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バクリュウキョウ、劣等騎士の本質を見誤る。


(これは俺のコースを何らかの方法で見破られたと読んで良いだろう。なら、順路を変えて先回り。相手が油断したところに一撃を食らわし戦意を奪う)


 実践経験豊富な戦士は一定順路を辿って暗記したという心理に行き着く。


 だが、刃を交えてこそ武人同士の戦いだと、戦士の本能が勝利の方程式を狭めている事に気づいてはいなかった。

 でなければ何故ヴァージニアが周囲と一体化しているのか見破っていただろう。


 構築しているルートを逆走する。

 慣れないことをしたせいで、マントや具足にキズが付くが、油断出来ない相手にそんな事を気にしているゆとりはない。


 だが、いくら足を鳴らしても目標の金色の髪にに辿り着く事はなかった。


「こっちだっちゃ!」

「ぐっ!」


 渾身の胴打ちで鎧にヒビが入るも堅い鱗の尾で防ぎ飛ばした。

 しかし、そのまま消える。


 いつの間にか、ヴァージニアを閉じ込めていた筈の牢は、バクリュウキョウを袋の鼠へと追いやっていた。


 それでも立ち止まる事は許されない。

 攻撃を警戒しながらひた走る。


「うらああああああ!!」


 しかし、それでも一撃を携えて、奴は来る。


「これは面妖な。一体どうなっている?」

「意趣返しだっちゃ!」

「こなくそ!」 

 

 見た目に反して重い一撃を、バクリュウキョウは両腕をクロスした手甲で受け止める。


「ぬおおおおお! 俺が力負けするだと!? なんて力だ!」

「純粋な力比べでは私に勝てない! 貴族学院では劣等騎士と罵られてきたが、この力だけは師匠に認められたんだっちゃ!」


 結果、足が地面にめり込み、遂に勢いを止められ、「しまった!」追い討ちを掛けるように自ら放った真空波の洗礼を受ける。

 更に両手剣は斬る目的ではなく打撃を目的に造られた武器。

 ならばその衝撃で手甲が破壊されたのは言うまでもない。


「バクリュウキョウ! お前を倒すだっちゃ!」 

「くくっ、まさか俺が同じ手でやり込められてしまうとはな! だが、ここは俺のテリトリーだ!」

「いやさ、もう、お前の負けだっちゃよ!」


 小さな狩人は捨て台詞を吐いてまた闇に消えた。

 この瞬間、バクリュウキョウはある点が気になる。

 小さな騎士が大胆にも地面の土を全身に塗った事が印象に残ったのだ。

 夜戦、奇襲戦法の基礎を使いこなしている。

 

 しかし、この煉獄で俺以外自由に動く事が可能な奴がいる筈がないと、バクリュウキョウはこの不可思議なイレギュラーに答えを出せずにいた。


(俺と同じ手口か? だが、泥如きで闇に溶け込んでも、この誇り高きリザードマンが人間のメスに遅れを取るわけがない)


 この自信と油断が彼を足音たてて確実に近づいてくる破滅へと誘うのだった。

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