尊ばれました。
( ゜ー゜)テケテケ(更新でございます)
――え?
リィフは目を瞬かせる。
大竜王ドーロはほとんど加速せずに移動した。
風も感じなかった。
<短距離瞬間移動じゃ。見える範囲であれば一瞬で移動できる>
「大竜王の名は、伊達ではございません」
ぶぉんと鼻息を吐いた大竜王ドーロは、捕らわれたコボルト達の檻の側に陣取ると、黒い人影たちを見渡し、咆哮した。
「跪け木っ端共! 尊き御方の御前であるぞ!」
うるさいとかそういう次元を通り越した、なにかの爆発を思わせる大音声。
大喝だけで暴風、さらには衝撃波が生じ、黒い人影、都市跡そのものを粉砕し、消し飛ばしていく。
テケー!
テケテケも巻き添えを喰い吹っ飛んでいったが、幸い大きなダメージを受けることはなかったようだ。
テケ! テケテケ!
怒った様子で偽一文字を鞘ごとぶんぶん振ると、テケテケと駆け戻って来る。
とらわれのコボルト達は角度的に被害を免れたが、震え上がり、「ひ、ひええっ!」「お許しを!」と言いながら跪き始めた。
大音声の一撃を逃れた人影たちがドーロの巨影を見上げる。
戦いが成立するような相手ではないことはわかるようだ。
ひざまずきはしなかったものの、戦慄したように動きを止めていた。
リィフはあらためて、人影たちを見下ろす。
――なんなのかな、これ。
なんだかよくわからないまま斬り捨てて、吹き飛ばしてしまっている状態だ。
<式神じゃな、木剣に下等霊をつけて使役しておる。使役者はここにはおらんな。式神共を通じて見てはいるはずじゃが>
バッカニアたち、八天竜王も降りてきて、広場を取り囲んでいく。
「いかがいたしましょう。御方様」
「降ろしていただけますか?」
まずはコボルト達を保護することにした。
「はっ」
頭を降ろしてくれたドーロから地面に降り、『転生賢者紋』からスライム達を解放する。
「あのひとたちを助けて。石が崩れないよう気をつけて」
テケー!
テケテケー。
スライム達が穴に集まり、救出に取りかかる。
キュイィン。
ガンガン!
二号のドリルはまぁいいとして、邪魔な石柱をヴァルナに授かった神器トリシューラでたたいたり、テコやつるはし代わりにしたりしているのが目に入る。
この場は見なかったことにした。
「ハウザーさんとセルトはここをお願いします。皆さんを落ち着かせてあげてください」
そう言い置いて、リィフは黒い人影、式神たちの前に歩み出た。
テケ!
用心棒のつもりらしい。
戻ってきて、偽一文字の鞘でドーロの足をひっぱたいたテケテケがついてきた。
後方に残されたドーロが混乱したように目を瞬かせていた。
式神たちではなく、式神を使役しているであろう術者に向けて、呼びかけてみる。
「初めまして、聞こえていますか?」
ハウザーたちの言葉によると、しゃべったという話だったが、応答はなかった。
<この状況ではしゃべらんじゃろ。声を知られるだけ損じゃ>
「話し合いは無理?」
<話し合いが通じると思う方がおかしい。命を取りに来た相手じゃぞ>
ルルスファルドはジト目で言った。
テケー。
ルルスファルドに同調するようにテケテケも鳴いた。
味方はいないようだった。
式神たちが動く。
黒い人のような姿から、犬や狼、大ネズミや猪と言った獣へと姿を変えて、リィフ目掛けて襲いかかってくる。
ルルスファルドによると、式神は、下等霊を使った使い魔の一種。
おそらく、動物霊の類を使っているのだろう。
その獣性を暴走させ、ふらふら近づいて来たリィフにけしかけた。
テケ!
「斬らなくていいよ」
偽一文字を構えて飛び出そうとしたテケテケに、リィフは静かに声をかけた。
「大丈夫」
傷つけなけれならない相手ではないだろう。
印を組み、呪を唱える。
namaḥ samanta-buddhānāṃ yamāya svāhā
(ナマハ サマンタブッダーナーン ヤマーヤ スヴァーハー)
焔摩天呪。
冥界の神ヤマへと、死者への慈悲を願う呪。
動物たちの魂魄を縛り付け、支配している黒い木剣が白い焔に包まれて、瞬く間に灰へと変わる。
おかしな力に支配されていた霊たちが光る粒子に変わって、風に巻かれて消えていった。
「おお! おお!」
「なんと慈愛に満ちた!」
「尊し!」
「いと尊し!」
後ろで大竜王と八天竜王が変な反応をしていた。
テケテケ!
テケテケテケ!
スライム達にも伝染しはじめたようだ。
( ゜ー゜)テケテケ(お読み頂き有り難うございました)
次回更新は夜7時を予定しております。
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