第9話 私に出来る料理の仕方
今日か明日、あたりに前の話の誤字脱字を直そうと思ってます。
ので、ここまで読んでくださった方で書き直されてんなって思っても、内容的な変化はないので気にしないで下さい
アリルとマリネとの食事から3ヶ月近くが経った。薬学やそれらに使われる植物など、そう言った関連の本や教育関連の本を読むようになり、試してみたい事や構想が色々と増えて来た。
しかし、まだ王妃でも何でもない私では、王都で出来る事は少ない。もうそろそろお父様が一度領地に帰るはずなので、それについていき領地で出来ることを更に探せないかな。
王都よりはお父様やお母様を説得するだけで良いので自由度は上がるだろう。
そして、今日はその合間を縫って行って来た事の成果を試したいと思う。
普段、勉強用にマリネに持って貰っている手提げには、今日は綺麗にラッピングされたクッキーが追加で入っているのだ。
私はギル様に一つお願いをした。
『ギル様。本日の休憩は2人でお話ししたいのですが、大丈夫でしょうか?』
今日はわざわざマブルも置いて来た。いても悪くはないがなんとなく2人が良かったのだ。
『……わかった。伝えておこう。』
『ありがとうございます。』
特になんともなさそうに、けれど少し不思議そうな顔をしたが、ギル様は受け入れてくれた。
ギル様にとって私は他の令嬢への盾だ。
他の令嬢がギル様に会おうと思えば、この前の稽古見学やお茶会など、会うことは出来る。
私に何かあった時のための、コネ作りに時間を割かれるのはギル様としても面倒なんだろう。
私はこう言った2人きりになりたいとか、時間を割いて欲しいとか、ギル様に迷惑がかかることは、基本避けていた。
ただの盾の為に動くのは、面倒だろうと気がひけるからだ。
だから、もう少し嫌そうな反応を隠しながらでもされると思っていた。あまり詮索されずに受け入れられたのは良かったかな。
私としても本当は、周りの使用人達にも食べてもらうところを見てもらったりしたかったのだが、仕方ない。
それ以上に私は伝えなければいけないことがあるんだから。
休憩時間、伝えていた通り、使用人の方達はお茶やお菓子の準備を終えると部屋から出て行ってくれた。
護衛など、完全に離れたりはしないだろうが、話を聞くようなことはしないだろう。
しばらくの沈黙の後、ギル様が紅茶に口をつけた。私も続けてそうする。
私は手提げの中のクッキーに視線だけ向けた。
思ったより緊張する。自信はあるけど、受け入れられるかなんて、わからない。なんて言えばいいのだろうか?それにこれは、ギル様に好かれるための挑戦だが、他の令嬢との違いを見せるために、私は令嬢らしからぬ事をしなければいけない。
結構、危険な賭けをしているのかもと思うと怖くなってきた。
けれど、このまま黙り続けるのはそれこそ良くないだろう。私は気持ちを決めてギル様を見る。
『少し前に、新しく使用人を雇ったというお話は覚えていますか?』
『ああ。同い年くらいの平民の女の子を雇ったと聞いたな。』
『その子が料理好きでして、料理のお話を色々してくれるんですの。』
『へー。』
ギル様は一応興味がありそうな雰囲気で返事をしてくれる。猫被りは今でも上手いみたいだ。
『それでお話を聞いていたら、私もしてみたくなり、ここ最近練習をしてました。それでやっと、良い出来のものが作れるようになったので、本日お持ちさせていただきました。』
実際、アリルに話を聞いたのは、胃袋を掴めの部分だけだが、それをそのまま伝えるのは、慎ましくないので、少し嘘をつかせてもらう。
そして、クッキーを差し出した。
『君が作ったの!?』
ギル様が驚きながら、受け取ったクッキーの入った袋を眺めていた。
『ええ。食べていただけますか?』
『ああ。』
『一応毒味として私も一ついただきますね。一枚いただけますか?』
『あ、うん。ごめんね。』
皇子様に用意して持ってきたものだ。婚約者だが、だからこそ、向こうからは言いづらい。けれど、皇子としての義務として必要な事は分かっているのだ。2人きりにしてしまった私が責任を持ってするのが正しいだろう。
それでも、少し申し訳なさそうにするギル様は優しいな。
そして、私が飲み込んだのをみて、ギル様もクッキーに口をつけた。ギル様の目が開かれて、私と目があった。
『美味しい。美味しいよこれ。甘じょっぱくて、こんなクッキー始めて食べたよ。』
『気に入っていただけたなら光栄です。』
ギル様は、あまり甘いものは好きではない。休憩の時に見ていた限りだと、甘さが際立ったものは好まず、甘さ控え目なものの時の方が食いつきが良いなと思っていた。
