臨時登校日
この時代の子供たちは無料でプールに入れるチャンスがあった。夏休みの間も臨時登校日があり、その日にはプールで水泳の授業があるのだ。先生にもよるが、ガチで水泳の授業をする教諭もいれば、ただの水遊び時間にする教諭もいて、担当教諭が誰かで一喜一憂する生徒もいたくらいだ。
帰省していない子供たちが水着の入ったバッグを持って三三五五と学校に向かっていく。田島小学校は宝田団地から南西の山の中腹の少し開けたところにある。中学校は川向こうの山裾にあって物凄く遠いので、ほとんどの中学生は自転車で通う。昔から水害の多い地域だっただけに、町役場や郵便局や学校、病院などは山の中腹辺りを切り開いて作るのがこの辺の常識で、実際、3年前には台風による増水で河川の氾濫があり、団地内も床下浸水したくらいだった。
今日も今日とて3人組は仲良く登校する。フジショーはあからさまに上機嫌だ。体を動かすことが好きなフジショーは水遊びができることで大はしゃぎだが、内心は女の子の水着姿が見れることでテンションが上がってもいた。玲也は運動音痴なので、今年こそは25mを泳ぎ切りたかったのでかなり緊張していたし、シマオに至っては玲也以上の酷い運動音痴なうえに、去年、プールの中で足が攣って溺れたトラウマもあって水泳が苦手になっていた。そのせいで彼の顔色は悪くなっていた。
不安を隠しきれないシマオの様子に気づいたフジショーは「大丈夫だって!俺たちが助けてやるからさ!」と気休めを言ったが、去年シマオが溺れた時に、フジショーは玲子の水着姿をガン見するのに忙しくてシマオの救出には全く役立っていなかったことをすっかり忘れていたようだ。実際には、玲也が逸早く気づいてシマオが溺れないように支えながら大声をあげて騒いだので、その騒ぎに気づいて駆けつけた教諭たちがシマオをプールから引き揚げて介抱することで大事には至らなかった。もし、玲也が気づかなかったらシマオは溺死していたかもしれなかったのだ。つまり、フジショーはシマオが溺れた時に何もしていなかったのだった。
そんな出来事を忘れもしない玲也は「お前、シマオのこと助けてねーだろ!」とフジショーを一喝すると、「え?そうだっけ?」と都合の悪い記憶はどこ吹く風ととぼけるフジショーであった。ただし、玲也はフジショーが玲子の水着姿をガン見するのに忙しかったことには気づいていなかった。まだまだおこちゃまなのである。




