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破銃  作者: ネコパンチ三世
7区~誰かに敷かれたレールの上で~
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小さな歪み

「それで?どうするおつもりですか?」

圧場の部屋に呼び出されたのは管理官の鎌田浩二だった。

彼は書類整理を終え今まさに仮眠を取ろうとしていた時に呼び出されたため機嫌が悪かった。


「男の方はなるべく捕らえろと言われているからな、子供の方は手出し無用だ」

圧場は窓の外を向いたまま鎌田の方を見ずに答えた。


「手出し無用ぉ?何甘いこと言ってんですか?自由にして良いって言われたんでしょう?なら殺すのが筋ってものじゃないんですかね?軍人として」


鎌田は既に二人を殺す方法を考え始めていた。


「確かに殺す方が早いかもな……だが俺は子供を殺してまで任務を達成するつもりはない」

圧場は揺るがない信念を胸に鎌田を睨みつけた。


「了解……」

鎌田は大いに不満そうに頷き部屋を出た。


廊下に出た鎌田は圧場の甘さにうんざりしていた。

「なに甘いこと言ってんだか……さっさと殺しちまえば早いってのにな」



朝日が部屋を照らしている。

カナは体を起こして思いっきり伸びをしてから欠伸を一つする。

「ふわぁーあ、よく寝たなぁ」


宇佐美は、目の下にうっすらとくまを作っている。

「ああ……おはよう」

力なく宇佐美は笑った。


「どうしたんです?眠れなかったんですか?」

呑気なもんだと宇佐美は思わずにはいられない。


昨晩の事件の後、落ち着いて眠ろうとするもカナが音を立ててベットから転げ落ちるわ、転げ落ちた時にカナは薄着で寝ているためあられもない姿になってしまうのを毎度毎度ベットに戻していたために宇佐美は寝不足になっていた。


「ま、まあな」

宇佐美は苦笑いを浮かべるのが精一杯だった。


「変な宇佐美さん……まあとりあえず朝ごはん食べに行きましょう!」


カナはベットから飛び出し着替えを始めた。


「着替えたら町に行くぞ、少しでも情報が欲しいからな」


「了解です!」

カナは敬礼の真似をして笑ってみせた。


町に出た宇佐美とカナは簡単な朝食を手早く済ませた。


「それで今日はどこに行くんです?」

朝食の分のハムサンドだけでは足りなかったらしくカナは追加のたまごサンドにばくついている。


「今日は……そうだなとりあえず聞き込みだな」


そんなこんなで聞き込みを始めた。


聞き込みを繰り返した結果、この区の統括官の名前と顔が明らかになった。


「圧場英吉か……」

宇佐美は先ほどプリントアウトしてもらった写真を公園のベンチに座ってまじまじと眺めていた。

気持ちのいい日差しが差し込む公園で黒いトレンチコートを着た男が一枚の写真をまじまじと眺めている姿を想像すればそれがどれほど異様な光景かすぐに分かるはずだ。


周りには人影がなくなっていた。

宇佐美は最初から気にしておらずまたカナもそれに全く気付いていなかった。


「気になるんですか?」

カナは宇佐美の今までにない態度が気になった。


「ん?ああ、今までのやつらの口ぶりからしてこいつはかなりのやり手だってことは分かった」

宇佐美らしからぬ発言だった。


「ええ!?どうしたんですか?珍しい」

 カナが声を上げて驚くと宇佐美は笑った。

「別に驚く事じゃないさ、今までに話を聞いた奴らの口ぶりは本当に圧場の事を慕っている感じだったしそれに町の明るさにも今までみたいな違和感がない、難しいんだぞ?大勢の人間に好かれるって事は」


「そうですねぇ……」

宇佐美の言葉にカナは納得せざるをえなかった。

それほどまでに今までの町は異常だったという事だ。


「だが、必ずどこかに歪みがあるはずだ……人が人を治める以上はな」


誰もいなかったはずの公園内で声がし始めた。

カナが声のした方を ふと見ると高校生ぐらいの三人ほどの少年が一人の少年ををよってたかって殴る蹴るの暴行を加えていた。


それを見るやいなやカナは走り出した。

宇佐美はため息まじりに立ち上がり、カナの後を追った。


「何やってるの!?やめなよ!」

カナは地面に倒れている少年をかばうように暴行を加えていた三人に立ちはだかった。


「邪魔すんなよ!誰だよお前」

主犯格らしき少年が声を張り上げる。


「私が誰だって関係ない!あなたたちこんな事して恥ずかしくないの!?」

カナも負けない、こうなった時のカナは強かった。


「そいつは、道反者なんだよ!決められた進路に進もうとしないからな!」

その言葉に倒れていた少年が反論した。


「ふざけんな!!誰かに決められた道に黙って進むなんて俺はごめんだね!」


「こいつ……まだ言うか!」

少年の一人が拳を振り上げた。


「やめなって!」

カナは一歩も引かない。


「どけよ!」

 カナに向かって少年の拳は振り下ろされた……はずだった。


宇佐美がすんでのところで拳を手のひらで受け止めていた。


「な……なんだよ」

少年たちが怯えるのも仕方ないといえば仕方ない。


「勢いに任せて女を殴るってのは感心しないな」

宇佐美は拳を受け止めた手に力をゆっくりと込めた。


「何すんだよ!離せよ!」

少年は必死に腕を振りほどこうとするがそれは叶わないようだった。


「よってたかって一人をいじめるわ、女を殴ろうとするわ……どうしようもない奴だな」

宇佐美はどうやら徐々に手に力を入れているようだった。


「痛え!離せ!うっ……離してください……」

宇佐美はそこでようやく手を離した。

少年は勢い余って地面に転げる。


「いいか、一人を多数で傷つける事なんて許されるはずがない、ましてや女の顔を殴るなんてな」

この時の宇佐美の表情はカナには見えなかったがよっぽど怖い顔をしていたようだ。

少年たちは謝罪の言葉を口にしながら蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


「ありがとうございます、でも大丈夫ですかね……?やりすぎじゃないですか?」

カナはむせび泣きながら走り去った少年たちの姿を思い出す。


「大丈夫だろ、悪い事をしたらそれを悪い事だって教えるのも大人の務めだ」


(あれは、教えたって言うか『脅した』って言うのが正しい気がする……)

宇佐美の言葉を聞きながらそう感じずにはいられないカナだった。


「君も大丈夫?」

カナは地面に倒れていた少年に手を差し伸べた。


「大丈夫だよ、一人で立てる」

少年はぶっきらぼうにカナの手を払い、たち上がった。


「余計なことすんなよな、俺は一人でなんとかできたんだ」

そう言って去ろうとした少年の肩に宇佐美の指が食い込んだ。


「いててててて!」

少年は痛さに体をばたつかせた。


「他に何か言うことこがあるんじゃないのか?強がるのは勝手だが果たすべき礼儀ってのがあるだろう?」

宇佐美は少年の肩から手を離した。


「あ、ありがとう……」

少年は決まり悪そうにカナに頭を下げた。


「あはは……気にしなくていいよ」

カナは少年の目に少しだけ浮かんだ涙を見逃さなかった。

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