好機を逸っして横槍を入れられる
「うん? 小僧どうしたのだ?」
「父様、お髭が痛いだっちゃああ!」
親子の抱擁を求めるも娘に拒絶された哀れな父は、ナポレオンの背で天日干しのキュウリみたくシンナリしているハルトに向き直った。
「実はヴァージニアさんの事で伝えたい事が――――」
だがしかし、
「――――おおお! ここにいたかシュレリア男爵よ!」
「&#%£¢♀♂℃…………」
ハルトはタイミングを失う。
世界の命運を変えるかも知れない振り絞った勇気も、この場に相応しくないのんびりした呼び声で腰をおられたからだ。
「これはホーキンス侯爵様」
このどう見てもメタボの初老の男に、シュレリア男爵とヴァージニアは胸に手を当て頭を下げた。
金色に輝く手入れが行き届いた自慢の髭が正面に向く。
三日月のように上に向かって反っている様はシャチホコにも見えなくはない。
侯爵は体格のよい軍馬ではなく綺麗な競走馬に乗っているので、馬は重たく苦しそうにしていた。
「よいよい、畏まるな。話を手短に済ませたいのだ。余計なしきたりは要らん」
「はっ…………」
「御用向きは今の一件ですか? それでしたら私めが後で如何様にも処罰を…………」
「そんな事はどうでも良い。騎士の若気の至りは誰にでもあることだ」
「はっ、見事な御配慮ありがたき幸せ。心より感謝を」
侯爵は己は関知しないと公言する。
これが政界と言う名の伏魔殿に長いこと居座っている男の処世術だった。
「お主に尋ねたい。これから態勢を整えたのちどう動けば良いと思う? いや、ここをどう切り抜けると聞いた方がよいかの?」
「私のような低い貴族階級が侯爵様に講釈を垂れるなど畏れ多い事です」
「そんな事などどうでもよい。今は戦時である。歴戦の勇であるそなたの忌憚なき意見が聞きたいのだ」
描いた通りの答えが返ってこなかったのか、侯爵は不服そうに顔をしかめる。
マントのサイズが合わないからか首が苦しそうにも受け取れた。
「………………然らば、思ったまま語ります。無礼な言い回し平に御容赦を」
「よいよい。男爵よ早く言え」
侯爵は答えが欲しくて急かす。
対してシュレリア男爵は目を見据えて語り出した。




