柚が、圭太には自分から勉強を教わりにいってるだろう。今までだったら、あの意地っ張りな柚からはイメージできないことなんだぜ。圭太、スゲーよ。これからも柚のこと、頼むな。俺も圭太のことを応援してるからさ。柚のことをしっかりと頼むわ。邪魔しないようにするからさ」
え、俊輔、なぜ僕が柚に恋をしていることを知ってるの?そんなに僕、表情に感情を出してたっけ?なんだか、すごく恥ずかしいんだけど。なぜ、知ってるの?
夏希がニヤニヤ笑って僕のほうを見る。
「あれだけ、授業中でも、休憩時間でも柚の横顔に見惚れていれば、誰だって圭太が柚のことを気にしていること丸わかりじゃん。柚も何もないフリしてるけど、結構、圭太に見られてるの知ってるから、意識していると思うよ。 圭太って、表情に出ないけどさ、最近、柚に見惚れてる時間長いよね」
え、そんなに僕って柚に見惚れているかな?意識してないけど、そういえば、最近は足を踏まれる回数が多くなったような気がする。確かに痛いから、意識が戻ってきて、授業に集中するんだけど。
「柚の反応もなかなか面白いし、最近の圭太と柚を見ていると飽きないわ。楽しませてもらってる。もちろん、俺達2人は圭太を応援してるけどな。頑張れよ、圭太」
俊輔に笑われて、肩をポンポンと叩かれた。俊輔と僕が教室のドアの方向へ顔を向ける。すると柚が教室へ入って来て、僕達を軽く少しだけ睨んで歩いてくる。俊輔と夏希は「うまくやれよ」と言って、自分達の所定の席へ戻っていった。入れ替わるように柚が頬をピンク色に染めて、少し口を尖らせた表情をして、黙って僕の隣に座る。そして鞄を用意しながら、独り言のように呟く。
「私が来てない間に、楽しそうに何の話をしてたの?ちょっと気になるじゃない!」
「柚が中学時代の時にモテモテで、毎日のように男子から告白されてたことを俊輔達に教えてもらっったよ。さすが柚はきれいで可愛いから人気があったんだね」
「いきなり、何を言ってんのよバカ」
ドスッと足を踏まれる。いつも感じるこの痛さ、段々と慣れてきたな。柚も手加減してくれてるし。
「俊輔達も、私のいない所で、私の中学校の時の話をしないでよ。恥ずかしいじゃん」
柚が俊輔に怒るけど、俊輔は手を合わせて謝罪のポーズをとってるけど、顔が笑っている。
「ゴメン。ゴメン。圭太も俺達と友達になったわけだしさ。俺達の中学時代の話を少しぐらいしてもいいかなって思ってさ。やっぱり中学時代に目立ってたのは柚じゃん。だからそういう話になったんだよ。圭太には、柚はお兄さんっ子で、理想は瑛太兄さんだって言っておいたから。圭太もわかってくれると思うよ」
柚の眉間が寄って、目を鋭くして僕を睨む。なぜ、僕を睨むの?話したのは俊輔だよね。今回は俊輔だと僕は思うな。
「はぁ?私のどこがお兄さんっ子なのよ。確かに瑛太兄さんとは仲いいけど、別に理想の男性じゃないわよ。勝手に人の理想のタイプを決めないでちょうだい」
そうなんだ。理想の男性像が瑛太さんじゃなかったんだ。あんなイケメンになれるはずないし、柚に恋してる僕としてはランクが少し下がったようで嬉しい。
「何?嬉しそうな顔をして見てんのよ。バカ」
また、足を踏まれた。今、表情に出てなかったよね。絶対に表情に出してなかったよ。なぜ柚にわかるんだ?僕は慌てて、柚から視線を逸らせて、テキストを見る。
暫くすると、柚がチラチラと僕の横顔を見ているのがわかる。少し緊張する。
「あのさ、今日も勉強のわからない所があったら、圭太に頼みたいんだけど、いいかな?」
柚に頼まれたことが嬉しくて、柚の方向へ顔を向ける。なぜか顔を真っ赤にした柚が僕を睨んでいる。
「うん。いつでも大丈夫だよ。前にも約束したよね。いつでも気にしなくていいよ。一緒に勉強をしよう。いつでも、わからない所は教えるし」
僕は嬉しくてにっこりと微笑む。
「なんだかムカつく」
なぜか足を踏まれた。そして顔を赤くした柚がプイと顔を前に向けてしまう。でも口元で微かに聞こえる声で、「ありがとう」と呟いたのが、僕の耳に聞こえる。口を尖らせて前を向けている柚の横顔がとてもきれいで可愛い。
見惚れると怒られるから、僕もテキストに顔を戻して、講師が入って来る前の予習をする。
講師が教室に入ってきて講義が始まった。僕達は講師の授業に耳を傾けて、ホワイトボードに書かれていく文字を確かめて、ノートへまとめていく。そしてテキストの問題をこなしていく。
柚がペンで頭をコリコリする。問題につまづいたみたいだ。隣でなんだ柚がモジモジしているのを感じる。
僕は柚に少しだけ近づいて、問題の解き方を簡単な言い方に変えて説明していく。柚がウンウンと頷いているのがわかる。
ノートに書いている時に、柚の体に腕が当たった。それだけで僕の心はドキドキする。柚が顔を真っ赤にして、両手で胸を押さえている。まさか、僕の腕が当たったのは柚の胸、頭が真っ白になる。どうやって謝ろう。
「気にしなくていいから、早く続きを教えてよ」
柚は僕を睨んで、テキストへ目を移す。急いで僕は問題を解き終えて、要点をまとめてノートに書いていく。
「さすが圭太ね。問題が理解できた。わかったわ」
「いつでも、聞いてね」
僕は定位置に戻って講師の説明と、ホワイトボードの横にあるスクリーンに映し出されている画面に集中する。
「うん、そうする」
隣から柚の嬉しそうな声が聞こえる。振り向くと柚は顔を真っ赤にして、口を尖らせてスクリーンを見つめていた。僕から顔を逸らしたみたい。そんな柚の横顔がとても可愛くて愛しい。
ブックマ・評価・コメントをよろしくお願いいたします!(^^)!
柚を可愛いと評価してくださる読者様、評価をお願いいたします。
これからも応援をよろしくお願いいたします(*^▽^*)




