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たからしまのちズ  作者: まろやかポン酢風味
7年前の事件
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雅子参戦

(にん)がけテーブルの通路側(つうろがわ)玲也(れいや)もシマオも(すわ)っていたのだが、雅子(まさこ)玲也(れいや)(となり)椅子(いす)()()して、その椅子(いす)玲也(れいや)()したので、玲也(れいや)はその椅子(いす)(すわ)りなおさざるを()なくなった。そして、さっきまで玲也(れいや)(すわ)っていた息子(むすこ)真向(まむ)かいの椅子(いす)にどかっと(こし)()ろした雅子(まさこ)息子(むすこ)()真正面(ましょうめん)から見据(みす)える。息子(むすこ)、シマオは、一瞬(いっしゅん)だけ母親(ははおや)()()わせると、自分(じぶん)作品(さくひん)へと目線(めせん)()ろす。それにつられて雅子(まさこ)視線(しせん)もシマオの作品(さくひん)(うつ)る。


「へぇ〜」と()いながら、彼女(かのじょ)無遠慮(ぶえんりょ)にシマオのノートを自分(じぶん)手前(てまえ)()()せながら1回転(かいてん)させる。数瞬(すうしゅん)()(とお)すと「あら?この記事きじならうちでとってあるわよ」と()いつつ(せき)()って、控室(ひかえしつ)(すみ)に3段重(だんがさ)ねにしてあるダンボールの中段(ちゅうだん)()()してきた。そのダンボールをテーブルの通路側(つうろがわ)(わき)()くと、しゃがんで(はこ)(なか)をまさぐり(はじ)めた。しばらくして、玲也(れいや)たちが()てきたものと(おな)日付(ひづけ)新聞(しんぶん)と、(ほか)にも日付違(ひづけちが)いの新聞(しんぶん)()してきた。


地元(じもと)人達(ひとたち)との話題合(わだいあ)わせのためにと、自宅(じたく)ではとっていない地方紙(ちほうし)店舗(てんぽ)(ほう)ではとっているのだ。(きゃく)順番待(じゅんばんま)ちの(あいだ)()めるように、新聞(しんぶん)(たぐい)漫画雑誌類(まんがざっしるい)、それと美容室(びようしつ)なので、当然(とうぜん)、ヘアカタログとファッション雑誌(ざっし)定期購入(ていきこうにゅう)しているのだ、もちろん、経費(けいひ)で。さらに、地方新聞(ちほうしんぶん)(なか)でも、こと、宝田町(たからだちょう)(かか)わる記事(きじ)があるものはこのようにダンボール(ばこ)()めて保存(ほぞん)していたのだ。(あと)因果関係(いんがかんけい)裏取(うらど)りができるようにと。なんの因果関係(いんがかんけい)のことなのかは企業秘密(きぎょうひみつ)である。


当時(とうじ)新聞記事(しんぶんきじ)内容(ないよう)からすると、事件(じけん)(かか)わっていると(うたが)われたのは下宝田地区(しもたからだちく)子供(こども)たち8(にん)で、その(うち)の2(にん)少年(しょうねん)と1(ひとり)少女(しょうじょ)は、当初(とうしょ)地元(じもと)グループで一番年上(いちばんとしうえ)男子(だんし)死亡(しぼう)した少年(しょうねん)()()としたと証言(しょうげん)していたが、(のち)に、(かれ)らの(おや)たちから「警察(けいさつ)(おど)されてそう()っただけで事実無根(じじつむこん)である」という異議申(いぎもう)()てにより、それらの証言(しょうげん)無効(むこう)となった。その他(そのた)(にん)少年(しょうねん)黙秘(もくひ)(つらぬ)いたようだった。この8(にん)(うち)小学校(しょうがっこう)()がっていた子供(こども)は7(にん)で、もう一人(ひとり)翌年就学予定よくねんしゅうがくよてい未就学児(みしゅうがくじ)だった。それ以外(いがい)(むら)子供(こども)(ひとり)は2(さい)で、当時(とうじ)(おや)一緒(いっしょ)にいた。


8人(はちにん)子供(こども)のうち、小学(しょうがく)年生(ねんせい)の2人と未就学児(みしゅうがくじ)1人の証言(しょうげん)事実(じじつ)であるとすれば、田島本家(たじまほんけ)田島守親(たじまもりちか)末裔(まつえい))の長男(ちょうなん)首謀者(しゅぼうしゃ)であり、()()としの実行犯(じっこうはん)であったことになるが、(ほか)の7人は被害者(ひがいしゃ)()げられないように()(かこ)んだり、本家(ほんけ)長男(ちょうなん)被害者(ひがいしゃ)(かわ)()とすのを見守(みまも)っていた共犯者(きょうはんしゃ)ということになる。そして、去年(きょねん)()んだのは長男(ちょうなん)()()きだった男子(だんし)3人で、今年(ことし)の7(がつ)()くなったのは証言(しょうげん)()()した子供(こども)当時(とうじ)小学(しょうがく)年生(ねんせい)だった少年(しょうねん)だ。先日(せんじつ)()くなったのは首謀者(しゅぼうしゃ)(もく)されていた田島本家(たじまほんけ)長男(ちょうなん)。なぜそういうことが()かったかというと、()くなった少年(しょうねん)たちの死体(したい)発見(はっけん)当時(とうじ)年齢(ねんれい)から逆算(ぎゃくさん)したからだ。


