怪物が現れました。
( ゜ー゜)テケテケ(更新でございます。昼更新なのに朝更新と描いてしまっておりました)
「どうかした?」
リィフはそう訊ねつつ、テケテケたちの視線を追った。
それから間もなく、海面に波紋が生じ、不気味な生き物があらわれた。
白塗りのような肌色の、三人の不気味な女。
見慣れない質感の獣の皮のようなものを身に付けている。
テケ!
危険なものだと判断したらしい。
テケテケは偽一文字を構え、しゅぱんと抜き打った。
偽一文字には遠距離攻撃用の魔導体回路が組み込んである。
三日月型の斬撃波が飛び、女の首を一本跳ね飛ばす。
テケテケたちに殺生をさせたくないリィフだが、暴挙だとは感じなかった。
テケテケの判断は正しい。
斬らなければまずいものだと、直感でわかった。
首を飛ばされた女は、そのまま仰向けに倒れる。
その結果、女の下半身のあたりが見えた。
磯に住むイソギンチャク、あるいはタコなどの触手と口を巨大化させたような、おぞましい肉塊がそこにあった。
女の首の部分は急所ではないらしい。
触手塊を前方に出した怪物は、猛烈な勢いで島へ迫ってくる。
残る二匹も体を倒し、やはり不気味な触手を出して突進を開始した。
テケ!
ちゃきん。
偽一文字を構え直し、テケテケは二度目の斬月を放つ。
海面と垂直に、水面を断ち切って飛んだテケテケの斬月は、怪物の体を両断し、今度こそ葬り去った。
リィフも『恩寵紋』の槍を構える。
が、結局、リィフの出る幕はなかった。
テケー!
テケテケー!
テケーテケー!
テケテケと同じく警戒態勢に入っていたグールスライムたちが、ぽんぽんばしゃばしゃと飛び出し、海面を滑るようにして怪物達を迎え撃つ。
テケテケ!
あるものは体を堅くして怪物を打ちすえ。
テケ!
またあるものは体から電流や焰を出し、怪物を撃ち、焼いていく。
テケー!
怪物達は触手を振り回し、グールスライムたちを捕まえ、追い払おうとするが、グールスライムたちの数の暴力の前にはなすすべがなかったようだ。
完全に動きを封じ込められていた。
怪物達は、例の人に似た上半身をだすと、その口の部分から不気味な声をあげた。
「なにか、しゃべってる?」
なにか、ぞっとするような、いたたまれなくなるような響きを感じた。
「海人族の言葉で命乞いをしておるな。助けて、殺さないで、死にたくない、だそうじゃ」
ルルスファルドはうんざりした調子で言った。
「心があるの?」
そんな風にはとても感じられない。
あの怪物達に比べればスライムやゴブリンなどのほうがずっと感情豊かで、人間味のようなものがありそうだ。
「いや、ない」
ルルスファルドはきっぱりと言った。
「あれはスキュラじゃ。人や海人族などを襲って、そのはらわたを喰う。で、食い残しの中に卵を産んで、あのような姿となる。神経や脳髄を動かして声を出して、命乞いをしたり、他の獲物を誘い出したりするわけじゃ。胸くそ悪い生き物ランキング海部門一位じゃ。あるいは、連中なりの心のようなものがあるのやも知れんが、わかり合うのはちと無理じゃろうな」
確かに、おぞましい生き物のようだ。
「普通の人間や海人族であれば、あの声で躊躇して殺されたりすることもあるのじゃが。幸い、スライムどもには通じぬ手口じゃ」
テケー。
テケテケー。
不気味な、哀願めいた声をあげるスキュラに、マイペースに攻撃を続けるグールスライム達。
変なところで変な頼もしさを発揮していた。
それはいいが。
「あんなに強かったっけ、みんな」
数の暴力とは言え、あんな恐ろしげな魔物と渡り合えるとは思わなかった。
別格のテケテケは今は手を出していない。
「『恩寵紋』と『神槍紋』の作用でバフがかかっておるな。全体的な能力が底上げされておる」
「バフ?」
「加護のようなものと思っておけばよい。運動能力や魔力などがあがる。今なら僧院の僧兵どもとやり合えるくらいの力はあろう」
ヒ、ヒィィィィッィッ!
たまりかねたような声をあげ、二匹のスキュラは海中へ潜り、姿を消した。
が、二匹ともそこで力つきたのか、間もなくぷかりと浮き上がり、水死体のように動かなくなった。
( ゜ー゜)テケテケ(お読み頂き有り難うございました)
次回は昼更新の予定です。
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