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たから山の頂上
標高約21mの人工山の頂上では、歳の割に背丈が高く恰幅の良い少年があくびをしていた。この山の下部にあるトンネルで油を売っている友人2人を待っているのだ。気温が29度を超えるこの時間帯の暑さは半端ないが、フジショーはあまり気にならなかった。元々、暑さには強い方だったし、何より、毎年おばあちゃんが買ってくれるこの麦わら帽子が作る日陰は涼しいのだ。それだけではない、たかが21mとはいえそれなりにそよ風が来るのだ。地表ではほとんど風がないにもかかわらず、である。
せっかく高いところに来たというのに団地の方を見ても面白いことはない。時折聞こえてくる、布団を叩く音が気を散らすくらいで、見慣れた高層団地の佇まいに目新しい面白さを感じることはない。だが、多嘉良川の向こう側の景色は違う。この山の頂上からだと、多嘉良川の向こう側の景色がよく見えるのだ。公園の植栽の木々と同じくらいの高さの場所に立っているので遮るものが無く、景色が良く見えるのだ。