巫女アルシード(2)
( ゜ー゜)テケテケ(更新でございます)
海人族の国は、世界に三つあった。
ひとつが北海のバルキー王国、もうひとつが東海のワダツミと呼ばれる国、もうひとつがアルシードの故郷であった西海のムーア王国。
さらに南海にもニュンペーという幻の王国があったというが、遙か昔の伝承となる。
海人族は、動物でいうとアザラシなどの海獣類に似た生活様式を持つ。
生活の大部分を海の恵みに頼って生きるが、魚やクジラなどのように完全に陸を離れて生きる種族でもない。
島や半島などに街を持ち、そこを中心に国を作って生きていた。
アルシードが生まれたのは、西海のムーア王国の神殿だった。
聖女と呼ばれる特殊な血統の女性と、王族との間に作られた女子は竜の巫女と呼ばれ、聖竜と呼ばれる竜と契約し、竜の力を以て王国を守り、繁栄させる使命を与えられていた
ムーア王国の滅亡時、神殿には七人の一等巫女と七匹の聖竜がおり、王国の守護者として権勢を振るっていた。
具体的に言うと、巫女たちは贅沢や利殖、巫女同士の権力闘争にかまけ、聖竜たちは生け贄にされた海人族を喰ったり、戯れに引き裂いたりしていた。
アルシードは四等巫女。
一応巫女という肩書きではあるが、一三歳になる前に一等巫女に仕える二等巫女、三等巫女の枠に空きが出なければ聖竜の餌となることを運命づけられていた。
聖女の腹から生まれた男子は、七歳まで家畜同然に育てられ、無条件に聖竜の餌にされる。それにくらべればマシと言えないこともないが、聖竜の餌という未来はほぼ確定と言っていい立場だった。
その運命を変えたのは、皮肉にも、スキュラという侵略者たちだった。
最初のきっかけは、七色の聖竜の一匹である青の聖竜コーバルトが、戯れに冒険の旅に出て、南方の幻の王国ニュンペーの探索に出向いたことだった。
ニュンペーの廃墟でコーバルトはスキュラに出会い、敗れた。
スキュラにはらわたを喰われて寄生されたコーバルトはスキュラの大群と共にムーア王国を襲った。
対応に動いた聖竜たちだが、その力は、スキュラの侵略を阻むには及ばなかった、六匹の聖竜の内三匹が敗れ、そして残る三匹は、王国を捨て遁走していった。
聖竜たちのていたらくに激怒したムーア王は、無能の一等巫女達の首をはねおとした上で、二等巫女、三等巫女、四等巫女達に「救国のため、真なる聖竜を探し出せ」と命じて王都より追放した。
ムーア王国はスキュラ達によって壊滅しつつある、事実上「王都を出てスキュラに喰われて死ね」というのと変わらぬ命であったが、聖竜の逃走で権威を失った巫女たちに、それを拒む力はなかった。
そしてアルシードは、ある二等巫女によって捕らえられた。
比較的情報に通じたその巫女は、王国の南方の孤島で、竜と思われる何かの声が聞こえた、という情報を持っていた。
その竜を味方にすることができれば、生き延びる可能性が出てくるかも知れない。
そのためには、竜に差し出す生け贄が必要だ。
その生け贄として選ばれたのがアルシードだった。
首輪をつけられたアルシードは、二等巫女とそれに従う巫女達に引きずられて南方へと向かった。
その旅の中、巫女達はひとり喰われ、ふたり喰われ、アルシードひとりを残して皆死んだ。
さして大切にされていたわけではないが、囮として放り出された結果、囮にしたほうがスキュラに襲われて死ぬ、と言った皮肉な幸運などに恵まれた結果そうなった。
アルシードはそうして、旅の最終目的地、異臭漂うその島に流れ着いた。
スキュラに成り果てた二等巫女の追跡を死に物狂いで逃れたアルシードは、未知の竜が住まうというその島に這い上がる。
汚泥に覆われた、なにもない島。
その上を歩いて行ったアルシードだが、なにも見つけられなかった。
力尽き、座り込むと、雨が降り出した。
そして、島が揺れ動いた。
前方に見えていた小島がぬっと動く。
それは、小島ではなく、巨大な竜の頭の部分だった。
蛇のような長い首を動かした竜は、アルシードの姿を見下ろして、海鳴りのような声をあげた。
「なんだおまえは」
( ゜ー゜)テケテケ(お読み頂き有り難うございました)
次回更新は夜の予定です。
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