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第8話 今後のしたい事

7話にそのまま入れたかった気もするけど、分量的にはちょうどいいかなと思ってます

 アリルのお姫様ごっこの話を聞いた後、いつも通り朝の支度後、朝食を食べて読書をした。本日のお昼は、お母様も出掛けていて、マブルもギル様の所にいる。一人で食べてもいいが、もう少しアリルに聞いたりしたい事もあったので、マリネとアリルと一緒に摂る事にした。


 もっと大人になると、使用人と食事をする事は無くなるかもしれないが、今はまだマナーやルールなど学ぶ事も多いので、家族が誰もいないとマリネと食事をすることは多かった。そこにアリルを増やしても問題はないだろう。


 アリルも居ての食事は初めてなので、せっかくだし天気も良いから、庭に運んで貰おう。



 そして料理長に頼んだ通り、3人分の料理が並べられたテーブルを見て、私はちょっとした悪戯を思いついた。今は私達3人しかいないしね。

 マリネが私の為に椅子を引いてくれているのを横目で見ながら、別の椅子を引く。


『アリルお嬢様。どうぞこちらにお掛けください。』

『え、ええ!?』

 マリネが無言で目を見開き、アリルは困惑している事が、よく分かる表情と声を上げる。

 思わず、少し笑いながら私は演技を続けた。


『うふふ。どうかなさいましたか?』


 笑顔を絶やさず、けれど、何に驚いているのかわからないとでも言いたげに首を傾げながら二人に聞く。


『いや、その、あのー。』

『………』

 アリルの困惑は止まらないが、私は笑顔で無言で返すだけだ。使用人なら、主人を急かさず黙って待つのが良いかなと思った為だ。


『し、失礼します?』


 そして、恐る恐るといった感じにゆっくり動き出したアリルは、よほど動揺していたのか、自分の足に引っかかり盛大に転んでしまった。

『いったー』

『大丈夫?』

『あ、はい。ちょっと膝を擦りむいたくらいなんで大丈夫です。』


 まだテーブルとは離れた場所だった為、ただ転ぶだけで済んだようだ。確認したところ、膝から血が軽く出てるくらいで、大事にはなっていないようだ。

 しかし、不要な怪我を負わせてしまった。

 マリネに消毒液を持ってきてもらう間に、アリルを立たせ席に座らせる。


『ごめんなさいね。お姫様ごっこの真似でちょっとやってみたのだけれど、こんな事になるなんて。』

『い、いえ。私こそすいません。お嬢様があんなことをするとは思ってなくて。』

『あんなことをしたのは初めてだもの。仕方ないわ』


 私としては申し訳ない気持ちでいっぱいだが、アリルはなんだかんだ、嬉しそうにしている。それを不思議に思いつつ、マリネが消毒液を持って来てくれるのを待った。


『お待たせしました。アリル、擦った方の膝を見せてくれる?』

『あ、はい。』


 アリルは、おずおずとスカートをたくし上げていく。


『私のせいでもあるし、、、私がやりましょうか?』

『え?』

『お嬢様はもう、大人しくしていてください。』

『はい。』


 仕方ないので、大人しく見ている事に決める。

 アリルから滲み出た深紅の血をマリネが消毒液で洗い流していく。

 アリルはマリネと比べて健康的な肌色のため、血との色合いは合わないな。やっぱり、血とのコントラストを考えるなら、マリネが合いそうだ。アリルはどうやって留めるのが似合うかなぁと思い、顔に視線をやると、アリルが不思議そうにしながら膝を眺めていた。


『どうかしたの?アリル??』

『あ、その、この消毒液ですか?全然痛くないなと思ったので。』

『あー、そうね。貴族の子供用のは、結構染みないのが多いのよね。』


 痛くないに全振りされたような消毒液だが、効き目はそれなりちゃんとある。その分凄く高いので、平民には出回ってはいないだろう。生産量も多くないみたいだし。

 まぁ、大人になると男性はそれぐらい耐えて当たり前になるし、女性はそもそも怪我をするようなことをする機会が極端になくなる。


 そして、まさかの今日の議題に辿り着いてしまった。


『アリルに今日はそこを聞きたかったのよね。平民はどういったものを使うのかしら?』


 王都をずっと見てきた成果として、私が思ったのは、病院や医療品らしいものをあまり見ないというところだ。馬車からでは見えないものも多いので聞いてみたかった。使用人用のものも、医者に家に尋ねてもらった時に買い付けてしまうため、マリネに聞いてもよくわからないと思っていたのだ。


『消毒ですか?消毒の場合、うちでは塩水でしたね。あれは血が出る以上に痛くて本当に嫌でしたね。』

『塩水!?』

『はい。』


 それは痛いに決まっている。大人用の消毒液よりも痛いんじゃないだろうか。

 というより、それは効果があるのだろうか?人が痛いからって、菌も痛いと思うとでもいいたいのだろうか?


