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たからしまのちズ  作者: まろやかポン酢風味
7年前の事件
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控室で

美容室(びようしつ)(おく)控室(ひかえしつ)(かえ)ってくると、シマオはノートを取り出して、図書館(としょかん)で見た新聞記事(しんぶんきじ)内容(ないよう)一気(いっき)()き出す。それは、まるで、写真(しゃしん)でも()ってきたかのように、文字(もじ)から文体(ぶんたい)まですべて新聞で見たものを描画(びょうが)して再現(さいげん)するのだ、これが、天才(てんさい)シマオの天才たる由縁(ゆえん)だった。景色(けしき)として(おぼ)え、それをそっくりそのまま描画(びょうが)転写(てんしゃ)する能力(のうりょく)、この当時は知られていなかったサヴァン症候群(しょうこうぐん)だ。幼稚園(ようちえん)時代(じだい)からこのシマオの能力に(おどろ)かされていた玲也(レイヤ)は、自分が絶対(ぜったい)真似(まね)できないようなことができる彼のことを尊敬(そんけい)していた。


しばらくして記憶(きおく)の内容を描き終えたシマオは「全員(ぜんいん)西側(にしがわ)の、下宝田地区(しもたからだちく)の子たちばかりだな」と最初(さいしょ)感想(かんそう)()らす。「まるでキショーマルが死んだときみたいだ」と玲也も感想(かんそう)()べるが「きっしょうてん」とシマオに訂正(ていせい)される。ただ、玲也の指摘(してき)(どお)り、田島主任司書(しゅにんししょ)説明(せつめい)で聞いた吉祥天(きっしょうてん)暗殺(あんさつ)顛末(てんまつ)()たような状況(じょうきょう)だった。天保(てんぽう)時代(じだい)記録(きろく)当事者(とうじしゃ)であり、兄と一緒(いっしょ)に吉祥天を川に()()って行った子どもたちの中の一人である”捨丸(すてまる)”こと田島盛親(たじまもりちか)が書いているので間違(まちが)いないだろう。彼は(のち)太田町(おおたまち)奉行所(ぶぎょうしょ)無縁仏(むえんぶつ)として埋葬(まいそう)されていた吉祥天のものと思われる遺骨(いこつ)を引き取り、田島清右衛門(たじませいえもん)早紀(さき)(はか)(となり)に埋葬し(なお)しているほどだ。その記述(きじゅつ)信憑性(しんぴょうせい)が高いだろう。


「田島のおじさんは何を知っていて、何を(かく)そうとしたんだろう?」と言う玲也に「(だれ)のため?かもね」と付け(くわ)えたシマオは、突然(とつぜん)、固まった。突然ピクリともしなくなったシマオに玲也は驚いたが、彼の目は玲也を見ていなかった、玲也の(かた)の向こう(がわ)を見たまま固まっていたのだ。それに気づいた玲也が振り返ってみると、そこには、シマオの母親である島野雅子(しまのまさこ)がいた。彼女は、控室の出入り口に()()かりながらこちらを見ていた。


その顔は笑っていたが、その目は笑っていなかった。「玲也くん❤、その話、おばさんも()ぜてもらえないかしら?」とかなり(あつ)(こも)った” お・ね・が・い ”に、どうしようか相談(そうだん)しようとシマオの方を振り返ったが、当のシマオは(ヘビ)(にら)まれたカエルよろしく微動(びどう)だにしない。(ふたた)び雅子の方を振り返る玲也。「ねえ?、いいでしょ?」(さら)に圧が強くなる、玲也の母親もたまにこうなる、こうなったらもう反抗(はんこう)余地(よち)()い。「あ、はい」玲也にはこれが精一杯(せいいっぱい)だった。向かい側から小さく舌打(したう)ちが聞こえたような気がした。

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