弱くても戦士
2
「理由はともかく、お前は安全な所に隠れたと認識して良いのか?」
『僕は身の危険は無いと思う』
「はぁぁぁ……、分かったちゃよ」
少女騎士は容量オーバーで煙を吐くみたいに甘い嘆息をつく。
いつの間にか忽然と姿を消したハルト。
それと同時に脳内から語りかけてくる陽気で不快なボイスが、ヴァージニアを混乱させていた。
もちろん本人は馬に念仏と表現して良い程に理解していない。
が、それだと話が進まないので現在の事実を妥協し、取り敢えず危機は回避したと考える。
要は分かっていないのだが、分かった事にするといった所だ。
『君も何処かに隠れ――』
「これで心置き無く戦えるだっちゃ」
ハルトの善意が騎士の覚悟により遮られる。
最悪の展開に色々と脳内で騒いでいるが彼女はもう聞く耳を持たない。
風が吹いていないのに木々や草花がざわめき、異変に周囲の動物達も人身事故で電車の運行見合わせみたいに騒ぎ出した。
ヴァージニアは木の根本に刺さった大型の剣を、オーバーアクション気味に目一杯引っこ抜く。
だが、エクスカリバーというよりは、童話のおおきなカブを引き抜くみたいに海老反りと説明した方が的確だ。
「キキ、見つけたゼ」
「首を取れば恩賞にありつけル」
ゴブリン。
魔族の最下級モンスターの一種。
緑がかった浅黒い肌。
オニオオハシのくちばしみたいな長い鼻。
人生諦めた廃ニートを連想出来る淀んだ黒い瞳。
悪霊または悪い妖精とも言われているモンスターの代表格だ。
何処のファンタジーにも一回は顔を出す売れっ子悪役と言っても過言ではない。
狡猾で単体を好まず、常に徒党を組んでいる。
この世界では魔界の最下級種族として存在。
知性がある魔物の中で数が一番多い事から、常に雑兵として兵に組み込まれていた。
数は五匹。
それぞれ用途の違う武装をしていた。
魔王軍の基本隊列は伍。
伍長を頭とした五人一組の分隊で構成されている。
これなら乱戦になった時、一人一人が弱くても息が合えば格上の相手にも引けを取らない。
「ただで死んでやるもんか! 足掻いても、もがいてもお前ら道連れに前のめりに地獄に堕ちてやるだっちゃあぁぁ!」
再び柄を握り絞め、体格には合わないながらも引きずり下段で構えた。




