ゴスロ伯爵の不可解な行動
――――静かにリプレイは停止して、再び時間は現在へ。
「――――――ヴァージニアさん、それは酷いよ!」
「侯爵様は己の保身しか考えていないだっちゃ……」
ハルトはヴァージニアの回想に耳を傾け、ドレス姿のヴァージニアにドギマギしながらも、平静を装ってマグカップに注がれた紅茶を飲む。
「でも、ゴスロ伯爵の意図が読めない。何でわざわざ他の騎士団に援助したんだろう?」
「私には安全な所を確約する為みたいな事を言っていたっちゃ」
「先を読んで部隊配置したみたいだね。本体間近の食糧庫なら堅実な判断だよ。でもそれは格下とか一般戦闘の場合だよ。王国の未来がかかっているこの一戦にこれは愚策だよ」
中世歴史オタクは第三者の視点から素直な考えを述べたつもりが、ギロッと、師匠を馬鹿にされたヴァージニアの眼圧にたじろぐ。
まだ貴族達に薪を大量にくべられて怒りの炎が鎮火していないのだ。
「…………うん。意図が何処にあったのかわからないちゃ。騎士団長ヴァン公爵様の参謀経験もある師匠ならこの結果は容易に予想していただろうし」
「幾ら平和ボケで兵の質が落ちていたにしても、寡兵で守備がどれ程に危険行為なのかは何時の世も同じ」
「そうだ……」
「何か弱みを握られていたとか?」
「それはない。巷でサーガとして吟われる程、清廉潔白が師匠の信条だっちゃ」
「それに侯爵の態度も解せないよ。まるで私が犯人ですって言っているようなものだ」
ここに帰還する間、ゴスロ伯爵の事を自慢するかのように言って聞かされたので、ある程度の事は理解できていた。
「それは権力者は力でねじ伏せる事が常套手段。頭隠して尻隠さずが多いから不思議じゃない」
「だから、僕は気になるんだ。確かにバクリュウキョウは強かったけど、有名轟くゴスロ伯爵が逃げて無惨に即死。誇り高い騎士がそんな死に方をするのかなと」
「私も疑問に思っている。まるで仕組まれた劇を観賞している気分だったちゃ」
だが、本人死亡の今、疑いを晴らす方法はもうない。
腑に落ちない二人は、ヴァージニアが持ってきた紅茶を飲み、昂る気持ちを正常値へ戻した。
「ありがとうだっちゃ。お前に打ち明けて気持ちが幾らばかりか楽になった」
「僕はヴァージニアさんにいつ殴られるかヒヤヒヤものだったよ」
「そうか、それは良かっただっちゃ。何故なら今からだからなっ!」
体力馬鹿の強烈な平手打ちに、「ぐへぇぇ!」ハルトの首が蛇口のように捻られた。




