情けない現代人
武装は騎士団の名に恥じない全身を覆うプレートアーマーを各自装備、それは軍馬にも及ぶ。
個では微々たるものでも、集だとここから繰り出される『重装騎馬突撃』は対人戦は言うに及ばず、大型のトロルやドラゴン、障害物となるものはどんなものでも粉砕してきた。
これが貴族達の驕りを長年助長させてきた理由の一つである。
そして、その中にどう見てもただの民間人が辟易としていた。
「うぷっ……」
「大丈夫だっちゃか?」
「だ、大丈夫じゃないよ。ゲームの乗り物ならどんな大型アトラクションへっちゃらだけど、リアルしかも生物はダウトだよ……」
「変態語は理解が難しいっちゃ……」
どう見ても手入れを怠っているぼさぼさの黒髪。
一張羅であり学生の証である紺のブレザーとズボン。
この世界観に相応しくない仮装した道化師は、まるで神への生贄みたいに馬にしがみついている。
無論周りの騎士から失笑される有り様だ。
だが、他人の目を一切気にしないハルト的にそんな事はどうでもいい。
伊達に制服で18禁コーナーに表紙だけで三時間へばりつく猛者ではないからだ。
ヴァージニア達はホーキンス侯爵の道案内として侯爵軍の集合場所へ向かっていた。
ただし、先頭は貴族の誉れだから下級貴族には巡ってこない。
後方から伝令を通して先頭に伝える。
実に下らない特権階級の悪習であった。
隊列は縦長が基本。
特に馬の場合、馬がよろめいた時を想定して立て直し出来る様に幅を広くとっている。
行軍は先行の偵察|(斥候)隊・前衛・本隊・後衛。
更に本隊の側面に防御の高い重装騎兵を配置して守りを固めていた。
しかし、実際は戦闘時、直ぐに戦闘へ移れる様に方陣形をとるのが定石だ。
この状態だと前方の兵士が死ぬのをただ黙って見ていなければならない状態になる。
敵陣形の突破にしか使えない特殊配列。
このデスパレードでは勿論士気の低下は免れない。
この司令官と副官達の不勉強が際立つ。
その仰々しい行進の中、小さき騎士は一体何処に配置されているのかと言う読み手からの問いへ、後方に一つだけ隊列に窪みがあると答えよう。
そこがヴァージニアの居場所だ。
最下級貴族なら前方だと思うが、名誉を重んずる騎士にとって後方は不名誉なこと。
ここで指揮官の統制力が問われるのだが、賄賂が裏で行き合っている以上、上層は関知しない。




