奇想天外の作戦(魔族サイド)
「まだ、見つからんのであるか?」
「はっ、まだ、連絡はありません」
虎をも畏縮される鋭い睨みに、側近の同族にも緊張が張り詰める。
ソンゲンは少々焦っていた。
もちろんヴァージニアの存在ではない。もっと恐ろしいものが迫っている。
魔族は結果が全て。
結果さえ出すことが出来ればどんな事でも許される。
だが、その逆に出来なければどんな名族または幹部、重職でも、死神から平等に死を賜る。
それが、古代より続いている暗黙の習わし。
赤色の肌から冷や汗が流れ落ちた。
腹いせに側にあった大木をベアハッグでへし折る。
その上に勢い良く腰掛けた。
「捜索隊の数を増やせである。バクリュウキョウが介入する前に何としてでも始末をつけるのだ。今、奴と事を構えるには準備不足。我輩がこの隊を物にするためには何としてでも手柄が必要である」
「はっ、心得ています。誇り高きオーガ族がトカゲ風情の風下にいるのは納得いきません」
オーガ族としてのプライドがこのような暴走行為に及んだ事に、ソンゲンは何の反省もなかった。
それどころか、実力主義の国の方針に異を唱える言動が常日頃から悪目立ちしてしていた。
「――なな、なにをしていル!?」
「ぎぁゃあぁぁぁぁぁぁぁぁア!」
「な、なんダ!」
何の前触れも無しに一部から起こった絶叫。
「来たであるか!?」
「何も見えませんガ?」
だが、密集していたので幾ら拓けた場所でも森林に百人では手狭。
目視出来なかった。
一匹一匹倒れていく。
ソンゲンは巨躯に似合わない洞察力を駆使して探すが、いくら身体能力が高い鬼でも、この密集した兵の中から異物を見つけることは用意ではなかった。
「わざわざ戻ってきたのは殊勝な心懸けだが、往生際が悪いのである」
「まさか、まだ、起死回生が可能と信じているのでは?」
「たった猿一匹に何が出来るのである?」
少しずつ兵が減っていく中、ついにソンゲンは姿を捉えた。
しかし、敵の意表をついた前代未聞の戦法に驚愕する。
「何だと!?」
「ソンゲン様、これでは手が出せません!」
「ゴミの分際で小癪な事を!」
折ることに飽き足らず、怒りに震えた赤い拳が丸太を見事に粉砕する。
ヴァージニアは器用にもゴブリン兵の足を利用し、かいな力だけで低空飛行を実演していたのだった。
そう、パチンコの原理を利用して、ヴァージニアが玉、モンスターを釘に見立てて移動していた。
仲間を盾に使われているので、これではソンゲンも容易に手出し出来ない。
まさに小兵を利用した奇抜ながら理に適った兵法だ。
これは攻撃であって防御、防御であって攻撃。
兵士が沢山いたからこそ可能となった奇想天外な攻撃方法であった。




