リアリストVSロマンチスト
「本当に一緒に戦ってくれるんだっちゃね」
「勿論だよ」
散々確認したが、再度念を押すが如くハルトの言質を取る。
口約束では心許ない彼女としては心配で仕方がない。
まだ付き合いが浅いのだ。
この社会では見返りが当たり前。
金、名声、名誉、婚姻、名品、領地、これらを保証されて初めて人は動く。
王と家臣の繋がりでさえ騎士道と信頼という綺麗事だけでは片付けられない。
ロマンチシズムよりリアリズムが思想として根付いているのだ。
なのに保証も担保もいらないと本人は答える。
「信用できない……。見返りを求めない奴は人間じゃないちゃ」
「ヴァージニアさんを1人にさせられないでしょ」
「その簡単に口から出てくる歯の浮いた言葉に信頼性を感じない」
「疑り深いなぁ。友達いなかったでしょ?」
「ふん! 余計なお世話だっちゃよ」
図星を突かれたのか頬が膨らむ。
そんな騎士様を拝見して改めて可愛いと思った。
だからこそ、ハルトは懸念している。
(このまま行けばバッドエンド直行だ。ヴァージニアさんをこのまま放っとけない。正直、僕に何が出来るのか分からないが、匿名の女神がお膳立てしてくれたこの世界で、僕の役割を果たさなければ)
戦場を照らす太陽は何処かいつもと違い、見守ってくれる暖かさがなく、冷ややかな事務的対応に感じ取れた。
「あ!」
「あんまりくっつくなだっちゃ!」
ハルトは体勢がキツくなったので、上体を起こそうとするが、堪えきれずによろけて小さき少女へ背後から抱きつく。
髪から流れてくる蘭の香りが鼻孔をくすぐった。
「それは僕にここから飛び降りろと?」
「そそ、そんなに言うんだったら、私に触れるのを特別に許可しない訳でもないだっちゃよ……」
「いえ、後が怖いのでナチュラルに遠慮します」
「……………………………やれ、ナポレオン」
「あああああ、揺れる揺れるぅぅ!」
飼い主に似て意地の悪い馬は踊るようにステップを踏む。
「ふん! この変態豚野郎」
「ぶひいい! ――――おえぇ!」
こうしてまた定位置へと生還したゲーマーは、馬の体温が人間より暖かいのを肌で感じながら、胃から戻りそうなシュークリームを必死に喉元でディフェンスした。




