聖竜デンツァ(1)
( ゜ー゜)テケテケ(更新でございます)
デンツァはムーア王国の聖竜の一匹だった。
強靱な肉体と強大な魔力を兼ね備えた竜王族は傲慢にして怠惰、自ら狩りをすることを好まず、聖竜を名乗り、他種族の支配階級の守護者として君臨し、貢ぎ物や生け贄を取ることで存続してきた。
支配種、もしくは戦闘種を自認する彼らは、一時は数十もの国々を版図とし、繁栄をした。
だが、その傲慢さ、貪欲さ、残忍さから憎まれ、裏切られて衰退、今日では西海域、それとグラード王国のあるアグスラート大陸の西沿岸部に、わずかな勢力圏を残す程度にまで落ちぶれていた。
そのわずかな勢力圏のひとつが、ムーア王国だった。
竜王族などと言っても、多くある竜種の中の一血族に過ぎない。
狭い勢力圏を出ることなく、まともに狩りをすることもなく、差し出される贄をむさぼって生きてきたデンツァは、一言で言えば肥え太った駄竜であった。
それでも、竜王族の版図を出ない限りはそれで良かった。仲間の聖竜とともに、異臭を放つ醜い亀竜の四肢を千切ったりした経験もあって、自分を『強竜』とさえ認識していた。
だがそんな日々は、あっけなく終わった。
捧げられる贄を喰らうだけの日々に倦んだ仲間の一匹がふらりと旅に出たと思ったら、おぞましい生き物に取り憑かれて戻ってきた。
スキュラ。
生物のはらわたを食い尽くし、残った骸に卵を産んで寄生する邪悪な魔物達。
海人達を虐殺したスキュラたちは、そして聖竜たちに牙を剥いた。
スキュラに寄生された竜とは、つまるところ竜の骸に過ぎない。通常ならば、まともな竜には及ばない。
ただし、それはまともで勇敢な竜の場合だ。
命がけの戦いの経験はおろか、狩りの経験さえもろくにない聖竜たちは、スキュラに取り憑かれた仲間のおぞましさ、そして醜悪さにすくみ上がって次々に餌食となり、あるいは逃げ出していった。
デンツァは後者である。
仲間である聖竜たち、守護者であるはずのムーア王国を打ち棄てて逃げ出し、竜王族の指導者、大竜王ドーロの住まう山へと逃げ帰った。
大竜王ドーロは、そこまで優秀な竜ではなかったが、契約国であるムーア王国を捨てて逃げ出したデンツァたちの怯懦の拙さに気付く程度の智能はあった。
面汚しとしてデンツァたちを処刑してしまえば、それなりの格好はついたのだが、生憎デンツァたちムーアの聖竜は竜王族の有力者の血を引くボンボン揃いであった。
迂闊な処分はできない。そう判断した大竜王ドーロはデンツァたちを処分する代わりに、デンツァらに自らの率いるスキュラ討伐軍への参加を命じた。
デンツァたちは恐怖、狂乱したが、大竜王が自ら率いる討伐軍となれば、さすがに逃げも隠れもかなわない。
泣く泣くムーアへと向かうことになったのだが。
奇跡が起こった。
リィフに呼びだされていた水神ヴァルナが黄金の釣り糸を投げ、西海のスキュラのほとんどを消し去ったのである。
ムーア島近辺にわずかに残存するスキュラが確認されたものの、もはや脅威になるような数ではない。
大竜王ドーロ、ドーロの率いる百の竜の力を持ってすれば、どうとでも片付けられる。
デンツァは安堵しつつ、他の竜たちとともムーアの市街を焼き払いにかかった。
ここを焦土にしてしまえば、スキュラの脅威も絶える。
同時に貴重な餌場を喪ったことになるが、スキュラを滅ぼしたということにすればそれなりに箔がつく。
またどこかに、新たな契約者を得られるかも知れない。
妙な一団が飛来したのは、そのときである。
猫とイカの頭をつなぎ合わせたような輪郭の、半透明の巨大生物に、宵闇色の翼を持った獣竜種。
陸人と海人らしき影。
スキュラではないようだが、味方でもない。
様子を見てこい、と命じられたデンツァは、十匹の仲間と共に動き出した。
( ゜ー゜)テケテケ(お読み頂き有り難うございました)
次回更新は明日朝の予定です。
「面白かった」「もう少し読んでもいい」と感じて頂けましたら
『ブックマーク』のところや、その下の☆☆☆☆☆の評価部分をテケテケと叩いて頂けると執筆者の情熱の焔がより高く燃え上がるかと存じます。




