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バクリュウキョウ、魂を託す


「………………はぁはぁ」

『やったのか?』


 ヴァージニアは無言で見下ろす。


「…………はぁはぁ、ヴァージニア・ウイル・ソード。お前の勝ちだ」

「お前わざと斬られただっちゃか?」

「何故そう思う?」

「最後に笑ったからだ」

「ふふ、ヴァージニア・ウイル・ソードよ、これを持っていけ」


 バクリュウキョウは自らの胸を貫き、「ぬっぐはぁ!」肉体からコアを抜き取る。

 結晶は高潔な生き様を表すような、透き通る青白い光を放っていた。


「やめろ! 本当に死ぬだっちゃ!」

「己が認めた勝者に魂を差し出す、これが誇り高き魔族の流儀だ。ごふっ!」


 ヴァージニアは一瞬躊躇するが、『ヴァージニアさん、受け取ろう』敗者の戦士に敬意を示すのも騎士の努めだと、ヴァージニアを静かに諭しイビツな原石を受けとる。

 手には緑の血液が纏わりついた。


「バクリュウキョウ、お前は元々領民を手にかけるつもりはなかったのではないのか?」

「ああ、嘘だ」

「何故だっちゃ?」

「ああ言わなければ、お前は死ぬ気でこないと思った。俺との斬り結びを楽しんでるきらいがあったからな。これから先、戦士として生きていくには覚悟が足りないと、お前の中にいるもう一人にも伝えてくれ」

「気付いていたのか?」

「俺は修羅に生きる者だ。その位は感づく」


 ハルトはここで初めて、バクリュウキョウは自分も認識して語り掛けていたと思い至る。


『トカゲのおっさん……』

「それとお前の師匠の暴言を取り消そう。む、娘よ、ハァハァ……ゴスロ伯は勇敢な男だった。あれほどの武人はいない」

「でも、お前は歯牙にも掛けなかった。臆病者だと罵った。だから悔しい」

「ゴスロ伯はお前の事を……ぶはぁ!」

「バクリュウキョウ!」

「我がた、たましい……行く末……見届け……うぞ」


 己の信ずる修羅を生き抜いた武の漢、バクリュウキョウ・コウシン。

 誇りと共に灰となった。

 これから先、遺言通りヴァージニアの行く末を見守っていく事になるだろう。


「……………………………………」

『……………………………………』


 全てが終わり、この神の眠る森に静けさが戻る。秋風が森を鈴のように鳴らす。

 二人とも思考回路が止まり、暫し力が抜ける。

 ただ、上を見上げ燦然と輝く大銀河団に心を預けた。

 

『僕達、生きているんだよね?』

「天使様じゃなくて、変態の声が聴こえるのは非現実的だっちゃ」

『同感、死んだら沢山の巨乳美少女が僕を迎えに来てくれると信じてるから、ヴァージニアさんは違うよなぁ』

「………………………………………」

『………………………………………』 

「ぶっ殺す」 

『すいません、調子に乗ってました』


 二人は笑顔だった。

 軽口を叩き死からの開放感を噛み締めている。


「変態、ありがとうだっちゃ」

『僕は何もしていない。全てはヴァージニアさんの頑張りだよ』

「えぐっ、師匠……、皆……、やったよ、やったっちゃああああああ! うわあああああああああああ!」


 涙が止まらなかった。

 止めるつもりもなかった。

 だが、騎士としてのプライドが泣き崩れるのだけは避けた。


 東から昇った新たな一日が、ヴァージニアを暖かく包み込む。


 外に降りる方法が分からないハルトは、一番に抱き締められなかった事にもどかしさを感じだ。


 しかしながらひとしきり泣いた後、ぐ~と、情緒を無視したヴァージニアの腹が鎮魂歌ならぬ非常警報を鳴らす。


「はははっ! お腹減っただっちゃああ!」

『そうだね!』


 長かった夜明けはもう近い。

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