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マリオネット狂想曲

 

 満身創痍だが着実に近付く死に対して一歩も引かない、怖じ気づかない。

 戦友達の弔いか、郷土愛からか、それとも騎士としての誇りなのだろうか、それは本人にも分からなかった。

 走馬灯を回しながら最後に決める事だと師匠の教えに従い、今は黙って剣を握る。


 突進突きから斬り上げて、大きく振りかぶり縦斬り。

 横へなぎ払い、ジャイアントスイング気味な下段回し斬り。

 だが、大きな振りが災いしことごとく防がれる。


 一歩踏み込む瞬間、矢が目の前を通過する。

 あと半歩早かったら頭を確実に射抜かれていたであろう。

 一匹のゴブリンに攻撃しても、もう一匹の盾を装備しているゴブリンに防がれる。

 この伍は汎用性を捨てそれぞれ役目があった。

 直接攻撃担当と防御担当と遠距離担当。

 一人対多数という伍のコンビネーションが上手く機能していて、幾ら雑魚でも容易には倒せない。

 それでなくても、自分の才能の無さと技術の無さを根性と先祖代々に伝わる名剣で補っていたが、それにも限界がある。


「キケケ、無駄な抵抗は止めロ」

「キキ、俺達には勝てなイ」


 ヴァージニアはもう疲労困憊、限界を超え肩で息をしていた。

 頬から流れ落ちた汗は、さながら朝露の滴のように葉の上を滑り落ちる。

 乱れた呼吸を整えると共に、最後の小玉になった飴を奥歯で噛み砕き磨り潰した。


『死ネ!』 

「まだだ!」


 相次ぐピンチに思考が狭まっていた。

 そのせいで警戒せず、罠とは気付かないで声に導かれ後方に意識が向く。

 だがその時、弓の弦を弾く音と同時に、


『隊長さん危ないっ!』

「え?」


 ヴァージニアの体が勝手にジャーマンスープレクス気味にブリッジ、「いたっあぁぁ!」勢い余って頭を地面に打ち付けながらも、不意に前方から射られた矢はスレスレに通過。

 リンボーダンスマスターにも通ずる平面体が上手く機能し辛うじて回避した。


 おまけに、


「ぐわぁぁァ!」

「なんだト!?」


 その流れ矢は偶然にも後方のゴブリンに命中。

 マニュアル通り剣を振りかぶっていたから、回避が間に合わなかった。

 洗練された伍のコンビネーションが結果的に裏目に出てしまったのだ。


『動いた……』

「お前が何かやったのか――、おほっ!?」


 ヴァージニアが言葉を全て紡ぎだす前に自由が奪われ助走からの、「目が回りゅぅぅ!」トリプルアクセル、「どす恋!」四股踏み、「シュシュ」シャドーホクシング、「モキュゥゥ」バクテン……、は失敗、また頭を打ち付ける。


『うん、殆ど同じだ。操作性の誤差はないよ』

「何が同じだっちゃ!」 


 頭を擦りながら、脳内の声にツッコミをいれるヴァージニア。


「もしかしてお前はゴーストの類いなのか?」


 当然ながら困惑する。

 一時的とはいえ、いきなり体の自由を奪われたのだ。

 取り憑かれたと考えるのは仕方ない。

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