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愚か者達の行軍

 

 ゴルダ会戦 三日目


 初日、陣形を組み互角の争いをするも、戦争は兵糧の大半を焼失した今、こちら側は大いに劣勢であった。

 良識のあるアントーワーク伯爵、パルカス子爵、カリファ辺境伯が善戦している。     

 しかし初日に目立つことしか頭になかった先鋒のホーキンス侯爵が早々と戦線離脱したのを皮切りに、頭の弱い前線の貴族は総崩れとなった為、そこもいつ崩壊してもおかしくはなかった。

 

 魔王軍は敵大将の捕獲と、機能を失い散り散りになった残敵の制圧に入っていた。

 その理由は勿論、軍の立て直しの阻止。

 驃騎将軍バクリュウドが一目置く名将ヴァン公爵が行方知れずになっていたからだ。

 このまま引き下がるとは到底考えられない軍部は掃討戦に切り替える。

 ヴァン公爵とはそこまで警戒しなければならない人物であった。


 一方、ホーキンス侯爵も独自に巻き返しの為に他の貴族との合流を画策。

 勿論、王国の事など微塵も考慮していない。

 どうすれば今の地位を維持して自分だけ生き残れるかのみであった。

 その結果、普段より私欲にまみれていたのが影響して 、彼に賛同する者は皆無に等しい。


 歴史での彼の評価は高い。

 領国の運営方針が功を奏し巨万の富を築いていたからだ。

 その強引な手腕に敵も多かったが、手堅く国税を納めている為、王国は侯爵を重宝した。

 しかし、それだけの男である。

 野望はあっても、それは戦乱の世に相応しくない私欲の塊。

 国を憂うヴァージニアの上司には相応しくなかった。


 ◇◆◇◆◇◆


 馬は進む。

 それを映す陰影も進む。

 一点もない蒼天の下、障害のない大平原を堂々と進む。


 総勢千騎の騎馬隊が戦場となっているゴルダ平原を悠然と行軍。

 軍馬の土を力強く蹴る音が大地に木霊していた。

 金属で構成されているメタリックカラーが陽光を反射し、異様な光景に辺りの動物達を遠ざけている。


 先頭の戦車に獅子王騎士団の御旗が高々と上げられていた。

 さも敵に見付けてくれと言わんばかりに。

 これは見栄なのか策なのか、侯爵当人にしか分からないが、戦争経験がある少数の知恵のある者は、愚考にも程があると口を揃えてぼやいていた。

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