謎の板
素直になれないヴァージニアは恩人ハルトを一瞥すると、気持ちが制御不能で発散出来ないモヤモヤを、無理矢理外へ追いやるようにバルコニーの窓を開ける。
そこには見慣れたゴルダ平原の世界を見渡せた。
領主の娘としてはここが戦場になっているのが未だに信じられなかったが、もう目を背ける暇はないと今の現実をしかと焼き付けた。
平原の心地よい風が収穫時の稲穂の様に、黄金色の髪を大きく揺らす。
ドレスのスカートも上がりそうになったが、それは咄嗟に押さえたので事前に阻止した。
だが、もしかしたらまた見られたという疑念を持つ。
それだけ、ハルトのラッキースケベは侮れない。
「ううう――――ん? それはなんだっちゃ? レンガ? プレートか?」
顔を赤くして恥ずかしそうに唸ったヴァージニアだが、またまた目がいった窓際に置かれている奇妙な長方形の板へ興味を持った。
「……えっと、これの事かな?」
「そうだっちゃ」
まだ日中なので太陽の日射しが注がれている。
謎レンガに繋がっていたもう一方の平べったい黒い板に光が集まっている様に感じた。
「これは携帯いやスマホっていうんだよ」
「スマホ? 前に戦闘の時に使ったちゃよね? 板から声が聴こえた」
「僕の世界の万能ツールだよ。まぁ、アプリが役に立たないから性能は半分以下だけど」
「万能?」
そう、ハルトはソーラー式充電器にスマホを繋げていた。
「そうだよ。メインの機能は通話かな。これがあれば世界中の人と会話が出来る。この前のも会話していたんだよ」
「そんな魔法聞いたことがないっちゃ」
ヴァージニアは初めて虫をみたかのように、魔法の板へ恐る恐る触るが勿論良く分かってない。
「他にも色んな情報が集まってるので常時閲覧可能」
「はははっ! そんな夢みたいな嘘を。そんな物があれば世界統一出来るっちゃよ」
あながち間違いじゃなかった。
ハイテクとはそれだけ文明の遅れた国にとっては驚異。
アメリカ大陸へ上陸して、広大なアステカ帝国をあっという間に滅ぼしたスペイン軍が良い例だ。
「…………そのうち分かるよ」
「ふん、まあ、どうでも良いけど」
どうせ解説しても馬の耳に念仏。
ならこの場合は、話を濁す選択しかなかった。




