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白星への道  作者: 鬱病太郎
第1章 始まりと犯罪組織
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挑発と再開の第10話

 バトルロワイヤル翌日の朝。

 死ぬほど寝たおかげで体力が回復した優斗は、零哉と朝食を食べに来ている。


 食堂に着くと、双子とリリアが3人で既に食べ始めていた。


「あ、やっと来た。」


「遅いぞ田中太郎。あとゆう。」


「俺はオマケかよ。」


 開口1番茜におまけ扱いされる優斗。


「あ、あの、おはようございます。」


「ああ、おはようリリアちゃん。」


 律儀に挨拶するリリアに癒されながら、食券機に向かう。

 本日の朝食は、優斗はやはり大盛りのラーメン、零哉が鮭定食だ。


「また重いの食ってるぞこいつ。」


「相変わらず量食べるね…。」


「優斗さん…。食べ盛りなんですね。」


 3人は優斗の食べる量を見て三者三様の感想を述べていた。


 全員が食べ終わり、その足で教室へ向かう。


「うわ、Dの雰囲気酷いな…。」


「まあ、入試の時と違って正真正銘雑魚なのが証明されたからな。」


 途中通ったDクラスの雰囲気は、まるでお通夜のようであった。


「田中太郎ひどーい。」


「謝れー。」


「うるせえうるせえ、負ける方が悪い。」


 双子の野次に、零哉はさらに厳しい言葉を重ねる。


 Bクラスの教室はDほど酷くはない。それどころか少し明るいぐらいだ。

 席は窓側1番後ろに零哉、その隣に優斗、そのさらに隣にリリアがおり、双子は少し離れている。


「またこの並びか。」


「…陰謀を感じる。」


 何となく権力の匂いがして、考えるのを辞める。

 ぼーっとしていると、1人の男子生徒が優斗に近づいてきた。


「お前は…」


「やあ、昨日はどうも。」


 彼は昨日、15人のチームを率いて優斗と戦っていたリーダーだ。名前を武士(もののふ)剛というらしい。


「しかしあんな力を持った生徒がDにいるとは思ってなかったな。最後なんか何をされたのかすら分からなかった。」


「あ、あ〜…、ありがとう。」


 田中太郎がやりましたとは言えず、気まずいながらも礼を言う。


「パーティのメンバーは…もう決まっていそうだな。誘おうと思ったんだが…。」


「ああ、悪いな。また機会があったら声掛けてくれ。」


 誘ってくれた武士(もののふ)に謝罪をし、彼は席に戻る。


武士(もののふ)…?なんてかっこいい名前なんだ。俺もそれにすればよかった。」


「…武士(もののふ)太郎はダサいだろ。」


 彼の苗字を羨んでいるネーミングセンスのない零哉にアドバイス───ダメ出しをする。

 その時、ちょうど教室の扉が開く。

 入ってきたのは相変わらず変な格好をしたライアン・東堂だった。


「…よし、集まってるな。初めてのものもいるだろうから紹介しておく。俺はBクラスの担任を務めるライアン・東堂だ。よろしく。」


 やはり見た目とは違い真面目な性格をしている。


「既に顔見知りの者も多いだろうが、もう一度自己紹介をしてくれ。名前と得意な属性、それともとのクラスを言っていこう。」


 そう言うと廊下側の先頭の生徒から自己紹介をする。

 特に言うことも無いため自己紹介は淡々と進んでいき、とうとう優斗の番になる。


「えー、元Dクラスの一条優斗です。得意な属性は…無属性だ。よろしく。」


 やはり得意属性を言うのは躊躇われる。予想通り各所からは驚きと嘲笑が飛んでくる。


(なんで得意属性ぐらいで…。)