(れい)事件(じけん)(かか)わっていた若者(わかもの)()に、その葬式(そうしき)()ませて職場(しょくば)(もど)ると、(れい)事件(じけん)()(まわ)っている子供(こども)がいる、関係者(かんけいしゃ)にとってこれほど不都合(ふつごう)なことはないはずだ。田島主任司書(たじましゅにんししょ)はそういう理由(りゆう)豹変(ひょうへん)したのだろうと雅子(まさこ)自分(じぶん)推理(すいり)()べた。得意気(とくいげ)(かた)雅子(まさこ)はどう()てもノリノリだったので、玲也(れいや)不思議(ふしぎ)そうな面持(おもも)ちで彼女(かのじょ)(かお)()ていた。「あなた(たち)のおかげで、なんで地元(じもと)(ひと)が『(たた)りだ』って()うのかわかったわ!」などと、とても(うれ)しそうに(はな)(つづ)ける雅子(まさこ)は「江戸時代(えどじだい)のときの事件(じけん)とほとんど(おな)じじゃない?流石(さすが)レイヤくん!」と()(くわ)えてレイヤのことを(おだ)てた。


そこに「それだけでは(ころ)した理由(りゆう)にはならないよ」と(みず)()シマオ、《「村(むら)()たちの動機(どうき)は?かれらと川村君(かわむらくん)との(あいだ)(なに)があった?むら(ひと)たちと川村君(かわむらくん)のお(かあ)さんとの関係(かんけい)は?」「川村(かわむら)さんは7年前(ねんまえ)のあの事件(じけん)(まえ)まではウチを利用(りよう)してたのよ、でも、あの事件(じけん)以降(いこう)()なくなったわね。あ、彼女(かのじょ)は”上宝田村(かみたからだむら)”の出身(しゅっしん)なのよ。ただ、(ちい)さい子供(こども)(あか)ちゃんを()れて上宝田(かみたからだ)()くのは(むずか)しいから、(ぼん)(まつ)りの手伝(てつだ)いは下宝田村(しもたからだむら)(ほう)・・・」と最後(さいご)()いよどむ雅子(まさこ)。「上宝田村(かみたからだむら)(ひと)たちは、大昔(おおむかし)下宝田村(しもたからだむら)(ひと)喧嘩(けんか)して(わか)れたんじゃなかった?」と()()玲也(れいや)に「喧嘩(けんか)じゃなくて、代官(だいかん)田島(たじま)反発(はんぱつ)して()()ったんだよ。それに、上宝田村(かみたからだむら)(ひと)たちは清右衛門(せいえもん)早紀(さき)(した)っていたし、その息子(むすこ)吉祥天(きっしょうてん)粗末(そまつ)(あつか)われたことにも反感(はんかん)()っていたと(おも)う」と正確(せいかく)分析(ぶんせき)()べる|シマオ。雅子(まさこ)物凄(ものすご)得意気(とくいげ)(かお)をしていた。『やっぱうちの()天才(てんさい)だわ~~~』と。


「え~、じゃ、サキのたたりじゃないんだ・・・」と()玲也(れいや)発言(はつげん)()くと、雅子(まさこ)ははっとした表情(ひょうじょう)になる。「なんか()ってるの?」と|シマオ|が(はは)()うと、「川村(かわむら)さんの(した)名前(なまえ)は”早希(さき)”よ」と()雅子(まさこ)顔色(かおいろ)(くら)くなる。「えっ!!せーえもんさんのお(よめ)さんと(おな)名前(なまえ)じゃん!」とはしゃぐ玲也(れいや)。「だからって”(たた)り”だって()うのは科学的(かがくてき)じゃない」と|シマオ|がクールなツッコミを()れるも、「(じつ)は、(おな)名前(なまえ)()けるとエドジダイの(たた)りが()こるのじゃぁ~」とふざけ(はじ)める玲也(れいや)は「玲也(れいや)くん、不謹慎(ふきんしん)ですよ」と雅子(まさこ)(とが)められるのであった。


