多嘉良川へ
3人の少年は他愛もないことを話しながら公園の遊歩道を道なりに進む。この道の突き当りを右手に向かえば多嘉良川の向こう側に行けるのだ。遊歩道をバス停が見える位置まで来たところで、午後一の往路のバスがバス停を通り過ぎていった。
シマオは鉄道や路線バスが好きなのでバス停付近まで来るとバスが通り過ぎていった方向を望む、すると、一つ先のバス停で数人の中年女性がバスに乗っていくところだった。振り返ってそれを見たフジショーが「お前、本当に好きだな」とからかうように言ったが、シマオがその言を気にした様子はなかった。そして、その光景はレイヤとって見慣れたいつもの光景だ。
照りつける日光と蒸し暑さと複数のセミの鳴き声に揉まれるように、レイヤを先頭に3人は進んでいく。この時間はバスくらいしか通る車はいないはずだが、たまにライトバン(当時はミニバンがあまりなく、ほとんどの車両が商用車だった。)が通るくらいだ。
団地方向から県道方面に向かっていくライトバンが宝田大橋の手前の信号で止まる。レイヤたちが信号にたどり着く頃には、ライトバンはすでに通り過ぎており、信号はまた赤になった。