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鬼さんこちら、手の鳴る方へ(ハルトサイド)

 2


「ゴミの分際で遥か上位種であるオーガ族をおちょくるとは良い度胸である!」

『ヴァージニアさん、もっともっと挑発して!』

「ウドの大木!」


 でも、この後に続く言葉が思い付かないから、咄嗟にベロを出して相乗効果を狙う。


『ヴァージニアさん……』

「いきなりなんて無理だっちゃ」


 僕にはあんなに罵詈雑言浴びせられるのにと、傷つきやすい現代っ子は聴こえないように呟いた。


 この間にもハルトは、画面に表示されている車のスピードメーターと酷似しているソウルゲージがある程度上がったので、クラッチを踏み、ギアをファーストからセカンドへと切り替える。


 序盤では目で捉えられなかったソンゲン怒り任せの一撃が、「消し飛べ!」まるでスローモーションを眺めているが如く、走り高跳びのようにゆっくりヴァージニアの下をスレスレに流れた。


 そのまま、次の密集地へイルカジャンプ。


 ソウルゲージとはヴァニシングライダーの基本システムの一つで、心の高揚感または気合いを数値化したもの。

 ソウルが向上した状態でギア比を上げると火事場の馬鹿力ぐらい身体能力が格段にアップする。

 扱いは難しいが上位を目指しているヴァニシングライダー上級者の必須技能と断言していいだろう。

 

『頑張れ、ヴァージニアさん。いい感じ、あと一息だよ!』

「分かっているっだっちゃ!」


 敵を盾にしながら進む姿は、さながら海藻を隠れ蓑に使っている熱帯魚。


「お伽噺のマーメイドはこんな気分なんだろうかだっちゃ?」

『ジュゴンじゃ……』

「あ”?」

『ごめんなさい』


 などとハルトは軽口を叩きながらも、ソンゲンの執拗な攻撃を軽やかに躱し続け、コンスタントに敵の密集地へと誘導。

 その無駄の無い軌道修正は、あたかも未来予想または緻密な作戦が成せる動きであった。


「それにしても、お前は馬鹿なのか? 天才なのか?」

『藪から棒に何を失礼な事を言うのかな?』

「こんなこと土壇場で思い付くなんて普通じゃないっちゃよ!」


 これはヴァージニアの背の低さを利用したハルトが考えた作戦だ。

 沸点の低いソンゲンを煽って敵の数を減らしていく。


 あるレトロアクションゲームのノーダメージ縛りプレイで考案した、ハルト流サバイバル戦術だ。

 実際は小技を使って、敵に接触したら反射する特性を使ってピンボールのように移動する。


 プレーヤーが無尽蔵に存在するヴァニシングライダーにも条件が合えば好んで使う。

 いうなればハルトの十八番だ。

 ただ、ゲームのように反射機能はないので、再び数多プレイしたレトロゲームの知識を再利用。

 手の力だけで移動するアクションゲームがあったので、それを実践で取り入れる。

 だが、それを可能にしたのは強化したヴァージニアがいるからだとハルトは本音で主張した。

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