お嬢様はご機嫌ななめ
「母様みたいな美人かぁ……………………………そうなるといいなぁ―――ちょっと待て、今は美人じゃないと?」
「十分美人です、はい」
殺気を察知して政治家のようにすぐに訂正。
美少女と言わず命拾いするも、女心が皆目理解出来なかったので、もし謝罪会見しても恥の上塗り、査問委員会ものであろう。
ヴァージニアも自然にベッドへ座る。
退いたハルトの温もりが残っていても、死線を潜り抜けた仲なので異性でも別に不快ではなかった。
「ハルトはここにくるまで、今まで何をやっていたんだっちゃ?」
「それは職業について? それとも文字通り寸前の僕の行動?」
「前者だっちゃ」
「昨日も言ったけど、僕は学生だよ。この国にもあるか分からないけど、学校に通っていたんだ」
ハルトは文明の違うヴァージニアにも理解できる様に、噛み砕き丁寧に説明。
「誰でも学べる学び舎? そのような場所があるんだっちゃか」
「うん」
「それは凄い。この国だと上位身分とは話すこともまともに出来ないっちゃ」
ゴスロ伯爵の付き人をしながらヴァージニアも通っていたがあくまでも貴族の学校。
身分も人種も関係ないというハルトのおとぎ話に興味を持った。
「王様中心の身分社会って奴だね」
「それに知識は平民へ与えないで貴族が管理するのが当たり前。余計な知恵をつけると反乱に繋がるからだっちゃ」
本人も成績が良い方じゃないが、いや、おもっいっきり下位だが、お姉さんぶりたい彼女は訳知り顔で語る。
「ヴァージニアさんは成績どうだったの? 僕は趣味に傾倒していたお陰で歴史以外の成績は良くない」
「わ、わたしは悪くはない。そう悪くはないだっちゃよ」
身体能力の高さ以外は全滅とは歳上のプライドが邪魔して言えなかった。
ハルトも察したのでそれ以上の追及はしない。
ところでと、然り気無く接続助詞を入れて、
「ヴァージニアさん話変わるけど、そういえば何処に行っていたの?」
「うちに滞在している侯爵様に謁見していたんだちゃよ」
「だからそのドレスかぁ」
一輪の花が咲いたような鮮やかな菫色。
社交ダンスでしかお目にかかれない華やかな装いに、眼福眼福とお年頃な男子は幸せな心持ち。
ただ、ドレスなのに胸元に威厳がないが、それを口にしたら何をされるか分からないので自制した。
「非常時だから鎧姿でもいいと思うけど、御付きの従者達に止められたんだっちゃ」
普段着なれていない社交用儀礼服が肩苦しくて仕方なかった。
「話は上手く行ったの?」
「この顔を見てそういう風に見えたのならめんたま取り替えた方が良いだっちゃ」
眉間がひくつき、額には青筋が浮かんでいた。
「駄目だったのね………………」
「うん。相手が典型的な上位貴族で、全然全くお話にならないちゃよ」
はぁ……と嘆息をつくと、ハルトに回想しながら語る。




