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人工山トンネルの怪談

夜になると男の子の幽霊が中心の接続部のところに現れて「遊ぼう!」と呼びかけながら迫ってくるらしいのだ。それに応じてしまうと、二度と現世に戻れないらしい。(なんでそんなことがわかるんだろう?)逃げる時は、トンネルの外に出るだけではだめで、ちゃんと家の中に入らないといけないらしい。そうでないと、トンネルから出てきた男の子の幽霊につかまってトンネルの真ん中まで連れていかれて、そこで埋められてしまい、永遠にその男の子とトンネル遊びをしなければいけなくなる、ということだ。いったい、誰がそれを見聞きして伝聞してきたのかわからないが、子供だましの逸話としては上出来らしく、そのうわさ話が出回ってからはこの人工山のトンネルに”夜に”入っていく子供はめっきり減ったそうな。


ただ、問題も一つ起こった。その話を信じ込んだ子供たちが、このたから山トンネルを利用しなくなったということだった。もちろん、レイヤはそんなことは気にしない、気にしないが、やはり、その話を聞いた後だと、流石のレイヤとは言え気味が悪いのだ。だが、今は日中でもあるし、友達と一緒に来ているのだ、レイヤは少し気が大きくなっていた、それに、日ごろから「俺はそんな話信じてないし、ビビってねーよ」と言っている手前、トンネル担当は自分だという自負がある。


「二人は先に上っててよ、おれはちょっとトンネルの中を見てくる。」というと、レイヤはトンネルの北口に向かっていった。それを見たフジショーはにやりと笑みを浮かべると、その後ろ姿に向かって「よせよ、幽霊が出てくるぞ」と脅しかけたが、レイヤは「幽霊が出るのは夜だけだよ」と返した。シマオが「なんで夜だけなんだろう?」とつぶやいたが、フジショーは気にしなかった。


シマオはトンネル南口の中に入りそうになっているレイヤに向かって、滅多に出さない大声を出した。「レイヤ!僕は西口から入ってみるから、真ん中で待ってて!」それに対して、レイヤは若干ほっとした様子で「おう!」と応え、トンネルの中に入って行った。そして、シマオが北西に向かって歩き出すと、フジショーが焦ったように「まじかよ!?」とシマオに向かって咎めるように言ったが、少しむっとした表情で「お前、ビビってんのか?」とシマオがフジショーに向かって問い質すと「いや、そういうわけじゃねーけどさ、気持ち悪くねぇ?」と返してくるので、シマオはフッと笑みを浮かべながら、「やっぱビビってんじゃん」と言いざま踵を返したのだった。「ちっ、ちげーし、ビビってねーし、おれ、体が大きいから、あそこ狭くて嫌なんだよ、、、くそっ!」っと負け惜しみを言いながら、フジショーは一人でたから山を登り始めた。


【トンネル内】

トンネルの入り口はまだ暑いのだが、中に1mほど進むとひんやりとしてくる。レイヤは身長が127㎝、シマオは125㎝なのでトンネル内を直立して歩けるのだが、フジショーは小2にしては珍しく背が高い139㎝で恰幅も良いので、このトンネルで直立すると頭をぶつけることもあった。小1のころは3人ともトンネル内を駆け回っていたのだが、小2になる少し前あたりから「狭くて嫌だ」と言って、フジショーはトンネルに入らなくなったのだ。


あんなに蒸し暑かったのに、2mほど進むと少し涼しくなってくる。湿気が多いせいでそれほど涼しくは感じられないが、土管に触るとひんやりとしていて気持ち良い。時々近所の野良猫が涼をとっていたりもするくらいだ、が、今日は猫がいないようだ。中心部まで行けば東西方面のトンネル内を見ることができるので、猫がいたかどうかは後で合流したシマオに聞けばよい。しばらくすると、前の方からの反響で足音が聞こえる、きっとシマオの足音に違いない、この山の近くには子供の人影は自分たち3人のものしか見えなかったからだ。

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