その時
祥くんが最初に連れて行ってくれたのは 川沿いにある 北海道料理の居酒屋でした。
周りは 夜になると 人通りがなく 静な所で一件だけ ポツンっと建っていました。
でも、店に入ると 外見より広く感じ 案外 お客さんもいたので 明るく賑かな印象でした。
「いらっしゃい‼」
ねじりハチマキをした おじさんの威勢のいい声が店の中に響く
祥くんと私は カウンター席に座り カウンター前には ガラスケースに入った 新鮮な魚介類がたくさん並んでいました。
たくさんあったので 何食べるか迷ってたら
「まぁちゃん 甘エビが好きだろ おじさん!甘エビ一皿ね!」
威勢のいい おじさんに負けないくらいの 大きな声で 私の大好きな甘エビを 頼んでくれた。
「へい!お待ち‼」
掛け声と一緒に出てきた甘エビを見て ビックリ‼
お皿いっぱいの甘エビ!
「わぁー!すごいね‼」
もう 甘エビから目が離せない。大好きな甘エビ
こんなに たくさん あるなんて 嬉しくて嬉しくて
箸が止まらない。
祥くんも 嬉しそうに 甘エビを一つ摘まんで 大きな口でパクっと 子供のように 旨そうにたべるので こっちまで顔が ほころんでしまった。
おじさんも 本当 嬉しそうに 笑ってました。
そんなこんなで とってもいい気分で 店を出たのが PM8時頃
外は 益々寒さが厳しくなってました。
でも、夜空には 数えきれない程の星たちが 夜空一面に輝いて とても静かで とても......綺麗だった。
次に 祥くんが連れって行ってくれたのは アパートの下が店舗になってる 居酒屋でした。
中に入ると 人懐っこい 感じの良さそうな おばさんが
「いらっしゃい‼」
元気のいい挨拶をしてくれました。
すると おばあさんが祥くんを見て
「あれ?久しぶりやね 元気だった!」
祥くんは 照れくさそうに 頭を掻きながら 私を
紹介してくれた。
「俺の......嫁さん連れてきた。」
そう言って カウンター席に座り おばさんと話に花を咲かせていました。
すると
「祥くん?!」
後ろの座敷から 祥くんを呼ぶ声が聞こえて 振り返ると 男の子二人と女の子二人のカップルの中の一人が 祥くんを呼んでいました。
とてもハスキーな声の髪の毛がちょっと茶色で 色黒なヤンキーぽい男の子
「おー?!久しぶりやん!いつ来たの?」
久しぶりにあった 後輩に 益々 上機嫌になる
祥くん
「何?祥くんの奥さん?」
ハスキー声の男の子が聞くと 祥くんは 笑いながら
「ちがう...違うって‼」
手を大きく 横に振って言うから 後輩の子たちが
私に気を使って
「祥くん......奥さんに悪いやん!」
なのに
「いいって いいって‼おばさん!こっちにビール持ってきて!」
なんだそれ!祥くんなんか大嫌い!一人でプリプリ怒ってました......だって 祥くん 私の事無視して後輩の子たちと楽しそうに騒いで 私はポツンと一人なんだもん......だからタバコを吸ってイライラを抑えてました......
その時 やっと私に声を掛けてくれたと思ったら
「まぁちゃん!これからコイツらと飲みにいくぞ!」
そう言いながら さっさと店を出ていった......
祥くんのバカ!もう知らないから!
外の風は冷たく 私の体を一層凍らす......
震えながら 車に乗り......でも、祥くんは 後輩の車の前で 楽しそうに笑いながら話してる
ムカつく‼祥くんが後輩と会ってから 私の存在がなくなった......本当に 嫌いになっちゃうからね いいの?私を一人にしないでよ!寂しくなっちゃうだろ!私がこんなに寂しいのに......
祥くんは ニコニコ笑いながら戻って来ました。
ムカつく!でも......不安な気持ちもあったから
優しく聞きました。
「祥くん ちょっと飲み過ぎ見たいだけど......
大丈夫?」
「大丈夫‼大丈夫!」
もう!目なんかトロンと下がちゃって 顔だって
真っ赤だし 大丈夫なわけないでしょう!口を尖らせて
「酔ってるんだから 気を付けてね‼」
不機嫌な私を無視して
後輩の車を先頭に勢いよく走り出した。
ブォンブォン ブォーン‼
私の不安をよそに 祥くんは 酔ってるせいか
周りを走ってる車も障害物も 全く目に入ってなかった。怖くて怖くて 心臓が爆発的寸前!
運悪く 途中の信号で 後輩の車を見失ってしまった。焦って
「祥くん!後輩の車 見えないよ!」
でも、平然と
「大丈夫!行くところ 知ってるから」
祥くんを見た......その時
突然スピードが上がって その瞬間 体が 背もたれに 押さえつけられ 心臓が激しく動き出した。
体に力が入る......そして足を踏ん張った...
「しょ...祥くん!」
声が震える。
「道間違えちゃった!」
そう言いながら ドンドンスピードが上がる
もう 心臓が限界 破裂寸前!
ドックンドックン ドックンドックン
歩道に車体が擦れても タイヤを乗り上げようが
スピードを落とすことはなかった。
初めて 恐怖を感じた。だから 必死に お願いしたの
「祥くん‼もっと ゆっくり走って そんなにスピード出すと危ないよ!ねぇ!祥くん!お願い!」
祥くんは別人のようになってた。
そして
ずーっとずーっと対向車線を走り続けた......
頭の中で 死ぬって言う文字が浮かんだ。
私が何を言ってもダメなんだなー この時 妊娠5ヶ月でした。だから お腹だけは大丈夫なように
足を踏ん張って......祥くんとなら死んでも
いいかなーって......なんか 変に冷静になってた......
その瞬間
目の前に 二つのライトが......あっ!ぶつかる......




