身代わり人形と生贄
シマオとその両親は神社に奉納された人形は江戸時代から続く身代わり人形だということを地元の利用客から聞いているので、島野親子は”生贄=身代わり人形”ということに心当たりがあったし、フジショーとレイヤもシマオからその話を聞いているのである程度は理解している。それでも、彼らは川村玲子の発言の真意を推し量ることはできなかった。実際、その時の玲子自身も人形を手に持っていたし、はっきりとは見えなかったが彼女は女の子の人形を持っていたように見えた。おそらく今流行りの“リカちゃん人形”だろう。ところが、彼女はその人形をそのまま手に持って帰っていたので、奉納のために持ってきたわけでは無いようだ。そうなると、彼女の発言の意味がさらに解らなくなってくる。
だが、玲子の話には他にも気になる点がある。雅子としては、「お兄ちゃんは〜生きているってお母さんが言ってたもん」の下りが気になっていた。近年のオカルトブームの影響でTVでも話題になったり、オカルトホラー映画でもたまに題材になっている、死人を蘇らせるために依代となるなにかに死者の魂を一時的に移しておき、必要な数の生贄を揃えて終わってから反魂の儀式をすることで死者を蘇らせるというようなことを狂人が実行しようとしているのではないか?という疑念だ。
6年前から毎年1人ずつ溺死していく気味の悪い連続水難事故。そして、死んだ若者たちは全員が7年前の川村和彦行方不明事件発生当時、重傷を負っていた女児から川村少年を殺したと告発されていた者たちだったのだ。その点を踏まえれば警察が川村早希を疑うのも無理はない。だが、彼女が若者たちを溺死させてたという証拠はどこにも見つからなかったのだ。それでも、川村早紀が限りなく疑わしいことには疑問の余地がない。
しばし沈黙が続いたものの、その沈黙を破るように雅子は「もう島神社には行かないでね」と言った。「なんで?」と問う玲也に「なんでもよ」と彼女は決然と告げた。その後、取り繕うかのような冗談めいた笑顔で「川村さん以外は危ないかもね」と付け加えた。シマオ以外の子どもたちはキョトンとするばかりだったが、シマオがなにか考え込んでいるようだったので、2人共、心の中で「後でシマオに尋ねることにしよう」と結論した。
その後、川村玲子が用水路の水門の所で黄昏ていたり、声を掛けたら水門の中に入ってしまったことなどを話したが、雅子からの目立ったリアクションはなかった。ただし、水門には二度と近づかないようにと3人は彼女から念押しをされた。彼女は玲也に対してもう一度かなりきつめに念押しをした。その後シマオの母親が退出したので、3人は夏休みの宿題を始めるのであった。