『それは効果があるの?』

『どうでしょう?まぁ、治るので効果はあるんじゃないでしょうか?』


 いや、それは人の再生力のおかげだろう。消毒液の意味するところではない。


『消毒の場合、平民ではそれが普通なのかしら?』

『んー、そうでもないと思いますよ。結構家ごとに、違う気がします。果物の皮から取った汁を水に混ぜてた友達もいましたし、親から代々受け継がれていくイメージですね。』


 いや、いい感じに言っているが、根拠もない適当な対応しかしていないということだろう。


『売ってたりはしないのかしら?』

『んー、お薬は高いイメージなので、うちでは買った事がないですね。病気も怪我も、休んでれば治る風邪とかそういうのしかなった事なかったので。わざわざ買うなら、作るのが一般的ですね。』

『なるほどね。ありがとう。それじゃ、そろそろ食べましょうか。』


 話している間に、マリネによるアリルの消毒も終わったようなので、改めて席に着き直し食事を始める。

 私は食事中、アリルとした会話から得た情報で考えを巡らせた。


 私の思っていた以上に、医療は平民に流れていないらしい。値段が良いわけでもないし、薬に即効性は無い。それなら、昔から伝わる方法で作ってしまおうということだろうか。


 これはこの国の課題かもしれない。最近、アリルにもそれなりの教養が欲しいので、仕事の合間に勉強もしてもらっているが、基礎の基礎から始めてもらっている。それほどまでに、平民の学ぶ環境が足りていないのだろう。


 この二つはこの国の今後の課題だ。私がきちんと王妃になったら考えていきたいと思っている部分だ。薬については、今からでも考えていける部分は多いだろう。薬の値段設定や、薬の意味合い、現状の危険性など、わかる事が多ければ利用率も上がるだろう。私自身が薬を調合したり、研究はできないが、今あるものを平民でも手の取りやすいものにする方法を考えることは出来るだろう。今後の読書では、薬学関係のものや植物についてのもの。植物の栽培など、そういった分野を増やしていくことに決めた。


 私の人生が彼の贖罪である可能性。私はそれを信じないが、人の為になる事をする事は、次期王妃としても、良いことだろう。その為の指針を決める収穫があり、やはりアリルを雇ったのは正しかったようだ。

 そして、考えを終了するとちょうどご飯も食べ終わった。けれど、それはダメだ。私としてはまだアリルに聞いてみたい事があったのだ。


『アリル、また一つ質問しても良いかしら?』

『はい。なんでもお聞きください。』

『アリルなら、殿方にアプローチする場合、どのようにする?』

『アプローチですか!?皇子様にって事ですよね??』


 飛びついたという表現が正しそうな勢いで返事が来た。私は面食らいつつも話を続ける。


『別にそのまま実行するつもりはないわよ。ただ、気になったから聞いてみただけ。同じ年の子がどんな風に考えてるのかって気にならない?』

『そうですね。そういう話は私も好きです!』


 楽しそうに笑って返すアリルと、会話に入っておらず、冷めた雰囲気を持つマリネだが、あれはしっかり聞いてそうだなぁと思いつつそこには触れない。

『うふふ、だから教えてくれないかしら?』


 そして、アリルは自信満々に答えてくれた。


『お母さんによく言われたのは、胃袋を掴めですね。手料理に惚れさせればどんな男もなんだかんだ落ちると!』

『手料理ね。てことは、アリルは料理ができるのかしら?』

『出来ますよ。まぁ、簡単なものしかやった事はありませんが。一応。けど、ここでは専用のコックさんがいるので、使わなそうですね。』


 自信ありげな表情で答えたが、それと一緒に残念そうな雰囲気に変わる。


『そうね。でも、今度食べてみたいわね。』

『え!?そんな、お嬢様に食べさせられるようなレベルじゃないですよ!』


 慌てて返すアリルに私はわざと寂しそうに答える。


『私の胃袋は要らないってことかしら?』

『え?いや、そんな、そーいう事ではなくてー』


 今日は少し困らせ過ぎてしまったわね。


『ふふ、冗談よ。でも、それならいつかの為に練習しておきたくないかしら?』

『ま、まぁそうですけど。』

『時間が空くようになったら、台所を使わせてもらえるように頼んであげるわ。』

『え?本当ですか??』


 あの話を聞く限りでは、料理の練習をする時間は欲しいというところだろう。


『今日のお詫びってところね。』

『ありがとうございます!』


 満面の笑みで喜んでくれる、アリル。今後の行動指針が決まったりと私としても有り難い事も多かったので、これはお詫びとお礼と言ったところだ。


『そのかわり、納得がいくようになったら、わたしにも味見させてね。』

『はい!』




 そして、キッチンの使用出来る時間がわかるのは私にも悪い事じゃない。

 ギル様は私に振り向く気配は今のところない。けれど、他の令嬢に振り向く気配もないだろう。ギル様へのアプローチは、普通の令嬢と同じでは確実にダメだ。将来的に、主人公にギル様を取られる理由になりかねない。


 アリルに聞いてみてやはり良かった。だって、貴族の令嬢が料理をするなんて聞いたことがない。

 料理を振舞ってみる。試してみる価値はあるんじゃないかしら?




今週はロスタイムなくて良かったなぁ。

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