 死ぬほどの思いをしてBに来ても、対応はさして変わらない。

 しかし武士(もののふ)や1部の者───優斗と戦った生徒は、そんな雰囲気は全くない。無意味というわけではなかったのだろう。


 順番はさらに回り、最後の零哉の番だ。


「あー…、元Dクラスの田中太郎だ。得意な属性は無属性。」


 やる気のない声と、ふざけた名前がプラスされ、さっきよりも嘲笑の声は多い。

 そのまま座ろうかと言う時、何を思ったのかさらに付け足す。


「…無属性だから、才能がないからと人をバカにするようなやつに負けるほど俺は弱くはないんで、よろしく。」


 腹が立ったのか、はたまた単純に煽りたかったのかは分からないが、宣戦布告と取られてもおかしくないことを言う。

 その言葉のせいか、クラスの雰囲気は少し悪い。


「よし、全員終わったな。ではオリエンテーションを始める。」



~~~~~~~~~~



 オリエンテーションが終わり、各々自習をしたり教室から出ていったりしている。


「…なんであんなこと言ったんだ?」


「才能がないやつを見下してるやつを挑発するの楽しいんだよな。」


「田中太郎いい性格してるね。」


 悪い顔をする零哉に皮肉を言う茜。


「あ、あの…、これから何するんですか?」


「ん?…特にきめてないな。誰かどっか行きたいとこないのか?」


 おずおずと言い出すリリアの言葉に、みんなに希望を聞く。


「特にないなら…購買でも行かない?」


 ずっと黙っていた葵が、真っ先に提案する。

 学園の購買は、月に1回振り込まれるポイントで買えるものが売っている人気の場所である。

 その種類は駄菓子から武器、魔道具までと、幅広い品揃えである。


「いいんじゃない?」


「なんでもいい。」


「いいと思います!」


 茜と零哉、リリアは了承する。


「なら、購買行くか。」



