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床下の人形

摂社(せっしゃ)の角を曲がると、フジショーはすでに半分以上こちらに来ていた。玲也の苦笑いが嘲笑(ちょうしょう)に変わる、「何笑ってんだよ!だってさ!」とフジショーが言いかけたところで、玲也が「あっ!」と言ってフジショーの足元を指差すと同時に、フジショーは摂社の軒下(のきした)からはみ出していた少し大きめの人形の頭を(ふん)んづけていた。「ひぁーーー!」と情けない悲鳴を上げたフジショーは慌てて飛び退()いたが、その人形には、しっかりとフジショーの足跡(あしあと)がついていた。


「うわ、、、俺、、、ノロわれるのかな?」と心配するフジショーに「神社の場合はノロイじゃなくてタタりじゃねえの?」とツッコミを入れる玲也。「いや、だって、気持ち悪いじゃん!」とまくしたてるフジショー、たしかに気味が悪い、というか、気色悪い。「とりあえず、俺達が見たものをシマオに報告しよう」と玲也が言うと、フジショーは不承不承(ふしょうぶしょう)と言った感じで同意した。


2人は今見てきた床下の人形のことをシマオに報告した。シマオはうつらうつらと眠り始めていたのだがフジショーの悲鳴で目が覚めていた。そして、フジショーの悲鳴の原因となったものの報告を聞いて「ふふふっ」と、まるで吹き出すのをこらえるように笑った。「いや、笑い事じゃねーって」とまくしたてるフジショーに玲也も(あき)れるように笑うが、彼のビビりのおかげで、実は内心ビビっていた玲也の緊張(きんちょう)恐怖心(きょうふしん)も少し落ち着いたのだった。


フジショーと玲也のワチャワチャを()めるかのようにシマオが口を開く、「神社の床の下にあるっていうのが引っかかるけど、もしかするとその人形たちは“身代わり人形”なんじゃないかな?」「ミガワリ人形?」と2人が声を合わせる。「その人を(わざわい)から守るために、人形にその人の体の一部、例えば髪の毛や爪とかを、その人の名前が書いてある名札と一緒にくっつけて奉納するんだ、そうすると、いろいろな悪いことが人形にあたって、本人は無事でいられるっていう言い伝えが日本中にあるらしいんだ」と言う説明に「へぇ」と年相応の反応をする2人だった。


「でも、おかしいな?奉納物(ほうのうぶつ)なら祭壇(さいだん)()せたあと神主(かんぬし)が神社の中に入れるかお()き上げをするはずなんだけどな?」という最もな疑問を口にするシマオ。摂社の床下を覗くと夥しい数の人形があり、奥の方のものは(ちり)が積もっているせいで盛り土のようにさえ見えるが、ひしめき合った人形が泥をかぶったと言われるとそう見えなくもない。


「神社にホーノーされたものは、その後どうなるの?」と玲也が問うとシマオは「そこまでは知らない」と言う。「誰か知っている大人に聞いてみるか?」と玲也が(つぶや)くと「また島田のおじさんに聞くの?」とシマオが問い返した。


そんな中、唐突(とうとつ)にフジショーが「お宝は?」と口を開いた。「あっ」玲也もシマオもすっかり忘れていたのだった。そんな2人に呆れたような表情を見せながらフジショーは”例の”紙切れを右ポケットから取り出した。彼としてはきちんと畳んでいたつもりだったらしいが、客観的に見て乱雑に丸められているようにしか見えず、その紙きれはくしゃくしゃに丸まっている。そんな紙切れをさらに雑に広げながら、そこに書き殴られた乱雑(らんざつ)かつ意味不明な文章に目を落とす。

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