南海に行きました。
( ゜ー゜)テケテケ(更新でございます)
それから三日で、アーシュは四〇ポンの銀を用意してくれた。
形は問わないので、とにかく量と純度を、ということで、インゴット状のものから銀食器、装身具から取り外したものなど、種類は多岐にわたっている。
ルルスファルドの島に備蓄されていた資材としての銀、島に流れ着いた宝箱などから確保した銀が合わせて一〇ポン程度あったので、おおよそ約五十匹分の銀が確保できたことになる。
シルバーバレットスライムの利点は浄化能力だ。
スキュラたちをただ殺すのではなく、浄化して消し去り、アプサラスの因子を取り出すことができる。
だが身体が重くなってしまうのでトロピカルブルースライムのような海上での高速移動や、イカダ化などはできなくなる。
メリットばかりではないので、七二匹はトロピカルブルースライムのまま、三六匹にシルバーバレットスライムとして動いてもらうことにした。
これで、最初の準備は整った。
三六匹のシルバーバレットスライムを紋章に収容したリィフはアプサラスの背中に乗せてもらい、テケテケと七二匹のトロピカルブルースライムを伴って南海のニュンペー王国の廃墟へと向かった。
アプサラスの本体が捕らわれているニュンペーの王都は既に海中深くに没しており、スキュラの巣窟と成り果てていた。
アプサラスとスライム達の気配に気付き、数千匹からの大群が押し寄せてきたが、もはや対応法のわかった相手だ。
水天呪で海を割り、風天呪で浄化をして消し去った。
<水ごと浄化することはできないのでしょうか>
浄化されたスキュラから解放された因子を取り込んで、更に巨大化したアプサラスは言った。
「水ごとだと、浄化のできる範囲が狭いみたいで」
密度と重さがあるせいか、風天呪に比べると効き目がだいぶ弱くなるようだ。
水天呪で海を割り、水底に沈んでいたニュンペー王国の廃墟へと近づく。
<……あたりまえのように海を割ってしまわれますね>
アプサラスは困ったように言った。
割っているリィフ自身もわりとなんだかな、感じているところであるが、割れてしまうものは仕方がない。
曖昧に微笑むことくらいしかできなかった。
廃墟の内側には、まだ大分水が残り、浄化しきれなかったスキュラたちが潜み、這いずっている。
シルバーバレットスライムたちを紋章から出し、調査を兼ねて先行してもらう。
前方から、スキュラの触手を背負った巨大な蟹たちが這い出してくる。
人間などに寄生するスキュラとは逆に、甲殻類の背中に乗る形で寄生しているようだ。
他のスキュラより、陸上での動きが速い。
しかし、
テケ!
シルバーバレットスライムの一匹が撃ち出した、光の螺旋槍にあっさりと撃ち抜かれて浄化、無力化されていった。
「あれは、二号?」
バッカニアとアルシードを見つけ、助けた個体だ。
<そのようじゃな>
「他と、ちょっと違う?」
光の槍までは他のスライムも使うが、あの螺旋槍は二号独自の必殺技のように見える。
<テケテケを除けば、一番才があるようじゃな。先が楽しみじゃ>
今でも充分常識外だと思えるが、まだ伸びしろがあるらしい。
他のシルバースライムたちも、着実にスキュラ達を無力化し、浄化していく。
残った骸はトロピカルブルースライムたちにマークをつけてもらい、『転生賢者紋』へと収容した。
『転生賢者紋』を遺体安置所のように使うのはどうかと思うが、ほかにいいアイディアもなかった。
そうして、ニュンペー王都郊外の丘に足を踏み入れた。
今は水が引いて丘になっているが、元来は孤島だったらしい。そこに建っていた塔の地下部分に、円柱型をした大きな石棺のようなものがある。
王都ごと水没していたためか、塔は土台から崩れ、倒壊している。そこからわずかに顔を出した石棺は、鎖などが巻き付けられて、厳重に封印されていた。
<これかや?>
ルルスファルドの問いかけに、アプサラスは<はい>と応じた。
<大分痛んできておるな。これならば、鎖を切るだけで充分じゃろう。叔父御殿>
「わかった」
ルルスファルドの言葉に応じて、リィフは天逆鉾を出す。穂に魔力を通して、石棺の鎖を断ち切った。
石棺が青く光り、砕けて消える。
その中に収まっていたのは、大きな人魂を思わせる、青く輝く光の球体だった。
魔女マースールに封じられていたという、アプサラスの本体。
それはゆっくりと姿を変え、一人の黒髪の少女の姿を取った。
年の頃は一七、八くらいだろうか。青と白からなる、見慣れない衣装を身につけていた。
<セーラー服と来よったか>
ルルスファルドが眉をひそめて呟いた。
少女の姿のアプサラスは、リィフより背が高い。落ち着いた表情で少年僧を見下ろすと、その場に跪く。
「改めて感謝をいたします。いと尊き方」
ただの『尊き方』だったのがグレードアップしたようだ。
( ゜ー゜)テケテケ(お読み頂き有り難うございました)
次回更新はお昼の予定です。
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