~~~~~~~~~~



 購買は広く、想像していたのとは全く違っていた。武器や食料品、魔道具に生活必需品などが綺麗に分かれて置かれており、その広さはさながらスーパーのようだ。


「ん?なんだこれ…。」


各々好きな物を見て回っている途中、優斗は魔道具コーナーで、残り一つしかない卵型の魔道具を見つける。

 手に取ってみようとすると、同じものを撮ろうとしていた隣の人と手が当たる。


「「あ、すみませ…」」


 同じ言葉を言い、顔を見ると、そこには───


「あれ、優斗?」


「絢香?!」


 見知った顔がいた。

 綺麗な長い黒髪をストレートにし、胸に2つの大きいメロンをつけた、パープルの瞳を優斗に向ける不思議な雰囲気の少女は───4大貴族の息女、神宮寺絢香である。


「久しぶりだな!元気してたか?」


「ええ、私は元気。そっちは…元気そうね。」


久しぶりに会った友人の調子を確認し、優斗は本題に入る。


「これ…なんなんだ?」


「ああ、これね。これはガチャと呼ばれる宝具よ。」


 宝具───ダンジョンの中で稀に出現する特殊な力を持った物のことである。


「宝具なのか?見たところ10個あったようだが…」


「ガチャは宝具の中でも最もレアリティが低いの。…とは言っても、宝具は宝具だからそこら辺の店にはないわよ?ここに置いてあるのも、補充されるまで10個限定だし…」


 ガチャは、数回ダンジョンに入ったら1つは取れるほどレアリティが低い宝具である。

 しかし、そういくつも輸入はしていないため、宝具専門のお高めな店にしか売っていない。


「そうなのか…。で、効果はなんだ?…いやまあ、何となくわかるけど。」


「ふふっ、お察しの通り、開けるとランダムに物が入っているのよ。ごく稀に非常に希少な品も手に入るから、この学園では人気なの。」


 上品に笑い、効果を説明してくれる。

 風の噂によると、小ぶりだが竜の宝玉が入っていたこともあるという。


「へえ…、面白いな。値段は……2万ポイント?!2ヶ月分じゃねえか!」


 逆言うとたった2万で宝具が買えると思えば安いものだと思うが、優斗は思ったより高価だったガチャに大声が出る。


「うるさいわよ…、そっちは1月1万なのね。」


「わ、悪い。…そっちはいくらなんだ。」


 含みのある言い方に、罠と知りつつと聞いてしまう。


「よくぞ聞いてくれたわね。Sクラスは1月10万よ!」


 待っていましたと言わんばかりのドヤ顔で言う絢香。


「くそぉ!!学園でも地位の差があるのか…!なんて残酷な世界なんだ…。」


 この世界の残酷さに打ちひしがれていると、救いの手が差し伸べられる。


「…良かったら買ってあげても良いわよ?私は家に頼めば買ってもらえるから。」


「…良いのか?なんか裏があるん…」


魅力的な提案に、思わず乗ってしまいそうになるが、絢香の悪い顔を見て思い直す。


「お前、これ借りにして後で別のとこで絞るつもりだろ!」


「あら、よくわかったわね。葵くんと茜ちゃんに鍛えられたからかしら。」


 いつもイタズラしてくる双子のおかげで、優斗の危機察知能力は上がっているらしい。


「その成長に免じて今回は奢ってあげるわ。」


「お、おお、そうか。悪いななんか。」


 図々しさを感じ、慌てて謝罪する。



 ガチャを買ってきた絢香は、それを優斗に渡す。


「ガチャは温めても割っても大丈夫よ。温めた方がいいのが出やすいという迷信があるけど、好きな方をどうぞ?」


「ああ、助かる。今度飯でも奢るよ………あ、待て、もしかしてこの前10階ですれ違ったか?」


「ええ、すれ違ってるわ。私は気づいてたけどお友達と一緒だったし、気づいてなさそうだったから声を掛けないでおいたの。」


 絢香の纏う雰囲気を見て、入学式の日に理事長室に向かう途中であった不思議な雰囲気の4人組を思い出す。

 あの4人は4大貴族の子供だったのだ。


「やっぱか。気づかなくて悪いな。」


「気にしてないわ。それじゃあ、また今度話でもしましょう。」



 優斗は絢香と別れ、少ししてから4人に合流した。


「優斗さん、それなんですか?」


「おお、ガチャじゃん。よく買えたな。」


 手に持っているガチャに、疑問を浮かべるリリアと、当然と言うべきか、知っていた零哉が反応する。


「絢香ちゃんにでも買ってもらった?」


「葵の鋭さはどっから来るんだよ…。」


 さすがギフテッドと言うべきか、葵の異常な鋭さに慄く。


「前にお前が言ってた幼なじみか、一目見たかったな。」


「絢香ちゃん来てたの??言ってよお…。」


「え、えっと…?」


 絢香に会いたがる零哉と茜。そして1人状況が掴めないリリアだった。


 他の人が買った物の話に移ろうとした時、誰かの電話がなる。


「…ん?ああ、俺だわ。……もしもーし。」


 鳴ったのは零哉のスマホだった。

 電話に出た零哉は、離れた場所に向かう。


「優斗さん、それ開けてみませんか?」


零哉を待ってある間、気になったのかリリアが話しかけてくる。


「そうだな、開けてみるか。」


双子とリリア見ている中、ガチャを開くとそこには───


「なんだこれ」


「「なにこれ」」


「なんですかねコレ」


 真っ黒な石が入っていた。

 ただ、そこら辺にある石という訳では無い。同じサイズの石が沢山あるプールに投げても、見分けがつくぐらいには普通とは違う石だ。

 誰1人なにかわかっていない状況で、困惑する。


「当たりか外れかすらわからん…。外れっぽいが。」


「捨てたら?」


「でも、せっかく出たからな…とりあえず保管してみる。」

 葵の提案に迷うも、石は保留することに決める優斗。



 零哉が戻ってきて、これから何をしようか話し合おうとするが───


「すまん、ちょっと用事出来たから行ってくるわ…。」


「そうか?まあ、仕方ないな。」



 おそらく先程の電話の件だろう。明らかに面倒くさそうな零哉と別れる。


「田中太郎…惜しい奴をなくした。」


「生きてる生きてる。」


 わざとらしい涙を浮かべる茜に呆れつつ、4人は再び何をするかだらだら話し合い始める。

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