(たた)りを()ってるなら(おな)名前(なまえ)()けないだろ」と、いつも(どお)り、容赦(ようしゃ)なく|シマオ|にぶった()られる。「(ぎゃく)なんだよ、多分(たぶん)」と(つづ)ける|シマオ|の(げん)に「(ぎゃく)?」と、玲也(れいや)雅子(まさこ)がハモる。「うん、恩人(おんじん)名前(なまえ)(わす)れないように、自分(じぶん)(いえ)()まれた女子(じょし)名前(なまえ)は”早希(さき)”にする、とかね」と|シマオ|が推理(すいり)()べる。「江戸時代(えどじだい)(はなし)本当(ほんとう)なら、そういう(かんが)えになるのもおかしくはないわね」と雅子(まさこ)同意(どうい)する。「どういうこと?」と自分(じぶん)だけのけ(もの)になったような感覚(かんかく)になりながら玲也(れいや)がぼやくと、|シマオ|が説明(せつめい)する「(まえ)下宝田(しもたからだ)農家(のうか)(ひと)()ってたんだ「すえよしの(いえ)のあの伝統(でんとう)、やめてもらいたいもんだよねぇ、100年以上前(ねんいじょうまえ)()んだ(ひと)名前(なまえ)自分(じぶん)子供(こども)に|つけるから(たた)られるんだよ」ってね」


「”末吉(すえよし)”って”まつきち”とも()めるし、”すえよし”とも()めるわね、そうだとすれば、川村(かわむら)さんのお(かあ)さんが上宝田村(かみたからだむら)の”すえよし”の出身(しゅっしん)だということになるわね。つまり、彼女(かのじょ)上宝田村(かみたからだむら)(ひと)()うのは(たし)かね」と雅子(まさこ)考察(こうさつ)()べた。「え~、やっぱりたたりなんじゃないの?」と、あくまでも”(たた)り”(せつ)()玲也(れいや)()かって「それはない」と表情(ひょうじょう)()えずに(だん)じる|シマオ|「(たた)りなんて()(わけ)だ、人間(にんげん)のやることなんだから、やった(ひと)たちに動機(どうき)がある、絶対(ぜったい)に」と。「それもそうね、”(たた)り”のせいにしてうやむやにした(ほう)が、(わる)いことをする(ひと)にとっては都合(つごう)()いものね」と雅子(まさこ)納得(なっとく)する。だが、その(じつ)彼女(かのじょ)自分(じぶん)息子(むすこ)聡明(そうめい)さに空恐(そらおそ)ろしくなりながらも非常(ひじょう)(よろこ)ばしくもあり、(すこ)複雑(ふくざつ)心境(しんきょう)だった。


問題(もんだい)は、新聞(しんぶん)にも()どもたちの名前(なまえ)はおろか、(おや)名前(なまえ)すら()っていないということだ。そもそも(おや)苗字(みょうじ)だけなら全員(ぜんいん)田島(たじま)”なので、苗字(みょうじ)だけで名前(なまえ)()意味(いみ)がない。”和彦殺(かずひこごろ)し”に(かか)わっていた()どもたちの名前(なまえ)()かれば、(いま)までに”不慮(ふりょ)事故(じこ)溺死(できし)した”若者(わかもの)たちが”和彦殺(かずひこごろ)し”と関係(かんけい)()るか、()いかが()かる。それが()からないことには、(かれ)故人(こじん)たちが無作為(むさくい)事故死(じこし)したのか、(ころ)されたのかもよく()からない。もし、”和彦殺(かずひこごろ)し”と関係(かんけい)なく”(ころ)された”とすれば、それはただの無差別(むさべつ)連続殺人事件れんぞくさつじんじけんということになる。それでは、川村早希(かわむらさき)容疑(ようぎ)(うす)くなる。彼女(かのじょ)無差別(むさべつ)連続殺人(れんぞくさつじん)をするメリットは(ほとん)どないし、リスクのほうが(たか)いからだ。十代(じゅうだい)(なか)ばの少年(しょうねん)とはいえ(おとこ)なのだ、成人(せいじん)しているとはいえ女性(じょせい)では(かえ)()ちに()危険性(きけんせい)非常(ひじょう)(たか)いのでとてもリスキーであるという理由(りゆう)だ。


和彦殺(かずひこごろ)し”の犯人(はんにん)隠匿(いんとく)するには、去年(きょねん)から()こっている連続溺死事故(れんぞくできしじこ)(たた)りによる事故(じこ)だとしたほうが”下宝田村民(しもたからだそんみん)にとって”都合(つごう)()いということになる。自分(じぶん)子供(こども)殺人者(さつじんしゃ)であるという事実(じじつ)世間(せけん)()られることで(おや)にまでが監督責任(かんとくせきにん)(およ)んだり、人殺(ひとごろ)しの(おや)という(そし)りを()けるくらいなら、いっそ、人殺(ひとごろ)しの息子(むすこ)たちが()んでくれたほうがありがたいのかもしれない。自分(じぶん)子供(こども)殺人(さつじん)隠蔽(いんぺい)しようとするような人間(にんげん)なのであれば、それくらいの(かんが)(かた)はするだろう。というのが|シマオ|の推理(すいり)だ。ただし、これはあくまでも|シマオ|の考察(こうさつ)(もと)づく推理(すいり)なので”事実(じじつ)”として(かんが)えたり、ましてや、(ほか)(ひと)たちには吹聴(ふいちょう)しないようにと、雅子(まさこ)(つよ)念押(ねんお)しされて、その()解散(かいさん)となった。

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