一騎討ち
「即答……。当然と言えば当然か。俺が逆の立場でも同じ答えを示すだろう。それを差し引いても、お前をこのままにしておくのは勿体無い。暴走したとはいえ、俺が丹精込めて育てた最強の精鋭達が、たかがメスの人間一匹に掌で踊らされたのだからな。それに――」
「師匠の仇が何を言っても無駄だっちゃ! 第一このまま処刑になるとしても騎士として祖国を裏切られるか!」
「愚問だったか」
残念そうに目を閉じる。
「ならば」
「後は剣と剣で」
「拳と拳で」
「「語るだけだ(だっちゃ)」」
武器を構える両者。
だが、
「その前にこれを飲め」
『おっと』
何の前振りも無しにいきなりバクリュウキョウは何かを放り投げてきた。
ハルトは反応が遅いどんくさいヴァージニアに代わり操作してキャッチ。
「これは?」
「即効性の回復薬だ。お前とは対等な条件で勝負したい」
藍色の変わった造形の小瓶だ。
中には液体が入っていた。
「誰が飲むか!」
『いや、ヴァージニアさん、僕としては飲むべきだ。自分でも分かっているでしょ、もう、体力も残りわずかだよ。それにこのリザードマンはソンゲンとは違う。恐らく義を重んじる本当の武人だよ』
ハルトはレッドラインに達しているライフメーターを睨みながら、自らの意見だけ提示すると、最後の選択は宿主に任せて見守る。
ヴァージニアは長考後、毒を考慮して、一度、捨てる動作をするが、一度生を諦めた身、ハルトに全てを委ねると表明した以上、疲労困憊の彼女に元々選択肢などない。
思い止まって漢方薬や青汁を口にするように、怪訝な表情を浮かべながら鼻をつまんで無言で瓶に入った液体を飲み干した。
「変態どうだちゃ? 変化はあったか?」
『うん、体力は回復したよ。そっちはどう?』
ゲージがフルチャージされていた。
「メチャメチャ不味い、ではなくて体が軽い。それに一気に楽になった」
ヴァージニアは屈伸やジャンプして反応を確認。
「当たり前だ。それはいざという時の為に取っておいたエリクサー。どんな瀕死の重体も即座に治る世界最強の回復薬だ。大した物ではないが俺のせめてもの侘びと受け止めてくれ」
『うお! こんな所でロープレの代名詞の名前を聞けるとは!』
ゲームで定番の最高級アイテムの名前を聞き、ハルトは興奮した。
「礼は言わないだっちゃ」
「それでいい。これから死合う俺達には一切不要。さあ、仕切り直しといこう」
今のやり取りを指しているのか、それとも昼間の一戦の事を指しているのか、武人はこれ以上深く語らなかった。
「バクリュウキョウ・モウハ!」
大型の戟を片手で振り回す。
「ヴァージニア・ウイル・ソード!」
大剣を引きずり下段へ。
「「いざ、尋常に勝負!」」
ハルトは再び、一段下げたギアをクラッチを踏み込み上げる。
『ヴァージニアさんの身体能力をまた一段上げたよ』
「了解だっちゃ」
ヴァージニアは気合いを入れなければ振ることも叶わない重い大剣が、また、みるみると木の棒切れなみに軽くなっていく事を直に感じとった。
ギアを上げると身体能力が格段に上がる。
だが、同時に精神力が著しく低下する諸刃の剣。
だから、セカンド以上は上げられなかった。
ゲームでは一時行動不能になるが現実ではどうなるのは見当もつかなかったからだ。
ソンゲンのバックに強大な敵がいるのは感覚的に察知していた。
だから、警戒してサードは温存していた。
そうでなければ、余計な作戦をとらなくとも正面からソンゲン達に勝てたのである。




