トンネル内で宝探し
トンネルの入り口付近はまだ暑いのだが、中に1mほど進むとひんやりとしてくる。玲也は身長が127㎝、シマオは125㎝なのでトンネル内を直立して歩けるのだが、フジショーは小2にしては珍しく背が高く、身長が139㎝もあって恰幅も良いので、このトンネルで直立すると土管の天面に頭をぶつけることがあった。小1のころまでは3人ともトンネル内を駆け回っていたのだが、小2になったころあたりから「狭くて嫌だ」と言ってフジショーはトンネルに入らなくなったのだ。「ユーレイが怖いんじゃないからな!」とのこと。
あんなに蒸し暑かったのに、2mほど進むと少し涼しくなってくる。湿気が多いせいでそれほど涼しくは感じられないが、土管に触るとひんやりとしていて気持ち良い。時々近所の野良猫が涼をとっていたりもするくらいだが、今日は猫がいないようだ。中心部まで行けば東西方面のトンネル内を見ることができるので、猫がいたかどうかは後で合流したシマオに聞けばよい。しばらくすると、前の方からの反響音で足音が聞こえる、きっとシマオの足音に違いない。宝山付近には子供の気配は自分たち3人分しかなかったからだ。
このたから山のトンネルには4m毎に土管の継ぎ目があるのだが、この継ぎ目の隙間が結構大きいので、小銭を落としただの、自宅のカギを落としただの、ヘアピンを落としただの、色々落として失くしたという子供たちが少なからずいたのだった。だが、玲也がプラスチック定規で継ぎ目の中に入っているものを掻き出して持ち主に返したことが多々あり、そのことで落とし主が大変喜んだこともあって、そういう時、玲也はちょっとした町のヒーロー扱いされたものだったのだ。そんな思い出もあるため、玲也はこのトンネルにちょっとした愛着をもっている。
その時の癖なのか何なのか、玲也はこのトンネルに入るたびに継ぎ目の隙間の中をチェックする癖があった。だが、今回は思い付きで来てしまったのでプラスチック定規を持ってきていなかった。幸か不幸か、継ぎ目をチェックしたところで泥や砂しかなかった。そんななか、今から定規を取りに帰ろうかなどと考えながら進んでいると、前の方から声をかけられた。「レイヤ、また継ぎ目探しか?」シマオだった。玲也は継ぎ目毎にのぞき込んでいたため、後から入ってきたシマオよりも遅くなったのだ。
「なんかみつかった?」と問うシマオに首を振る玲也、「見つかったらどうするの?」とさらに問われ、「今から定規を取りに行っていい?」と質問に質問で返す玲也に、やっぱりなあというような顔でシマオは肩掛け鞄からプラスチック定規を取り出すと玲也に渡した。そして「そんな時間は無いよ」と玲也が衝動的に帰宅しないようにけん制しつつ「じゃ、僕はこのまま東口に向かうね」と言い、シマオはそのまま中心部を突っ切って行った。
シマオから借りた定規を一瞥すると、玲也は北口に向かって継ぎ目を検索しながら歩き出したが、残念なことに、何も見つからなかった。北口から出てあたりを見回すものの、今回、シマオは先に来ていないようだった。東口トンネルの様子を見るために「たから山」のすそ野づたいに南東方向に進んで行った。到着した先のトンネル東口の中を伺うと、シマオがもう少しで出口に到着するところだった。彼は玲也の顔を見ると「何も見つからなかった」と報告して苦笑いするので玲也もつられて苦笑いするのだった。
「今回は僕も継ぎ目を見ながら来たんだけど、何も見つからなかったよ」と言うシマオに「こっちも何もなかったなぁ」と玲也も報告する。すると「そういえば、西側から来たときは継ぎ目を見なかったんだよな」とシマオが思い出したように言うので、「んじゃ、おれ、トンネルの西側を見てくるよ」と言いざま玲也は東口トンネルに入って行った。それを見送ったシマオはすぐその後について行った。一方そのころ、たから山の頂上ではフジショーが暇そうに多嘉良川の方を眺めていた。




