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学年サイクリング

学年サイクリング。


クラス替え以降、少しずつまとまりを見せ始めた頃合に「もっとクラスの親睦を深めよう」学校側のいらないおせっかいを元に行われる島一周のサイクリング大会である。


朝6時という、個人的には嫌がらせにしか思えない時間に集合なのが、腹立たしい限りである。


「おっはよう!」


「あぁ…おはよう…」


「眠そうだね」


「そりゃそうでしょ…」


~~~~~


学校が用意した自転車に跨りペダルを踏みしめる。


「んじゃ、おくれるなよぉ」


先生のゆるい掛け声を合図に、一斉に自転車たちが進み始める。

私もミウミとペースを合わせ、お喋りをしながら自転車を漕ぐ。


スタートから1時間くらい経っただろうか。

太陽もそれなりに明るくなり、午前中の爽やかな空気が体を包む感覚によって、今朝までの殺伐とした心情は消えていた。

まぁそんな爽やかな感情もコイツによってかき消されるわけだが・・・。


「やぁカミモリ」


容姿端麗、眉目秀麗、成績優秀。

もうひとつ加えるなら「唯我独尊」かな・・・。


ファンの女子からは「黒王子」と呼ばれる男子、黒鮮ナオトだ。


「なに…?」


「いや、別にたいした話じゃない」


「話しかける事がないなら先に行きなさいよ」


「無いとは言ってないだろ。めんどくせぇな」


何を見込んでいるのか、彼は私の前では、絶対に他では見せない黒い部分を見せる。

そもそも彼は「組織」の関係者だ。


「・・・今日の内に、何かヤバい代物が襲撃してくるぞ」


「!?」


「何の話してるの?」


ナオトと私の間に、別の友達とお喋りをしていたミウミが割り込んでくる。


「ん?

・・・「降巫女(おろしみこ)」か」


「な!?アンタなんでそれを!!」


動揺したミウミが自転車のバランスを少し崩す。


「ミウミ…こいつ、組織の人間だよ」


その言葉を聞いたミウミが鋭い視線をナオトに向ける。

ただその視線は「我関せず」という表情の彼には、なんの効果も無いようだ。


「ヤバい代物って、何?」


私は一呼吸置いて、話の続きをナオトに促す。


「言葉通りだ。「巫女」が相手でも危ない敵、と言い換えたほうがいいか?」


「そんな情報を何でリークするわけ?」


ミウミの言葉に私も頷く。


「単純な話だ。組織は一枚岩じゃない」


それだけ言うと、ナオトは自転車の速度を上げ、前方の集団にまぎれていった。

私とミウミの間に不穏な空気が漂っていた。


徐々に自転車の速度は落ち、最後尾少し前にまで来たときミウミが口を開いた。


「組織の中でも特別ヤバい人が来るってこと?」


「もしくは、かなり危ない「神機(オーパーツ)」かな・・・」


「アタシとアマネで対処できないほどの?」


「ミウミは強いからいいけど、私はまだまだだし・・・そもそも前の2回ともマグレで勝ったようなものだし」


そこまで話した瞬間、


「止まってぇ!!!」


後ろを走っていた女子…つまりは最後尾にいた子が大きな声を上げた。

びっくりして急ブレーキをかける私たちを、彼女は焦燥感に満ちた顔で見ていた。


「ど、どうしたって言うのよ?」


ミウミがその子に問いかけた言葉は、頭上からの盛大なブレーキ音と破砕音によってかき消され、


次の瞬間、

目の前十数メートル先に大型トラックが落ちてきた。


今私たちがいるのは

海沿いの街道であり、左手にはきれいな大海原、

右手はコンクリートで補強された崖で、その上は車がそれなりの頻度で通っている。

ただカーブの連続する地帯でもあり、おそらくこのトラックはカーブを曲がりきれずに落ちてきたのだろう。


見上げると、大体20~30メートルくらいの高さの崖の上、

ぐしゃぐしゃに千切れたガードレールと、事故を目撃した何人かのドライバーが見下ろしているのが見えた。


「あ、あぶなかったぁ・・・止まらなきゃ死んでたね・・・」


ミウミは隣でぽかんとしており、

トラックの運転手も向こうから先生が数人走ってきた。


トラックの運転手さんは、頭から血を流していたが、幸い意識はあるようで、

私たちの引率で来ていた保険の先生に手当てを受けていた。


「それにしても・・・」


私は先生にかけられる言葉を聞きつつ、もう一度頭上のガードレールを見上げた。


「・・・あの子、なんでわかったんだろう」



~~~~~


大きな事故を目の当たりにした私たちは、何人かの野次馬生徒に声をかけられ、

やっとのことで開放された。


「あぁ~・・・疲れた」


「そう?囲み取材みたいな感じだったけど?」


「・・・これだから有名人は」


アーチェリー選手として有名なミウミは、顔色一つ変わらない。

私にゃ苦行だよ・・・。

お昼になり、島で一番大きな運動公園で休憩をしている私たちだったが、休憩した感じがしない・・・。


ふと顔を上げると、さっきの最後尾の女の子・・・ある意味命の恩人が目の前をとぼとぼと歩いているのが見えた。


「あ・・・」


「ん?」


ミウミもつられてその子を発見した。


「あ!さっきの!!」と言い駆け出すミウミ。


「ねぇ!さっきはありがとう!!アンタが止めてくれなかったら死んでたよぉ~!!」


「あ、は、はい。その。いえ」


人と喋り慣れてないのか、その子はオドオドと目を泳がせていた。


「ねぇ!名前は??」


ミウミ・・・もう開放してあげなよ・・・。


「あ、えと、、、九頭カグヤ、、、です」

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