ラザフォード家執事のつぶやき
ラザフォード子爵家に仕えて40年。執事セバスは、主第一に真面目に仕えてきた。先代がなくなり、エリオット坊っちゃんが家督を継いだ。
大奥様は、息子可愛さに自らが当主代理業務を行った。まだ若い坊ちゃまにはまだ早いと甘やかしていた。
それなのに、学院卒業したばかりのダリア奥様に仕事を教えこむ。おかしいことはわかっても執事ごときが言えることでない。ダリア様は、本当によく頑張っていらした。4年もしないのに仕事を覚え、家内の采配が振れるほどに。
奥様はさらに若奥様を社交場に連れまわした。さらに当主代理の仕事まで、坊ちゃまを差し置いて教え込んだ。
ダリア奥様が領主仕事と子爵夫人の仕事ができるようになると、大奥様が亡くなってしまった。
エリオット坊ちゃまに、何も引継ぎしないで逝ってしまわれた。
大奥様の喪が明けぬうちにこの騒動。執事の私さえ涙も乾かないのに。どれだけダリア奥様が、このラザフォード家を支えているのか知らなさすぎる。
大奥様を恨んでしまいます。
まさか、エリオット様がダリア奥様を離縁するとは大奥様も思っていなかったんでしょう。ダリア様はエリオット様と結婚してから夫婦らしい生活などしていませんでした。
遊んでばかりのエリオット様にダリア様の大切さを教えるべきでした。貴族の結婚です。愛人を作ろうと側女を侍らそうと、正妻は尊重しなければならない。
あまりの理不尽さに、これ以上お仕えすることが出来ません。私もマーサももう頑張れません。ピンクちゃんのお嬢様はこの結婚を喜ぶのでしょうか?エリオット様は貴族の、いえ、人としての常識も節操もないのですから。あったら、こんな無謀な行為をするはずがありません。
ダリア様あってのラザフォード家、エリオット様にもろもろの書類を出したら、坊ちゃまに辞表を出そうと思っている。
ダリアの白い結婚による離縁計画
3年子供ができなければ 離婚申請が夫婦両方から申請できる。ダリアはこれを利用しようと思っていた。エリオットが女性を連れて来るのは分かっていた。その人との子供が跡取りになるなら自分など必要ない。跡取りとして、愛人の子供の子育てをさせられる未来も考えられる。
義母のおかげで色々なことを学べた。領地経営や商売の取引、お金の使い方、行儀作法等必要なら外国語やダンスまで。セバスやマーサも最初は厳しかったが随分優しくなった。
「うちの嫁なの。まだ若いけどよろしく」
なんて言いながら関係各所やお茶会にお義母様が連れて行ってくれた。
エリオットからは贈り物など貰ったことないが、お義母様からは、ドレスや宝飾をいくつかいただいた。
ラザフォード家代々の宝飾は財産目録と一緒に残します。それでもいくつか手元にある。
義母から死の間際持参金を返されたのには驚いた。エリオットの性格もわかっていたのか、ラザフォード家のお金を分散したようだ。ダリア専用の商業ギルドカードに入金しておいてくれた。
お義母様有難うございます。白い結婚なので持参金そのまま返していただきます。ダリアは、ラザフォード家を喜んで出ていきます。
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