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それぞれの思惑


 ―――二人が去った後、それと入れ違いに二つの影が若き将の背後に左右に付く。


「ソウダは任務を甘く見ているきらいがあるな。確かに微塵も心配などしていないが、幾ら遥昔の事とは言え、相手はウイルの系譜だ。あの者等が剛の者でも、用心に越したことはない」

「ふっ、コウガ、お前の事だ、どうせ何か手は打ってあるんだろ?」


 白銀のワーウルフ、姓はガク、名は、あざ名が史明シメイはあたかも全てを見透かしているかの様に、バクリュウエイの思考を言い当てる。

 幼馴染みにして従兄弟に当たるが、母が後妻で楽家に嫁いだため、連れ子の楽師とは血が繋がってはいない。


「コウガ様、あんちゃん、何でだ? 別に大した事じゃないだろ? 兵も少数だが与えられているし、もし、公爵に出くわしたって、十分に対処出来るじゃないか?」


 楽師の弟、栗毛のワーウルフ、姓はガク、名はハク、あざ名が晃子コウシは、場を読んでいない一般論で二人に問うた。

 戦士としては兄と同等の武勇を誇るが、何分、二人に比べてまだまだ若輩者、先を読む力が欠けている。


「コウシ……、お前は黙っていろ。俺の頭が痛くなる」


 見た目がシベリアンハスキーに似ている銀色の狼は、愚弟の凡庸な問いに頭を抱えた。


「えー、分かったよあんちゃん黙っている」


 兄に比べて横幅が広い弟は、否定されても腐る事無く、素直にしたがった。


「コウシよ、任務はあくまでも捜索だ。討つ事じゃない。もし出過ぎた真似をすると私の首も危ないのだ。私は誰よりも才を信じているが疑り深い。まして新参ものだ。だから、ここは念には念を入れる」


 彼等の甲冑は鉄製で、トランプと同じ大きさの板を縦横に紐に通し繋ぎ合わせてある。

  革に比べ重く値は張るが、肩と膝なども覆っているので、防御力は上半身プレートアーマーの一般兵よりも格段に優れていた。


「コウガ、済まないな。俺達が行ければお前が気に病む必要等なかったのだが、何分、都の上層部の連中に急な呼び出しをされて、至急にここを発たなければならない……何か感じないか?」

「策謀か?」

「分からない。だが、用心に越したことはない」

 

 対して一瞬、何も語らず背を向ける。


「紅いな。これだけ色が濃いと、戦がここで終わるということは無いということだ」


 と、色々と含みがある言い方で、沈む寸前の天空の王を手で握り潰す動作をした。

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