”島”の神社
次第に島が見えてくる、草の茂みや低木の藪に覆われてはいるものの、少し背の高い木立に見え隠れしているが、朱の塗装が少しはげ落ちた古ぼけた鳥居のようなものも見える。この炎天下でほとんどのものがホワイトアウトして見える景色の中、この島の草木の茂みだけが異様なほどの暗い影をまとっている。これだけ木が生えていれば鳥の鳴き声や、せめて、カラスの鳴き声くらいは聞こえてきそうなものなのに、ここからはそういうもの音は一切聞こえてこないのだ。
異様に静まり返った”多嘉良島”の社の前にたどり着いた3人は自然と鳥居額に取り付けられた古ぼけて黒ずみ、よく読めない状態になっている神額(しんがく:神社、もしくは、その神社に祭られている神様の名前を記すもの)を見上げた。そこには【神の㠀】と書かれていた。フジショーが「かみの・・・何?」と読めない漢字があるので戸惑っている、「お前よく読めたなぁ、ほとんど真っ黒じゃん?」とは言うものの、つられてよく見てみるとレイヤにも”かみの・・・なんとか”と読めた。
シマオも最後の漢字の読み方や意味は判らないものの、「江戸時代は横書きでも右から左に書いていたらしいから、これは”なんとかのかみ”って意味になるはずだよ」と深い見識を示した。フジショーもレイヤも「ほぇ~~~」と感心するしかなかった。この当時の小学2年生に”島”の旧字体である、学校で教わることのない漢字は珍しかった。自際には、地元の高齢者の中には「しまのかみさま」と呼ぶ人も少しいるが、ほとんどの高齢者はあまりそれを口にしたがらない。
島の頂上へと続く階段は、一応、何かの石材で作られているようだったが、長年保守工事が行われていないらしく、ところどころ崩れていたが、気を付けていけば何とか上っていけそうだ。それにしても、この鳥居から続く参道の階段の周りには竹藪と木々がうっそうと茂っていて、本当に異常に暗い。そのうえ、鳥の鳴き声もしないどころか、この炎天下の蒸し暑さの中、そこからだけ冷気を放っているように感じるほどに暗く涼しい雰囲気を禍々しく放っているのだった。