なので今回、塩キャラメルクッキーというものを用意してみたのだ。
彼の記憶の端に、男の子の記憶の時にたまたま目に入った塩キャラメルというお菓子。彼は、男の子の好物ではなく、たまたまその日食べていたと知っていたので、気に留めていなかったが、私としては始めて目にする組み合わせに結構気になっていた。
キャラメルと塩は食べたことがあったが、塩キャラメルというものはない。
これは食べてみたいと、塩キャラメルの存在に気づいてからは毎回思っていた。
ギル様は余程気に入ったのか、パクパクと口に運んでいく。
『ふふっ。』
ここまで、気に入ってもらえると頑張った甲斐があったかな。思っていたより、嬉しいものだ。
私が嬉しさで、心を落ち着かせていると、ギル様がそろそろ紅茶が欲しくなったのか、カップを持っていた。飲み干して、一息つくと、私に視線をやった。
『それにしても、公爵令嬢が料理ね。人払いしたのはこのため?周りにどう思われるかは、難しいところだからね。』
まぁ、そうよね。どう思われるかはわからないが、うちの一家を好まないところからは、下手な噂のネタにされかねない。
けど、人払いはそのためじゃない。
『いえ、これは本当に話したいことがあったんです。』
ギル様は不思議そうにしつつも話して良いよと促している雰囲気だ。
『ギル様、私の手ってどう思いますか?』
そう言いながら、私はギル様の左手を両手でとった。
『どうというのは?』
『ギル様は、剣を握るので、少しマメがありますね。』
『ああ、まあね。』
『私には一切無いんです。日にペンを持つ時間も気にかけられていて、ペンだこですらないんです。』
『そ、そうなんだ。』
こんなボディタッチでは、ギル様にはやはりあまり効果は無さげだな。
『そんな私に、料理なんて出来ると思います?』
『それは、、、いや、難しいだろうな。』
ギル様は少し考えたが合点がいったのか、首を振った。
『そうなんです!私も最初は自分で作ろうと思いました。ですが、料理長やメイドがかき混ぜるのは私がやりますって、手にマメでも出来たらどうするんですかと、させてはくれませんでした。じゃあ、材料を計ったり、選ぶのはやろうとすれば、汚れたらどうするんですか、目利きは俺の方が得意ですと、これも取られました。しまいには、卵を割ろうとすれば、殻で怪我したらどうするんですかって、過保護過ぎるんじゃないですか!ってなったんです。なので、実際作った部分は、型を取って並べただけです。ここまで何もさせてもらえないとは思いませんでした。』
『、、、た、大変だったね。』
私が怒涛の勢いで話したのは、初めてだった為か、ギル様は少し引いてる気がする。
でも、これは伝えておかないといけないと思ったのだ。作ったのは、自分ではない、と。
しかし、こんな勢いよく、思ったことを吐露する姿を、メイドや騎士の方達に見せてはまずいと思ったからこその人払いだ。
逆にギル様には、伝えても良いかなと思ったから今回言ってみた。だって、私の努力を伝えるなら必要な事だから。
『はい。なので、作ることは諦めたんです。そして、レシピを作りました。』
『ん?、、、料理は色々あって断念したけど、レシピを作ることにしたってこと?』
『はい!普通のクッキーの作り方を学んだあと、様々なものを混ぜて試作を繰り返してこれにたどり着きました。』
料理は、ほとんどの作業を取られる為自分で作った感覚が全くなかった。けれど、それを無視するなんてことも出来なかった私は、仕方なく色々なレシピをアレンジしてみることにした。
当然色々と失敗もしたが、試行錯誤の末たどり着いたのが、あの夢の世界の塩キャラメルをクッキーにするこのレシピだ。それを思いついてからでも、分量調整のため、何日も塩キャラメルを様々なパターンで作った。
本来、手料理を食べさせるというのが、アリルに聞いた作戦だったが、私は公爵令嬢だ。
そのままの実行よりも、私に出来る、私の方法でのアプローチにこそ意味があるだろう。
『じゃあ、レシピはヒールの完全オリジナルってことなんだ。』
『はい、その通りです。』
ギル様はそのことはちゃんと信じてくれたようだ。私も自信を持って答える。
すると、ギル様は少しそわそわとしながら、言いづらそうに呟いた。
『、、、レシピを聞いても良いだろうか。』
ギル様がこんなに気に入ってくれたんだ意味はあったのだろう。
『ふふっ、良いですよ。紙に書きますね。』
私も笑みが溢れた。
書くことなくても、ここの欄に何か書き込んじゃうのは悪い癖かな?




