ユニゾン
「くそぉ! 開けえぇぇぇ!」
直ぐ様、開閉ボタンを何度も押す。
でも、反応しない。
再び狭い密閉空間に閉じ込められた。
「開いてくれお願いだ、このままじゃ、隊長さんが殺されてしまうよ!」
硬いモニターの一部でもあるハッチを叩く。
だが、幾ら訴えても無機物が反応する事は有り得ない。
それでも、諦めていないハルトは、打開する手掛かりを探す為に見渡す。
ギア、ハンドル、ペダル、二双のレバー、周囲を映し出しているビュジュアル。
モニターが今いた現風景と変わらないものを投影していた。
360度大パノラマを体感。
違う点を挙げるのなら、そこにヴァージニアがいないことである。
「隊長さん、何処にいるの!?」
『な、何なんだちゃこれ? 頭から変態の声が聴こえる』
「よ、よかった!」
ハルトは反応する自暴自棄気味なお嬢様に胸を撫で下ろすも、声は聴こえるが姿を確認出来ない現状に、まるでホラーにある殺害シーンの前振り状態みたいで不安が募る。
今、恐怖を煽るようなBGMが流れてきたらお漏らし決定だろうか。
あながち冗談ではなく、この短い間に再び外へ開放される方法が解き明かさなければ、本当に傍観者としてバッドエンドを視聴しなければならない。
よって一秒だって気が抜けなかった。
もう、何でもいい、この窮地を脱出する方法は何かないのかと、焦る気持ちを押さえながら記憶をなぞる。
何故当初あのアングルだったのか、何故ヴァージニアの目の前にハルトは落ちたのか、この答えが分からないと先に進めないからだ。
で、偏ったゲーム脳で導きだしたある結論へ繋がる。
僕は誰かのアングルでこの世界を覗いていたのではないかと。
ヴァージニアにも一通り説明するが、専門用語が多過ぎて理解不能の連続、いつ頭が沸騰してもおかしくはないぐらい戸惑っている。
例えるならばサムライにパソコン、原始人に株式、モーツアルトにボカロを説明するが如くだ。
ここで気を保つ為、ナイフを器用に操りベルトの皮に新しい穴を明け締め直す。
それに併せて悩める思春期アイズが観察している中、モニターの視点がヴァージニアの下半身を覗きこむ様に移動。
「ナイフ、ベルト、ズボン、ぱんつ、おぱんつ……、ああっ!?」
無意識に連想チャンネルの周波数が合い、急に頭へ浮かんだワンシーン。
直ぐ様永久保存していた脳内VTRを再生。
パンツの事で容量一杯な為気付かなかったが、ここで初めてカメラとヴァージニアの視点が連動している事実に辿り着く。
『変態、何処に行ったっちゃ!? 声はすれど姿が見えない……』
画面の視点が左右に動く。
「僕にも良く分からないよ。簡単に説明すると隊長さんと同化した……、と表現した方がいいのかな。それとも中にいる?」
半信半疑気味に少ない脳細胞で自問自答。
『は?』
「原理は分からないけど、今、隊長さんと同じ景色を僕は見ているんだよ」
『うわぁぁ! 訳がわからないだっちゃぁぁ』
スピーカー越しに鼓膜突き抜ける大音量高音ボイス&画面が揺れる、揺れる。
頭をワシャワシャと掻きむしっているのだ。
秋雨の置き土産で形成された水鏡に映し出される見事なハリネズミっぷりに哀愁を感じた。




