たくさん釣れました。
( ゜ー゜)テケテケ(更新でございます)
ヴァルナの手の中に一本の銛が生じた。
手の中でそれをくるりと回した童女姿の女神は、虚空を蹴るようにして、ぽんと天高く跳ね上がる。
そこから大きく、後方に銛を振りかぶる。
魚を突くような動作でなく、鍬や釣り竿を繰り出すときに似た構えだ。
ヴァルナが銛をぶんとふるうと、そこから無数の金糸が伸びた。
次々と分岐しながら、南洋の全域に、光の雨のように降り注いだそれは、先端に金色の釣り針のようなものを生じて、波紋を立てて沈んでいった。
テケー?
「魚釣り?」
規模は大変なことになっているようだが。
南海全体に降り注いだ金色の糸は、リィフたちの側にも大量に降り注いでいる。
何匹かのトロピカルブルースライムが、テケ? テケー? と糸に触れていた。
「悪戯しちゃダメ」
テケ。
リィフにたしなめられたスライムたちが戻ると、あちこちの糸が急激に動き出す。
針にかかった魚たちが暴れ回るように。
「……魚じゃ、ないよね」
ここまでのことをやって、ただの魚釣りということないだろう
<うむ>
背中にくっついたままのルルスファルドがうなずく。
距離が近いのは、どうもアプサラスにくっつかれたことに刺激を受けたせいらしい。
意外、でもないが、独占欲が強いようだ。
<スキュラどもじゃな>
「スキュラを釣ってる?」
何万、いや何億という数に分岐させた糸に針をつけ、まとめて釣り上げようとしているのだろうか。
<一本釣り、いや、千万本釣りくらいかの>
「せんまんぼんづり」
スケール感がおかしい。
それ以前に、千万匹もスキュラがいたのか、という話もある。
ヴァルナの銛が、釣り竿のように大きくしなる。
「さて、大漁だな」
にやりとしたヴァルナは、ぐっと銛を引き上げる。
無数のスキュラたちが、海中より引き上げられた。
海人族に取りついたもの、魚やカニなどに取りついたもの、海獣や海竜などに取りついたものなど、種類は様々。数はとても数えきれない。
ルルスファルドの言ったとおり、千万に届くかも知れない。
神々しいというべきなのか、悪夢めいているというべきなのか、よくわからない光景だった。
黄金の針にかかった時点で、既に浄化が始まっているようだ。
空中に引き上げられたスキュラたちは、次々と光の塊のような姿に変じてゆく。
「罪なき者ども、罪深き者ども。等しく我が神威を以て、呪われし宿命より汝らを解放する。輪廻の輪に還り、各々の魂魄に相応しき来世へと渡れ、散!」
光の塊が一斉に砕け、金の花吹雪のように舞い散った。
スキュラの姿も、スキュラに取りつかれていた生物たちの骸の姿も、すべて、綺麗に消え去った。
例のアプサラスの因子も、今回は残らなかった。
高度を落として戻ってきたヴァルナはまた腕組みして胸を張った。
「まぁこんなものだ。偉大だろう。祀ってもかまわんぞ」
<乗るではないぞ。下手にこやつを祀ると他の連中がうるさい>
ルルスファルドがささやいた。
――他の連中?
<他の十二天じゃ、叔父御殿は優良物件じゃからな。このまま放ってはおかれまい。当面は適当に距離を置き、適当に利用する程度でちょうど良かろう>
「聞こえているぞ。余計なことを吹き込むな」
ヴァルナはまたうなり声をあげたあと、改めてリィフの姿を見下ろし、にっと笑った。
「ここまでの働き大義であったぞ。褒美を取らせよう。望みがあれば、申すが良い」
「……それでは、西海を、お救いいただけませんか」
まずはそこだろう。
南海は浄化されたが、西海はまだ手つかずのはずだ。
「それは妾の責務じゃ、褒美ではない」
ダメらしい。
そうすると、思いつくのはあと一つくらいしかなかった。
( ゜ー゜)テケテケ(お読み頂き有り難うございました)
次回更新は夜の予定です。
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