「0センチ達成です!」
「今、貴女が鎮静薬を打ってから、5時間くらい経っていますね?
このタイミングで、僕がどこまで貴女に近づいて、
【恐怖】をコントロールできるか調べましょう。」
「いや、待って、そんな危ないことは…」
「十二支と僕は…」
シリウスは、輝くアクアマリンの瞳で、私を凝視した。
「――この計画のために、
貴女の人生の貴重な時間を使っています。
その貴女に報いるには、
僕が、この計画を受け身で過ごしては駄目なんです」
私は巻き尺に目を落とした。
そんなことを考えるシリウスが切なくて、
うっかり涙が出そうだったのだ。
「駄目じゃない」と叫びたい想いを、喉の奥に飲み込んだ。
「さあ、見てください。
今、リヒトさんと僕の距離は3メートル。
具合はどうですか?」
「特に…異常はないと思う…」
「では、2メートルに縮めましょう。」
シリウスは近づいた。
「どう……ですか?」
「ちょっと……ゾワゾワする……
シ、シリウスは?」
「僕も…ゾクゾクします。
――では1メートル。」
シリウスはさらに近づいた。
顔が青ざめている。
「ど……どう……ですか?」
「ゾ、ゾワゾワする……ものすごく……
もう……もうやめよう、シリウス!」
「やめません。
――50センチ。」
シリウスはさらに近づいた。
巻き尺を持つ手が明らかに震え、既に顔は土気色だ。
私は、熱いうなじを必死に押さえつけた。
「リヒトさん……どんな……感じ……?」
「どんな感じも何も……あるか!!
襲うぞ!!!」
しかし、シリウスはさらに近づいた。
私の顔からブワッと汗が吹き出し、ぐらぐらと目眩がする。
「30…センチ!」
「もう……駄目!!!」
そのとき、シリウスはフワッと一歩近づき、
私の手を優しくとった。
「0センチ」
シリウスは、優雅な仕草で、
私の手を彼の額の刻印にそっと当てた。
しかし、次の瞬間、お互い跳ねのいて距離をとった。
「シリウス!!!なんて…なんて危ないことを!!!」
と声を荒らげる私に、
シリウスは顔中を笑顔にして、両手をパッと広げた。
「0センチ達成です!リヒトさん!!!」
それは幼い子供が宝探しで宝を見つけたような、
あまりにも無邪気な笑顔だった。
――初めて目にするシリウスの笑顔に、
私はしばらく言葉を失った。
令嬢、冒険、現代など色々と執筆しています。
こちらは完結済みBL↓↓
『【BL】終局の悪魔―俺を利用するはずの白髪高官が、なぜか俺の目を美しいと言ってくる―』ドルチェ×フィーネ(左右固定)、冒頭から糖分高め。
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スバル(穏やか部長)×メイセイ(美人後輩)左右固定。
この作品『神鼠の大王は猫を愛せない』は短めでポンポン更新していきます。完結まで執筆済みですので、ぜひブクマしてお待ちください。
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