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26話 シンジュクを狙う者、守る者

 東京軍が「便利屋コロシ部」が新宿区域を管轄することを認めてから一週間。


 そんなある日、非合法のチーム「カラーズ」の幹部三人が拠点の一つで偶然鉢合わせた。


 基本的に彼らの動きに連携はない。


 各々の目的のために、リーダーである紅蓮に認められる範囲で行動する。


 それ故に幹部が出くわすのは珍しいことだった。


 グリージョ……灰色の名を冠した少女が朽ち果てた団地の一室を訪れたのは、ひと暴れして休む場所が欲しかったからだ。


 彼女が名に違わず腰まである灰色の髪を揺らして部屋に入ると、中には難しい顔で端末を見つめるカラレスの姿があった。


 カラレスは「アドバンス」で構成される非合法チーム「カラーズ」に所属する唯一の男性だ。


 基本的に「カラーズ」所属の戦闘員や幹部には色を冠した名前が与えられる。


 先日戦死したシロやクロのように。


 能力を持たないがため、彼は「無色」を冠していた。


 そして戦えない代わりに、カラレスは作戦立案を主に行う。


 一度外した眼鏡のレンズをしつこく布で拭うあたりに彼の神経質さが表れ出ていた。


 彼が元は東京軍の参謀だったとか、逆にヤマト陸軍の士官だったとか、適当な噂が飛び交っていることをグリージョは知っていた。


 そして和室で目を閉じ、瞑想しているのはリーダーの紅蓮。


 グリージョは紅蓮が苦手だった。また、得意としている者もいないだろうと思っている。


(陰気な軍師サマだけならまだしもねえ……)


「グリージョか」


 目を閉じたままの紅蓮から突然呼びかけられ、思考でも読まれたかとグリージョは飛び上がりそうになる。


「なんですかー? 休みにきたんすけど、場所空けてくれます?」


「柊美月の『解放区シンジュク』をどう見る」


 紅蓮はグリージョの問いかけを無視し、逆に聞いた。


「どうって……維持できないでしょうよ。四人でしょ? あのチーム」


「だが東京軍には柊陽向がいる。何らかの援助があるだろう」


「コネだけで自治区運営なんてできますかねえ」


 グリージョは「解放区シンジュク」に懐疑的だった。


 実力のあるチームの自治区運営がままならず、潰れてきた事実をいくつも知っているからだ。


 だが確かに東京軍大佐である柊陽向の介入があるのなら、話が違ってくるとも思った。


「カラレスは? どう思う感じすか?」


 端末を机に置いたカラレスは、小さな声で自身の見解を語った。


「新宿を巡って近々戦争が起こると思うな」


「戦争って? どことどこが?」


 想定外の答えにグリージョは思わず前のめりになってさらに質問をする。


「ヤマトと東京軍だね」


「私もそう考える。柊陽向が柊美月……ルナと名乗っているが、あれに固執していることはヤマト側も知っているはずだ」


 紅蓮が口を開いて、カラレスに同調した。


「じゃあヤマトが新宿を襲って、美月を守りに来た陽向をどうこうするって話すか。いやいや、どうこうできますかねえ」


「どんな秘策があるかは知らんが。柊陽向に手を出すということであれば、我らも参戦せなければなるまい」


 傍らに置いた刀を手にして紅蓮が立ち上がった。


「グリージョ、新宿に行けるか」


「いいすけど、まずは寝かしてください」


 非合法チーム「カラーズ」。


 彼女らは歴史的破壊者である柊陽向を信奉する集団だった。


 *


 同日、ルナは新宿周辺のチーム代表者との面接を行っていた。


 四人で構成される「便利屋コロシ部」はかつての「極殺小隊」のように下部組織を持たない。


 だからこそ「解放区シンジュク」を、そこの住民を守るためには協力関係にあるチームの確保が急務だった。


 相手が信用に足るか、慎重に考える必要があった。そのため面接は丸一日かけて行われた。


「どうだったよ。ルナ?」


 現在「コロシ部」が拠点にしている旧時代の不動産屋で、待っていたアカネが戻ってきたルナと凛子に声をかけた。


 渚は既に奥で寝ている。


 彼女らが不動産屋に居座っているのは、地域の住民が訪れやすくカウンター状の机で話を受けやすいからだ。


「あんまり。ほとんどはクレジット欲しさだね。でも実力もわからない用心棒なんて雇えないから」


「でも、ほら……『極殺』の……」


 副部長として面接に参加していた凛子が印象に残ったチームについて語り出した。


「私たちがザクロを倒してすぐに『極殺』を見限った残党……あの子たちはどうかな?」


 他人から常にどう見られているかを気にしていて生きてきた凛子は、逆に相手を多角的な視点から評価する観察眼があった。


「でもそれってなんかあったらすぐ裏切るってことじゃんか。そんな奴らを信用できんのかあ?」


「逆だよアカネちゃん。そういう人こそ私たちが勝っている間は裏切らない。……アカネちゃん。最初に言った言葉、覚えてる?」


「お前が負けないってことだろ? 覚えてるっつーの!」


 有力候補は元「極殺小隊」のカリンという少女。


 彼女はザクロ敗走時に下部組織を引き抜き、独立した小勢力として旧「極殺」領付近を根城にしていた。


 ルナとしてもその手腕と判断力を持ったカリンを味方に付けたかった。


 条件として彼女は「コロシ部」の下請けとしてシンジュクの仕事を一手に引き受けることを要求している。


 確かにその条件であれば、ルナたち「コロシ部」はシンジュク運営に力を入れることができる。


 だが、その欲の無さが逆にルナを不安にさせる。明確に領土の分割を求めるチームもあったくらいだ。


 もうザクロはいないが、かつて敵対していた「便利屋コロシ部」と「極殺小隊」……その二つが手を結び「解放区シンジュク」の要となっていく。


 この事実に対して、ルナはどこか出来すぎているという直感を否定できなかった。


 だがカリンを採らないことはシンジュク周辺に武装勢力という火種を抱え込むことになる。

 

 そしてルナは「解放区シンジュク」のリーダーとして、住民を守るために、カリンと手を組むことを決めた。


(手綱は私が握る……悪いけどそっちが私たちを利用するつもりなら、私も利用させてもらう……徹底的にね)

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